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第1章「29歳彼女いない歴=年齢の真性童貞」

毎日更新します。

非モテ童貞の生々しい内面と足掻きをコメディタッチで描いていきます。

俺は今、焦っている。

猛烈に焦っている。

だって、29歳にして“童貞”なのだから___! 


30目前。

オッサンの瀬戸際。

青春の花が枯れる時。

こんなギリギリになって、俺はようやく本気で危機感を持った。


10代や20代半ばまではそんな気持ち全然なかった。

周りが次々と彼女を作って童貞を卒業していく中で、むしろ「童貞芸」とでもいうような、「オレ、生涯童貞(笑)」的な仲間内のノリをずっとやり続けてきた。


そして、一緒に童貞芸をしてきた童貞仲間達すら次第に一人、また一人と童貞を卒業していっても、俺はずっと童貞キャラを演じ続けた。

それが俺に課せられた崇高な使命であるかのように。


もちろん仲間が減っていく寂しさや彼女ができない切なさがなかったわけではない。


この間まで童貞仲間として童貞芸を擦ってきたヤツがちゃっかり彼女なんか作って仲間の集まりに顔を出す頻度が減った時なんか、俺を置いて女なんかにうつつを抜かす友達に裏切られた気持ちになったし、大事な友達を奪った女という存在に憎しみを抱いたこともあった。


その一方で、俺だって本当は彼女が欲しいのに、なんで俺にはできないんだ! と僻んだこともあった。


でも、別に童貞芸がなければつるめないわけじゃない。

童貞を卒業した友達も最初こそ彼女とのノロケ話ばかりでウンザリさせられたが、そのうち今まで通りバカ話やゲームをする関係に戻ったから、童貞であることにそこまでの不利益がなかった。


童貞でも、彼女なんていなくても、友達がいる。

女なんか別れたらそれまでだけど、友達は永遠だ。

俺には友達さえいればそれでいい。

そんなことを思っていた。


だけど、20代も後半になるにつれ、少しずつ焦りを感じ始めた。

友達グループの中の一人が結婚した。

相手は大学時代の同級生だという。

他にも、同級生の結婚の話をちらほら聞くようになった。


別に結婚なんかしたいとは思わない。

結婚なんかしたら仕事と嫁とガキに閉じ込められる日々。

そんなクソつまらない人生なんて真っ平だ。


だけど、同い年の連中が続々と結婚していく中で、俺は未だに彼女すらいたことのない童貞というのは劣等感を覚えずにはいられなかった。


俺は若い頃にしかできない「恋愛」に焦がれていた。

昔から童貞芸をやっている陰で、中高生のような甘酸っぱい恋愛に憧れていた。


流石に20代も後半になってくるとそういう青臭い恋愛を本気で追い求めることはなくなったが、今度はせめて大学生っぽい恋愛がしたいと思うようになった。

大学なんかもう卒業してるのに、中高生はもう年が離れ過ぎたから今度は大学生の恋愛というわけだ。


大学生の恋愛が具体的にどういうものなのかよく分からなかったが、酒を浴びて深夜の街をフラフラになりながら歩いてそのままホテルかアパートでベッドイン、みたいなものをなんとなく想像していた。

中高生の恋愛に比べると不潔で淫らで退廃的だが、それはそれで悪くない。

ていうかやりたい。


だが、俺にはもうそれすらも遠い過去だった。

アラサーと呼ばれる20代後半の中でも、佳境といえる28歳になった頃から急激に焦りが生まれた。

中学生、高校生、大学生を経て、20代すらもうじき過ぎようとしている現実。

流石にもう言い訳なんてできない。


高校生になったら、

大学生になったら、

社会人になったら、

……じゃあ、その先は?

 

もうこの先に青春のイベントなんてない。

もう憧れの青春のイメージなんてない。

もう敷かれた青春のレールなんてない。


30代なんて正真正銘のオッサンだ。

これからはひたすら人生の消化試合をこなしていくだけだ。

だから俺は焦っている。

猛烈に焦っている。


そして、29歳の誕生日。

今度という今度はもう後がないぞ。

これが本当の本当の最後。

ラストイヤー。

魔法使い(チェリーマン)のカウントダウン。


この1年でやり残したことを全てやり尽くしてやる。

俺は決意を固めた。

彼女を作ってセックスすると。

お読みいただきありがとうございました。

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