それでもいいよ
しばらくの間、おじさんからの接触はなかった。
けれどある日、マミちゃんと兄様と一緒に帰っていたらおじさんが現れた。
ボロボロの姿になっていたので驚いた。
えんがちょしたのに、どうやって現れたんだろう。
「これだからモノノ怪は信用ならん!いかにイイモノに変質しかけていようと、人とは相容れないのだ!」
おじさんは兄様に叫ぶ。
兄様は余裕の表情。
「先に喧嘩を売ってきたのはそちらだろう?僕は反撃しただけだよ。大体えんがちょしたのに、しつこいよ」
「その子たちから離れろ!」
「嫌だよ。コトハは僕が守るんだから」
「どうせ守るとか言って、取り付いたり取り込んだりする気なんだろう!」
「それはないよ。コトハを愛しているからね」
にっこり笑って答える兄様に、変質者のおじさんはなぜか青ざめる。
「愛してるって…」
「大切なんだ、愛おしいんだ。仕方がないだろう?」
「…君たち、俺のところに逃げておいで!早く!」
鬼気迫る表情。
おじさんは私とマミちゃんを心配してくれていることはわかる。
でも怖い。
「そのままでは、特に君は最悪な目に遭うかもしれない!モノノ怪に気に入られるとは魅入られると言うことだ!だから!」
私に手を伸ばすおじさん。
けれど私は、その手を取ることはない。
「それでもいいよ」
「え」
「最悪な目に遭っても、兄様と一緒にいられるならいいよ。魅入られるって言うのは、よくわかんないけど」
私の言葉に、変質者のおじさんは驚愕する。
「まさか、もう精神まで取り込まれて…」
「失礼だな、操ってなんてないよ。これはコトハ自身の意思だ」
兄様は言う。
「コトハは僕に心をくれた。僕はコトハに全てをあげた。僕とコトハはそうして心を通わせた。その結果だよ。絆ってやつさ」
「幼子を騙しておいてなにを!」
「そもそもコトハはだいぶ前に僕が祟り神だった話を聞いているし」
「え」
おじさんが戸惑ってこちらを見つめてくるので、頷く。
「マミちゃんが初めてうちに遊びにきたときに、そんな話をしたよ」
「なら何故!」
「兄様を信じてるから」
「そんな…」
なら俺はなんのために…とおじさんが落ち込む。
可哀想。
「勝手に人の家庭事情に首を突っ込むからだよ」
「おじさん、どんまい」
「可哀想…」
「これ以上関わって来なければ追撃はしないであげる。だから大人しくしていなよ」
「…くそぉっ」
私はおじさんに同情しつつも、それ以上声をかけることはなく兄様とマミちゃんと帰った。
その日以降、おじさんと会うことは完全になくなった。




