祟り
さてさて、祟りの始まりだ。
どんな呪いをくれてやろうか。
悪夢に内ゲバ、最後を飾るにはなにが相応しいか。
…それこそ、祟り神としての真骨頂。
天変地異、それが相応しいだろうか。
「どんな災害がいいかな」
あまりに酷いものだと死人が出る。
それではいけない。
コトハは優しいから悲しむだろうし、死んで楽になるなど許さない。
そうだ、空気を乾燥させよう。
乾燥した空気のせいで火事が起こり、延焼が広がる。
誰のせいでもない、不幸な災害。
「死人は出ないよう、あえてほんの少しの加護はくれてやろう」
家が無くなれば、建て直すための出費は痛いだろう。
同時に思い出の品なども燃えるだろう。
火元はどこかと責任追及も始まって、内ゲバも勝手に始まるだろう。
ギスギスした空気の中、憎しみ合えばいい。
村から少し離れてぽつんとした場所にあるこの三男坊の家までは火も周らない。
「ということで、これでどうかな」
指を鳴らす。
しばらく待つと、火事だ火事だと声がした。
始まったなと見守りつつ、眠るコトハが起きないように呪いをかける。
すやすや眠るコトハは起こさずに、村の様子に集中した。
最終的に、村全体が燃えた。
「村の外れのうちだけが無事だったと」
まあそうなるように僕がしたんだけど。
誰も彼もが頭を抱える。
「最後の情けで公民館は無事だから、みんなそっちに避難しているけど」
鎮火はしたが、これからの生活には困るだろう。
家の立て直しなんて、かなりの出費なのだから。
だけどむしろ長年コトハを苦しめた奴らに対しての仕返しとしてはぬるいぐらい。
「まあでも、とりあえずこれで矛は収めてあげるよ」
そうしているうちに、僕の親…ということにさせてもらっている地主の次男坊が来た。
無事の確認と今後の相談。
なので僕は言った。
「お祖父ちゃんも父さんも、お家がなくて大変になっちゃったよね。だから僕はコトハを連れて街に出るから、お祖父ちゃんも父さんも兄さんも姉さんもここに住めばいいよ」
なお巫家の長男は地主である父親と折り合いが悪く、街に出て役場で働いている。
実質的に跡取りは次男である彼だ。
そして次男である彼には長男と長女がいる。
僕の兄と姉…ということにさせてもらっているが、こちらはまともで多少はコトハを気にかけていた。
助けてあげてくれなかったのはまあ恨むが、そこまで苦しめる気はない。
「このお家の所有権はお祖父ちゃんが持ってるんだし、そうしなよ」
「凪、ありがとう」
「うん、でも他の村のみんなはしばらく公民館生活だね…」
「私達も村の復興に向けて全力を尽くすから、大丈夫だ。それより急に街に出るなんて、本当に大丈夫か?」
「うん、コトハのためにはむしろその方がいいだろうし」
僕の父親役を演じてくれる彼はその言葉に顔をしかめる。
「…この村は閉鎖的だ。余所者のコトハには苦労をかけた。そのうえ嫌われ者の弟の娘となったのだから、心労は如何程だったか。だが私達巫家の者は、それを放置してしまった。凪がいなければコトハはもっと孤独だっただろう」
悔いてはいるらしい。
それでこそ祟った甲斐があるというもの。
「…父さん。コトハは僕が守るよ。だからこそコトハを村の外に連れ出してあげたい」
「…ああ、そうしてやってくれ」
ということで、村の鎮火後さっそく俺はコトハを連れて必要なもの、コトハの思い出の品を持って家を出た。
しばらくホテル暮らしにはなるが、家はすぐ見つかるだろう。
…多分。
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