村人たち
さてさて、断捨離もいよいよ大詰めだ。
嫌われ者の三男坊の娘として、コトハを虐げた下劣な村人たち。
彼らにはどんな因果を与えてやろうか。
「ねえ、コトハ」
「なに?兄様」
「コトハはこの村が好き?」
一応確認。
コトハはちょっと困った顔をする。
「うーん…」
「そうでもない?」
「うん…」
優しいコトハは言葉を濁す。
本当に良い子なんだから。
「変なことを聞いてごめんね」
「ううん、大丈夫」
「村を出ることも考えようか」
「え、いいの?」
「うん、まあでもちょっと待っててもらうことになるけど」
村を出ると聞いてコトハは目を輝かせる。
「そうなったらどこにいく?」
「この間行った街に行こうか」
「うん!」
可愛いなぁ。
こんな可愛い子を虐げるなんて、本当にどうかしてる。
「どんなお家に引っ越ししたい?お金ならたくさんあるから心配ないよ」
「どんなお家がいいかな。でも二人暮らしだからあんまり広くなくていいと思う!」
「じゃあマンションがいいかな?賃貸物件にしようか」
「賃貸…」
「買うマンションじゃなくて借りるマンションにしよう。好きな時に引っ越せるし。ああでも環境は大事だな…ちゃんと防音設備とか耐震性とか、ご近所さんとの関係とか大家さんとか…買ったほうがはやい…?」
コトハはよくわからないようで首をかしげる。
「でも、まあ、とりあえず最初は借りる方で探してみようかな。コトハもそれでいい?」
「うん!」
わからないなりに元気にお返事してくれるコトハ。
まあ、とりあえずその方向で進めよう。
でもまずはその前に、この村の連中に因果を受けてもらわないと。
今度はどんな因果を与えようか。
たまには祟り神としての側面を全力で活かしてしまおうか。
「それより兄様、今日もそろばん教えて!」
「もちろんいいよ。コトハは覚えは悪いが覚えたら忘れない子だから教え甲斐があるよ」
「…えっと、褒めてる?貶してる?」
「褒めてる褒めてる」
首をかしげるコトハ。
「暗算も得意になってきたしね。もう同級生たちにだいぶ追いつけているよ」
「本当?」
「うん。街に出たら当然転校することになるとは思うけど、そうなっても国語と数学に関してはついていけると思うよ。まあ、理科とか社会についてもそのうちお勉強し始めようね」
「うん!」
この調子でいけば祟りが蔓延する頃には、理科社会の方も問題なく基礎知識は与えられていることだろう。
そして引っ越しして学校も転校すれば、晴れてコトハは『普通の小学生』になれるだろう。
コトハにはもう苦労はさせない。
僕が絶対守るからね。