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4 キャラ設定、それは呪いのことば

父からもらった一歳の祝儀を銀行で運用しようと思って調べてみたが、どうやらこの世界には銀行はないらしい。無念だ。


 気になったので、今の俺に可能な範囲の情報収集―――子供向けの本、メイドさんの噂(一歳児には分かるはずがないと思って結構無駄話をしているメイドさんが多い。母の腹心らしき専属メイド・ピフラが、「指導がなってない新人ばかりがやってくる」と怒っていたから、本来ならメイドさんが赤ん坊とはいえ王族の前で無駄話なんてあり得ないんだろうが、俺にとっては好都合だ)、母との短い会話(結構身の回りに人が出入りする上に、母には妾妃としての仕事があるようで、親子だけになれる時間は圧倒的に少ない)―――を駆使してちょいと俺の金銭事情を調べてみた。

まず、第二王子なので個人歳費がついているらしい(姉兄弟に比べると少ないらしく、ピフラが怒っていた)。ということで、王城に住んでいる限り王子としての最低限の体面を保てる程度の暮らしは保障されている。だから本当は王族ならではのゴージャスなものが父王から誕プレとして贈られるものだそうで、金だけポンと渡されたという事実はそのまま、父王の俺への無関心の証明ってことになるみたいだ―――銀行が無くて無念だとか言ってる場合じゃなかった。兄王子の場合、誕生祝に上級貴族出身の乳母とメイドが贈られ、一歳祝いには護身用・・・とは名ばかりの宝石ハメハメのデコデコな短剣が贈られたらしい(メイドさんの噂より)。今年の二歳祝いには、王太子の為に開けてあった特別な部屋を与えられたそうだ。正妃の息子で第一王子なんだから、まあ順当にいけば王太子だろうから、気は早いものの問題ではないだろう―――側妃がどう思うかは別として、俺と母上には関係ない話だな、これは。


 いいことを思いついた。


 兄王子は王城の一等区画に部屋を貰ったんだよな、二歳の祝いに?

 じゃあ、逆に・・・一番不便なところに部屋を貰ったら・・・?それなら王様も却下しづらいよな・・・?俺の周りに不特定多数の出入りが少なくなれば、俺が母上と話せる時間も増えるだろうし、もう少し難しい本を読めるようになっても見とがめられることもないだろうし、知識の習得には好都合だよな?


 よし、これは早速母上に相談だ!


 ちなみに俺の時には、誕生祝いに父が乳母を選ぼうとして母が断り、その代わりに母が直接授乳してくれることになったようだ。王族としては異例中の異例で―――母がどうしてそうしたかは今のところ教えて貰えていない。でも、あの聡いひとのことだ、きっと大きな理由があるんだろう。それでは何の祝いにもならないということで、何か一つ願いを聴こう、と父王が言い、母上がそれなら是非と言って実家からピフラを呼び寄せたそうだ。本来、正式な婚姻を交わした妃なら、実家から古参のメイドたちを連れて入宮し、新しく自分で選び抜いたメイドたちと合わせて派閥を構成するものらしい。母の場合は、正式な婚姻を交わしていない。俺を孕んでしまったから、王の子を私生児にするわけにはいかず、慌てて王城に呼び寄せられただけで、愛妾扱いとなったものの既に王の寵愛があるわけではなかったから、身の回りの世話も王城の一般のメイドたちがしている。ピフラの存在は大きい。彼女がいなかったら、この王城で母は孤独だっただろう。俺に乳母がいないくらいで、ピフラを得られたんだから安いもんだ。

 まあ、俺がピフラの存在を喜んでいることはさておいて。

誕生祝が母の専属メイド一人で、一歳の祝いが金・・・という扱いは、貴族社会で俺が軽んじられるには充分すぎるわけで―――そりゃ「後宮での立場は弱い」わ、そうなるわ。


 で、だ。


 ホントに俺が勇者パーティーのマルチプレイヤー的サブキャラとして期待されているかはともかくとして。

 レベルがあるなら上げたいだろ?それこそがロマンだろうよ?

 ここは剣と魔法の世界―――つまり、剣技と魔法こそこの世界を生き抜く力ってやつなんだろうし、前世記憶の御蔭でスタートダッシュできるってんなら早め早めに取り組むのはアリだろ、当然。

俺の母親が日陰者扱いされているみたいなのも気に食わないから、せめて俺が助けになりたいけれど―――最低でも近衛騎士たちのレベルを超えないとカッコ悪くてそんなこと言えないし・・・いや、母上の立場を良くしたいなら、レベル上げよりも王族としての立ち居振舞いだとか政治力とか、そっち方面の強化が先か・・・?


 そういえば、あのレベルアップの時に聞こえた声ってなんだろう・・・?


 あれから色々と子供向けの本を漁ったけれど、レベルアップの時に声がするという話はどこにもなかった。レベルアップの時に本人の属性にまつわるオーラカラーに包まれるってことだけは常識みたいだけど―――え?俺のオーラカラーって黒いの?黒の魔女の血が入ってるからかな?前世じゃちょっと禍々しいイメージだけど、この世界じゃそんなことないのかな?どうなんだ?


 まあ、分からないことは考えてもしょうがない、か・・・


 やれることから、やっていくしかない。


 体を鍛えるのは流石に今の俺の年齢では無理だし、魔法を勉強してみるかな。

 魔法についての本は・・・っと・・・


 げ。

 メイドさんズだ。

 あっぶねー、本隠すの間に合った!


 あ、ピフラが何か受け取って・・・ああ、ご飯の時間か。

 お、今日のご飯ってもしかして・・・あ、やっぱりフツー飯だ!前に挑戦して体が受け付けなかったんだよな・・・前世記憶ある俺からすると離乳食よりこっちの方が絶対美味いはずなのに、やっぱ体は乳幼児なんだよな・・・

 さあ、再挑戦!

 これで戻さなければ―――ついに母上と同じ食卓に!


 いや、マザコンじゃないぞ、俺は!


 むしろ、その、授乳される時とか、フツーに気まずかったし・・・腹減って仕方なかったから恥も外聞もなく、その、吸い付いていたけどだな、前世記憶があるなんて知られていたら俺、恥ずか死ぬわ、絶対。


 でもほら、結局今、家族って母上だけだし。

 味方も多分、母上だけだし・・・ピフラはまあ、味方かもしれないけどさ。母は俺にとって今、唯一普通に喋れる相手だし、その、依存しがちな心理状態になるのは致し方ないというか・・・


 そもそも、乳幼児が母親を慕って何が悪い!っての!


 開き直るぞ俺は!



 ってわけで!

 さあ・・・食べるぞ!



 ん?

 なんだなんだ・・・この黒い靄は・・・これは、もしやあの時と同じ・・・???


 おお!レベルアップ、キター!



エルメリ・ヘイキネン Lv.3

ヘイキネン王国第二王子 王位継承権第三位

HP 2/2  MP 2/2  筋力 1/1  頑丈さ 1/1  魔法攻撃力 2/2  魔法回復力 1/1  素早さ 6/6  運 0/0  物理攻撃力 1  物理防御力 1



 いや、何でレベルアップしたの?今??


 やっぱこの世界のレベルアップシステム、良く分かんないわ~。


 って・・・また素早さが上がってるんですけど!!キャラ設定ってスゴイ影響力なんだな・・・俺は何キャラなのか、神様、居るなら教えてくれよ・・・

オマケ情報

夜泣きとおねしょをしなくなり、離乳食を卒業し、二足歩行、食事、排せつに介助が要らなくなるとレベルアップする。

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