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3 ステータス、それは滾らずにはいられないワード

ゆりかごでのお昼寝タイム。メイドさんたちが退出して、母だけになったところを見計らって、俺はついにおねだりをしてみることにした。

「母上。」

うん、周囲の会話は耳で分かるようになっても、まだ発音は難しい。舌の力が足りないのだろうか。精進あるのみだけれど、精進するにも人目があるしな。母との会話は成立するけれど、メイドさんたちに聞かれると気味悪がられるだろうし・・・はきはき喋る一歳児って、なあ?俺は初手として既にビジュアル的に可愛くないしな。不気味要素を自分から加算していく必要はないよな・・・

「なあに?」

ゆりかごから聞こえるはずのない母上呼びにも動じず、柔らかく応えるイロナはホント、我が母ながら出来たひとだ。

「ステータスはどうやって確認するのですか?」

発音がどうしてもたどたどしいのは、喋り慣れていないからだ。

「他の人や魔獣のステータスを確認しようと思ったら、鑑定スキルが必要ね。ただ、スキル持ちは少ないから、魔獣討伐の任に当たる人などは、鑑定スキルを魔方陣として組み込んだ鑑定の指輪を使う人が多いはずよ。」

そういえば母上って、赤ちゃん言葉使ったこと無いよな?俺の精神年齢に、最初から気づかれていたのかもしれない。この人、底が知れないよな・・・

「ただ、魔方陣を組み込んだアイテムは高価なものだから、民間では教会で確認するのが一般的でしょうね。」

「それは、僕にも使えますか?」

「自分のステータスを知りたいの?」

「はい。」

「そう・・・そうね・・・まあ、飲み込んだりしないでしょうし・・・後で指輪をあげましょう。一歳のお誕生日プレゼント、していなかったものね。」

一応、父から祝い金が届いていたような気がしたし、母からはしょっちゅう本を貰っているから気にしないでいいんだが・・・ちなみに、王妃様からは御馳走が届いていたらしく、当然俺の年齢では食べられなかったけれど、スタッフで美味しく頂いたようだ。側妃から何もないと母の腹心らしいメイドさんがぷんすかしていたから、俺の母親は少なくとも立場的には側妃以下なんだろう。側妃は出産したばかりらしいから、他人の子供の誕生日どころじゃないのかもしれない。



エルメリ・ヘイキネン Lv.1

ヘイキネン王国第二王子 王位継承権第三位

HP 1/1  MP 1/1  筋力 0/0  頑丈さ 0/0  魔法攻撃力 0/0  魔法回復力 1/1  素早さ 2/2  運 0/0  物理攻撃力 0  物理防御力 0



 ええっと・・・俺、よっわ。まあ、そうか、レベル1に対してパラメータ・ポイントが5だから、こんなもんか。っていうか、素早さに2も要らなくないか、赤ん坊・・・他にもっとこう、さあ・・・せっかくの剣と魔法の世界を堪能できるような魔法攻撃力とかにパラメータ欲しかったな・・・そもそも運0って・・・せっかくの王子様転生だと言うのに、俺はどうやら主人公系ではないらしい。王城の雰囲気と親父さんの塩対応と顔面の出来栄え点から薄々は知ってたけどさ。

 VRみたいに中空に浮いているステータス表示をつついてみる。すり抜けた。不思議な仕組みだよな、これって・・・周囲の古い欧州風の調度の中で違和感しかない。


 ん・・・?ステータス・ウィンドウの隅っこ、点滅してるな・・・?


 ダメもとでここをつついてみたり・・・!!!



エルメリ・ヘイキネン

ヘイキネン王国第27代国王ヨハンネスとヴァリス家第34代当主イロナの息子で、ヘイキネン王国第二王子。イロナが正式な妃ではない為、後宮での立場は弱い。姉はヨハンネスの側妃アンニの第一子クリスティーナ、兄はヨハンネスの正妃エリザベットの第一子ユハニ、弟はアンニの第二子サカリ。

パラメータ成長は素早さが中心。剣と魔法のどちらにも特化していない。

運が低いのでレアドロップ遭遇は困難。特殊体質として、魔方陣発動フリー。



 うお!なんだこのキャラ解説画面みたいなやつ!

 え?え?え?やっぱりここ、何かのゲーム世界なのか!?にしちゃ、全く存じ上げないんだが・・・

 俺これから生きてくんだぞ、この存じ上げないゲーム世界のような現実で。なのに、「後宮での立場が弱い」だの「剣と魔法のどちらにも特化していない」だの「運が低い」だの、人生お先真っ暗なことをしれっと告知してくれて有難う・・・王子様なのに「素早さ中心の成長」をするとかいう盗賊みたいなバフを有難う・・・

 あれ、ちょっと視界が歪むんだけど・・・泣いてない、泣いてないぞ、俺。

 っていうか、母上、黒の魔女の家の女当主だったの!?この国って確か、女性の家督相続は原則不可じゃなかったっけ?それでも女当主だってことは、他に直系男子がいないとか、「黒の魔女」っていうだけあって例外的に認められた特殊な女系一家だとか、それなりの理由があるはずだよな?それを親父さんが手籠めたの!?ないわー、ないわー。

 あと姉がいたとか知らなかったし!両王子の噂はちらっと聞いた時あるきもするけど!あれか、やっぱり俺が王子だから、他の王子様方と比べられてんのか、悪かったな目つき悪くて!・・・あ、それはステータス・ウィンドウじゃ語られてないのか、失敬・・・


 !

 なん・・・だ、目の前で急に閃光が!!

『ぱんぱかぱーん!』

閃光の向こうから、若い女性の声・・・というより最早アニメ声とでも言うんだろうか、あざとさ満載のキュート系の声色が聞こえてきた。魔法少女系のアニメの主人公に居そう。いやすまん、イメージだ、イメージ。そっち系詳しくなかったんだよ、前世の俺・・・

『おめでとう!エルちゃん!』

エル・・・ってのは俺のことか?母以外からそう呼ばれたことはないんだが。

『ステータスの第二画面に気づいたキミには、お祝いあげちゃう!』

お祝い?何だ・・・?うわ、急に視界が!俺の身体が影のようなものに包まれていくみたいだ・・・

『おーおー、さっすヴァリス家の血統。オーラが黒とかヤバい感あってカッコいいよね~。』

ヤバいのかカッコいいのかどっちだ!

『んー、イイ感じ。じゃね~!』


閃光が収まると・・・ステータス・ウィンドウが点滅していた。


 やっば、鑑定の指輪、壊れた???貰ったばっかりなのに!

 待て、こういうときは深呼吸だ。そして再起動だ。

 改めまして・・・「鑑定」っと!


 !!!



エルメリ・ヘイキネン Lv.2

ヘイキネン王国第二王子 王位継承権第三位

HP 1/1  MP 1/1  筋力 1/1  頑丈さ 1/1  魔法攻撃力 1/1  魔法回復力 1/1  素早さ 4/4  運 0/0  物理攻撃力 1  物理防御力 1



 レベルアップしとるやないかい!


 じゃ、ナニか、あのちょっとクセの強い正体不明の声は「神」とか「天使」とかそっち系ってことか?俺の抱いていた神聖なものへの憧れをどうしてくれるんだよ!


 そしてまた素早さが上がっている・・・一歳児の王子様は一体何から逃げようとしてるんだよ・・・



 いや・・・待てよ・・・?


 俺は「剣と魔法のどちらにも特化していない」んだよな?で、物理攻撃力に影響する筋力と魔法攻撃力が均等に上がる・・・と。

 このゲームがどんなゲームであれ、ステータスでHPとMPが表示されるってことはバトルありだろ?その場合対象は魔獣なんだろう、湧いてくるみたいだし。そして攻撃方法として剣と魔法の二つが存在する以上、どちらかしか有効打がない敵と対峙する可能性があるってことだよな・・・?どちらか一系統で万事解決するんだったら態々パラメータが分かれているはずがないもんな?

 え?

 俺ってこれ・・・実は有利なんじゃ・・・?

 成長率が低いから序盤は苦労するとしても・・・どっちにも特化してないってことは、逆を言えばどっちの系統にも偏らないってことだよな?つまり、汎用性が高いってことだろ?なんでだか知らんがメチャクチャ成長するらしい素早さをフル活用すれば、敵が一撃打ってる間に魔法と剣技をぶち込んで一人二役コンボなんてチートも夢じゃないよな?そうだよ、子供のうちからレベル上げて行けば、成人の頃には剣も魔法もどっちもそこそこは使えるようになってんじゃね・・・?しかも「魔方陣発動フリー」なんだろ?良く分からないけど、多分便利キャラじゃん!俺ってもしや・・・勇者パーティーのサブ的ポジションとかで重宝されるキャラなんじゃないの?知らんゲームだけども、きっとそうだろう。王城で弱い立ち位置なのも、いずれ旅に出る設定なら納得だし。王太子とかだと国を離れられないもんな、現実的には。



 で、だ。


 レベルってどうやって上げるんだ・・・?

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