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1 おっと、どうやら異世界転生

 『乙女の祈りとバトルロワイアル』は、「近年まれにみるクソゲー」という評判が逆に注目を集め、その異常なやり込み要素から極々一部の腐女子の生活を狂わせたという、いわくつきの乙女ゲームだった。

 平民として育ったアマンダ・マンシッカが、ひょんなことから貴族の学園の二年生として編入、攻略対象である王族・貴族の子弟と惚れた腫れたを繰り広げる、捻りの無い王道設定。にもかかわらず、各種イベントをクリアするために必要なのは―――計画的なレベル上げだ。


 そう―――レベル上げがマストのこのゲーム、何も知らない乙女ゲーユーザーが絵師に釣られて素敵スチルにキャッキャウフフしようと購入すると、ふたを開けてみたら高難易度の育成ゲームで攻略対象を育てないといけない仕様となっているという詐欺ゲーだったのだ。


 舞台はとある王国の三つある学園の一つ。オープニングの選択肢でどの学園に入学するか分岐するのに、学園ごとに正規攻略対象が5人づつという15周しないとコンプできない鬼畜仕様。しかも、コンプ後に解放される隠しルートまで存在する始末。

 そこは剣と魔法の世界で、攻略対象の好感度を上げると、一緒に冒険や訓練をすることが出来るようになる。ストーリーは単純明快。一緒に鍛錬して攻略対象をレベルアップさせ、武術や魔法の大会、魔獣退治などのイベントをこなし、幸せエンドへ・・・という、n番煎じもの。


 ただ―――このイベントがかなり、高レベルを要求するので育成が大変なのだ。

 なので、メイン攻略キャラは初期設定からスペックが高い。


 騎士学園三年、第一王子ユハニ・ヘイキネンは、圧倒的な剣の才能を誇り、その剣技は剣聖レンニ・アホネンの後継者と目されている。卒業後には立太子式を控え、王として国を率いていく覚悟と誇りに満ちた正統派王子様ながら、ビジュアルはちょっとヤンチャ系の赤髪イケメン。

 魔法学園一年、第三王子サカリ・ヘイキネンは、圧倒的な魔法の才能を誇り、その魔力は賢者ヴァイノ・ヤルヴィネンの後継者と目されている。第一王子の対抗馬として、王位継承権第二位という難しい立場ながら、人懐っこい大きな目と銀髪の天パがチャームポイントのザ・弟系。


 逆に最も難易度が高い攻略対象は、R-18指定追加キットでリリースされた追加キャラであり・・・最も「追加する意味ない」とユーザーに酷評された第二王子エルメリ・ヘイキネンだった。

 王立学園二年、主人公と同い年の王族ながら、本編では攻略対象者の育成を邪魔する悪役。しかも、異常な「素早さ」でこちらの攻撃は当たらず、こちらが1ターンこなす間に2ターンを消化するというかなり厄介なボスキャラ仕様だった割に、育成対象となった途端に「剣」と「魔法」のどちらを鍛えるべきか分からない―――つまりどちらにも振れていない、どちらにも突き抜けた才能の無い残念仕様。レベルアップは「素早さ」中心に上がり、「筋力」や「攻撃魔力」のような戦闘向きのパラメータはよちよちとしか上がらない。しかも「運」は最低。それでも頑張って攻略したい―――という気を起こさせない、目つきの悪さと隈の濃さしか印象に残らない陰キャまっしぐらのビジュアル。しかもR-18版で追加された割にお色気シーンもなし。同じ追加キット内でリリースされたユハニのシックスパックにハアハアし、サカリのあざとセクシーなセリフにキュンキュンして、じゃあこの第二王子はどんな展開に・・・と期待させておいて肩透かしと来ている。


 おそらく、全アマンダが思ったはずだ。

 R-18のゲームで最高難易度の育成をクリアして―――全年齢版の中でも一番あっさりした感じのエンディングだよね?という程度の展開ってどゆこと???と。




 と、いうわけで、今ここにOGYAAと生まれた転生アマンダは決意する。

 エルメリだけは無いわー、と。

 やっぱり王道はユハニ様ルートで悪役令嬢との婚約破棄でしょ?でもサカリ君ルートでキュートな肉食獣に迫られるのも悪くない・・・キャ!どうしよう!

 まあいいわ、学園に入るのは15歳からだもの。あと15年も悩めるんだし、悔いのないように選択しなくちゃ!


 ※※


 しかし―――同じ頃、王城で生まれたエルメリは、そんなアマンダの思惑など、当然知る由もない。



 ・・・知らない天井だ。発声は出来るけれど、言葉にはならない。おぎゃあと煩いのは、俺・・・なのか?

 黒髪の色白美人がこちらを覗いている。話しかけられているが―――知らない言語だ。


 これはもしや・・・話に聞く、異世界転生というやつなんだろうか???


 ラノベだとたいてい、自分のやり込んだゲームなんかに転生するんだが・・・さっきから「エルメリ」「エルメリ」と連呼されているそれが俺の名前だとすると、そんなキャラが出て来るゲームなんて知らないぞ?

 まあ、そうそう上手くはいかないよな・・・自分好みのゲームに転生なんて、そんな虫のいい話あるわけないか。雰囲気的にどうやら俺の身分は高貴みたいだし、母親は美人だし、まあ、勝ち組転生と思って今生を満喫するしかないだろう。

 というか、異常に眠い・・・体が赤ん坊だからだろうか・・・精神ってある程度、肉体に引っ張られるのな・・・ふああ・・・母さんらしき人、ごめん、俺は・・・寝る・・・

誤字脱字ありましたらご指摘いただければ幸いです。

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