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27話 双生児~兄弟の決着~


 最近は人魔連合も知恵を付けてきた。

 こちらの攻撃が届かないギリギリのラインで陣を張り、いつでも逃げられるようにしてからこちらへの侵攻を企てるようになっている。

 最近は一方的過ぎたし、少し舐めプでやってみようと思う。


 とりあえず射石砲の射程をいつもの半分にしてみた。

 まぁそれでも向こうの最大射程とは比べ物にならない射程距離な訳だが。


「さて、どう来るかな」


 有効射程外だが最大射程距離内で悠々と陣地を準備する人軍……今回は貴族連合らしい、の様子をレーダーで確認しながら、俺はその動きをのんびり見ていた。

 普段なら数万人のオーダーで隊列を組んでいる人軍だが、今回はざっくり数千人、しかもそのほとんどは後方に待機して後詰になっていて、残りの数百人が前進してくる感じだ。

 人は魔族の様に飛べる魔物に乗って飛んで来たり、転移魔法で急に近くに現れるって事が無いから対処は楽でいい。

 遠浅で、引き潮の時には道になる場所を前衛が進んでくる、その隊列が中ほどまで着た所で、俺はエンチャントを一つ起動。

 そこに設置してある落とし穴が発動し、数百の反応が前後に割れた。


 謎樹海となった元マングローブっぽい木の植林場は既にそこに住む謎生物の縄張りみたいなもので、人も魔もそこは迂回して通る。

 歩ける場所しか進めないのだから、罠を張るのは容易いわけで……人軍は本当に面白いほど罠にかかって数を減らし続けている。

 ほらほら、どーしたのかな?そろそろ気を付けないと防衛用火器の攻撃が始まるぜ?

 そんな事を考えていると、流れ着いた艦砲なんかを流用した近接砲撃システムが稼働を始めた。


 さぁ、パーティーの始まりだ。


***


 他愛ないと言うか、つまらないと言うか。

 ハッキリと言って、侵略者達は弱かった。

 海中落とし穴と砲撃だけでこちらに近づいていた前衛は半壊していて。既に壊走を始めている。

 まぁスイッチ一つでケリの付く、スマートな戦いってのはこう言うものだが。


 ま、ゴミは片付いたんだ、これで多少はぐっすり寝れるだろう。

 そんな事を考えていると、レーダー上で光点が二つ突出してきた。それは、真っ直ぐにこちらに向かってくる。


「なんだぁ?」


 思わず声が出た。

 そっちを見ると、着弾の土煙が近づいてきているのが見える。

 尋常でない、そう思える勢いで、襲い掛かる矢を最低限払いながら、そいつはこちらに進んでくる。


「レムナント!!」


 その声が聞こえたのは、その時だった。

 そう、確かあの声は、個体識別名アルフレッド。

 わざわざ答えてやる事も無いので、城壁の上からそちらを見る。

 そいつは、次々放たれる矢を防ぎながら、俺に向けて叫び続けていた。


「レムナント!出てきてくれ!!レムナント!」


 こっちが顔を見せてやる必要が何処にあるんだ。

 顔を出した瞬間狙撃手が撃ってくるのは判ってる。だから、音声を録音した決め手を一つ使うことにした。


『おい、聞こえているか、侵略者』


 不意に聞こえた声と、止まった射撃に、個体識別名アルフレッドが用心深く回りを見回す。


『怯える必要はない、お前向けに歓迎の先触れを出してやったんだ』

「……なんだ、ゴーレム?」

『お前用に誂えたもんだよ、倒せれば、俺にまみえる価値はある、と思ってやっても良いぜ?』

「舐めるなよ、たかがゴーレム如きで俺が!」


 余裕の勢いで、ただし十分な余力を持ってアルフレッドがゴーレムに切りかかる。

 しかし、ゴーレムは一切の無駄なくその剣を手にした剣で受け止めた。


「なに!?」


 慌てて距離を取るアルフレッド、しかし、それを許す程ゴーレムは甘くない。


『おいおい、どうした?お前と同じ天剣のスキルを持ってるだけのゴーレムだぜ?これくらい鼻歌交じりで倒して見せろよ』

「な……っ!?ゴーレムにスキルだと!?」


 それはそれなりの驚きを与えた様だ、ゴーレムの放った剣技「岩石斬」がアルフレッドの持つ盾を吹き飛ばす。

 しかしそこはさる者、アルフレッドは受けた衝撃を利用してゴーレムの射程から逃げる。

 歯ぎしりしながらゴーレムに目を向けるアルフレッドは、自分を落ち着けようとするように大きく息を吐く。

 そこからの戦いは、実にファンタジックな剣技の応酬だった。

 剣圧が飛び、魔力を纏った剣が煌めき、強烈な一撃が大岩を砕く。

 しかし、本来はこんなものは必要ないのだ、飽和攻撃で潰せるのだから。


 ややあって、敗北を喫したのはゴーレムの方だった。

 満身創痍になったアルフレッドが、荒い息を吐きながら瓶を呷る。

 不意に魔力がほとばしり、アルフレッドの受けている傷を癒した。

 ファンタジーお約束のポーションという奴だろう、エリクサーとかその辺かも知れない。


「はいはい、お疲れさん、疲れてるところ悪いけど、あれ前座なんだわ」

「なに!?」


 まぁ、勝ちは勝ちだ、褒美は必要だよな。

 そう思ったので、俺は通話音声を肉声に切り替える。

 俺は結果に対する礼儀は忘れないのだ。


「じゃ、本命行くぜ?神剣、神弓のゴーレムコンビだ、そう簡単に壊れてくれるなよ?」

「レ、レムナント……!お前は……!」


 アルフレッドが何か言いかける。

 くだらない、お前と話してやる理由が本当に俺にあると思ってるのか?

 さっき声をかけてやったのは、天剣ゴーレムに対して勝利を収めた褒賞だ。

 最も、ここであいつが勝ったとしても、それは戦場での一勝利に過ぎない。

 さっきの天剣ゴーレムが、50ダースほど逃走中の人軍に襲い掛かっているからだ。

 ここでの勝敗がどうあれ、君の負けは確定しているのだよ、アルフレッド。


 そうとも知らずに、アルフレッドは健気に剣を構えて2体のゴーレムに挑む。

 しかし無駄だ、無意味だ。

 この世界における絶対の前提、スキルの時点でお前は負けているんだから。

 天剣のスキルでは、神剣のスキルに決して勝てない。

 この二つは、文字通り世界が違う。

 事実、先ほどは苦戦しながらも拮抗した戦いを見せていたアルフレッドは良い様に押され続けている。

 剣と弓のコンビを前に、一人で戦うからこその苦戦に加えて、基礎性能の差が違いすぎるという事だ。


「ふん……存外こんなもんか」


 俺を害そうとしたこいつを、俺は決して許さない。

 容赦など、一切しない。

 アルフレッドの持つ剣が圧し折られ、まさに神速で放たれる矢が鎧を破壊する。

 さぁトドメだ、という所で突如戦場を暴風が覆った。


「無事か!?勇者よ!」


 そこに現れたのは、漆黒の竜に跨る銀髪の美しき王。

 魔王だった。

 奴はゴーレムたちの動きが止まった一瞬の隙をついてアルフレッドを回収し、一目散にその場を逃げ出した。


 あとに残ったのは、激闘の痕跡と、静寂だけ。

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