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14話 外の状況


 この島への侵入者達をお土産付きで送り返してから1か月。

 常識的にごく普通にしていればアレも収まったころだろう。

 ま、そうしなかったとしても俺のせいではないし、そもそもアレはこの辺りには流れてこない。

 

「ご主人様」

「……どうした、ミリシア」

「ご許可がいただければ、ですが、何着かお嬢様と私の服を用立てていただきたいのです」


 最初に来ていたボロボロの服と、何着かの奴隷服でどうにか着回しはしていたようだが、それがそろそろ限界なのだとか。


「作れないのか」

「この辺りには繊維にできそうな植物がありません、また、仮に繊維として使えるものが有ったとしても、直ぐには使えるようにはなりませんし、非現実的かと」


 元の貴族服は既にぼろ布巻いてるような状態だし、あの奴隷服も即席だ、寧ろ今まで良く持たせたという方だろう。


「判った、なんとかしてみる」

「はい、ありがとうございます」


 努めてクールな表情で、ミリシアが頭を下げる。

 下げた表情は紅く、心なしか呼吸も洗い。

 ぽたり、ぽたりとミリシアの足元に水滴が落ちる音がする。


「ご、ごしゅじんさま……」


 そのまま、何かを耐えるように震える声で、ミリシアが続ける。

 紺色の髪から見える狼の耳はぺたんと倒れ、発言しようとなんとか上げた顔は朱に染まり、目は潤んでいる。

 彼女は、そのまま破れかけているロングスカートをたくし上げた。

 下着など付けていない、裸のままの下半身が露出される。

 その股間には、小さな駆動音を立てて震える棒が突き刺さっている。


「ち、ちゃんと……いえ、まし……っ……たからぁ……! ご、ほうび……くだ、しゃい……!」


 なけなしの理性は使い切ってしまったようだ、それでも努めて冷静にあそこまで話せるのは、見事なものだろう。


「いいだろう、狼人らしく、後ろからしてやる」

「ごしゅじんさまぁ……♪」


 エプロンドレスを脱ぎ捨て、ブラの代わりに巻いている布を外すと、俺の言うとおりに四つ這いになるミリシアに、その後たっぷりと「ご褒美」をくれてやった。


***


「……心にもないこと言って女を抱く男なんてごまんといるが……相手に全く性欲の欠片も感じていないしその気分でもないのにできる、というのはもはや君にしかない才能だね」


 忘我のまま、それでも言いつけどうりに尻を高く上げた状態で放心しているミリシアを見て、そこを通りかかったフレーアルがそう言ってきた。


「結局、生理現象の他は反射に過ぎないからな。条件さえ満たしてやれば制御できる」


 制御できないのは夜間陰茎勃起、つまり朝起ち位だ。

 他は、人間である以上自分の精神状態をきちんと把握できていれば制御は可能だ。

 例えば、絶世の美女が診察台で股を開いていても、興奮して勃起する医者は居ない。


「ともあれ、服は買ってこないとな」

「奴隷との約束を守るとは、律儀だね?」


 フレーアルが意外なものを見たように言う。

 まぁ俺がどっかに出かける、なんてのは珍しいか。


「最低限の人間と関わるのは、苦ではあるが耐えられないものじゃない」

「あ、イヤはイヤなんだね」

「当たり前だ」


 ストールを撒き、鼻から下を隠すと、フード付きのローブを被って、フードを目深にかぶる。


「かくして、不審者一丁上がり、と」

「顔を隠した程度で不審者と呼ばれるのは不快極まりないな」

「不審でない人は顔を隠す必要はないからね」

「他人に顔を見られるなんて御免被る」


 変に覚えられたりしたらどうするつもりだ。


「そんな心配しなくとも、一々行きずりの他人の事を覚えている人は居ないよ」


 その油断が死を招くんだ。

 まぁ、単細胞生物には判らない世界の話ではあるが。


***


 ガレオンに乗って適当な港町にやってきた。

 そこそこ大きな街なのだろうが、今は丁度漁もできなければ船も来ない時期なのか、活気というモノがない。


「……」


 そこらの物陰に倒れ込んでいるのは、奴隷か何かの類だろうか。目障りな事この上もない。


「おい、兄ちゃん」


 ふと気づくと、何人かの屈強な男達に取り囲まれている。


「あの船から降りてる所を見た、悪い事は言わねぇから今すぐ船に戻って帰った方が良い」

「俺が居ると何か不味い事でもあるのか?」

「あぁ、俺らじゃなくて兄ちゃんにな」


 やたらと大真面目に男たちのリーダーらしき人物が続ける。


「ここ最近、領都で広がり始めた流行病がこの辺でも出て来た、100日熱と咳が続いて死ぬって代物だ」

「そりゃ怖いな、服を買いに来ただけだ、長居はしないさ」


 そう言うと、そいつらは顔を見合わせて一つ頷く。


「ああ、その方が良い」


 そいつらはそれだけ言うと去って行く。

 俺が来ているのを知られたな、消すか。


「なに素敵に狂ったこと考えてるんだ、存在を知られただけで相手を殺すとか、君は存在を知ることすら危険な最終兵器か」

「何事も、最初から何も知らない事が身を護る最良の手段なんだぞ」

「どんだけ他人の目に触れたくないんだい」


 他人というモノの恐ろしさを知らない馬鹿はこれだから困る。一々説明するのも馬鹿馬鹿しい。

 心身ともに余計な傷を負いたくなければ、始めから認知されない、以外に手段は無い。

 だから、皆必死に「モブ」の位置を奪い合う。

 そこが一番安全だから。

 出る杭は打たれる、なんて可愛らしいものじゃない。

 出る杭は引き抜かれ、徹底的に甚振られ、自己責任の名の下に打ち捨てられる。

 そこに人権だの何だのと言ったものは存在しない。

 誰もが壊れるまで好きに遊べる玩具。

 どんな最新のゲームよりもリアルで、どんな複雑なパズルより難解。

 故に、相手を自殺に追い込み、実行させると言うクリア条件を満たしたときの満足感、そこに至るまでの一体感は他に代えがたいものがある。

 一人の敵を作ることで全員を団結させる。

 それは学生なら学級の団結や一体感を得るのに必要なことだし、それが出来ない学級は単純に崩壊している。

 学生が社会人になっても構図は同じだ。ただ、言い訳がしやすくなるに過ぎない。


「お前に判るとは思えない、言うだけ無駄だから答える必要は無いな」

「ま、良いけど……それで、どうするんだい?」

「必要なことを終わらせたらさっさと帰る」


 少なくとも、この辺りで苦しんでる奴を観察する余裕は無い。

 まだやる事は山積みだからな。

 ……誰だ、まったりスローライフとか言い出した奴は。下手な修羅場より忙しいぞ。

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