『プレゼントハンター 良い子の流儀』
「本日は取材を了承していただき、ありがとうございます。世界で初めて本物のサンタを観測し、クリスマスプレゼントを獲得したプレゼントハンターというだけでなく、空前のプレゼントハントブームの火付け役、さらにノーベル平和賞受賞者として世界的に有名な佐藤さんを目の前にして、私も少々緊張しております」
「そんな大したものではありませんよ。ただ人より少しだけ良い子なだけです。今日はよろしくお願いします」
「よろしくお願いいたします。それでは早速インタビューを始めます。まずは、佐藤さんがサンタを追い求めようとしたきっかけからお聞かせいただけますか?」
「私が5歳のころ、ほとんどの大人たちはサンタを信じていないという事実を知り、愕然としたんです。どうして本気で確かめてないのに、迷信だと決めつけるのか理解できませんでした」
「耳が痛いお言葉です。正直、私も佐藤さんが撮影された映像をあらゆる研究機関が検証して本物だと認めるまで、サンタなんていないと思っていました」
「いえいえ、私も子供だったからこそ信じられたという面もありますから。そこで、とにかくまずは1年間良い子にしていようと考えたんです」
「5歳児とは思えない決断力と行動力ですね」
「とはいえ、実際はついワガママを言ったり、いたずらをしてしまうことも多く、またプレゼントも親が簡単に用意できないであろう3億円という高難度な設定でしたので、当然のように失敗しました」
「今でこそ、佐藤さんの提唱する『サンタメソッド』により『プレゼントポイント』、『良い子ポイント』、『悪い子ポイント』といった概念が世の中に浸透してきましたが、当時は完全に手探りで研究していらっしゃったわけですから、大変だったでしょうね」
「仰るとおり試行錯誤の連続でした。次の年はプレゼントを1万円に設定したのですが、今度は両親がこっそり用意してしまったんです。小学校一年目で学級委員、ボランティア委員、保健委員、美化委員を掛け持ちして必死にがんばっていただけに、私もついカッとなり癇癪を起してしまいそうでしたが、翌年のクリスマスに備えてなんとか堪えました」
「ご両親も悪気はなかったのでしょうが、佐藤さんとしてはお辛い経験でしたね」
「今では家族で笑い話にしていますけどね。失敗をふまえ、両親にも繰り返し私の目的を説明しました。きっと二人ともサンタの存在は信じていなかったと思いますが、それでも私の意思を尊重してくれました。そして三度目のクリスマス、ついにサンタとの邂逅を果たしました」
「まさに世紀の瞬間でしたね」
「ええ……勿論起きていては悪い子ポイントが加算されてしまいますから大人しく寝ていたのですが、翌朝枕元の靴下に収まる1万円を見つけて狂喜乱舞したのは今でも覚えています。すぐに5台の暗視カメラの映像を確認して、正真正銘のサンタがはっきり映っているのを目にした私は、気づいたら号泣していました」
「どこからともなく突然部屋の中に現れたサンタが、カメラに向かって手を振る映像は全世界に衝撃を与えましたね」
「フェイクだと決めつけられることは想定していたので、すぐに自ら研究機関へ録画データを送りました。事前に連絡をしていたのですが、まさか本当に届くとは思っていなかったでしょうね」
「サンタの存在が科学的に認められてからも、佐藤さんは精力的に活動を続けてこられましたね。特にサンタメソッドの普及は世界に大きな影響を与えました」
「私だけではなく、より多くの人が自らサンタの存在を確認して欲しかったんです。メソッドが広まり、次のクリスマスには各地で102名のプレゼントハンターが生まれました」
「62歳の男性がサンタからラジコンカーをプレゼントされたことにより『良い子に年齢は関係ない』という佐藤さんの仮説も実証されることになりましたね」
「ええ、彼のおかげで大人もプレゼントハンターを目指すようになり、さらに翌年には世界で1万名以上がサンタから贈り物を受け取ったとされています」
「この頃から全世界で犯罪率が最大8割まで減少し、深刻な貧困問題や食糧問題を解決する希望の光としてサンタメソッドが脚光を浴びました。そして、同年、ノーベル平和賞最年少受賞者に佐藤さんが選ばれたわけですね」
「本当に恐縮でした。あくまでも人々に笑顔を届けてくれているのはサンタですし」
「その謙虚さこそ、良い子の鑑ですよ。残念ながら時間が迫ってきたのでそろそろ最後の質問になります。今まで累計数十億円のプレゼントを獲得なさってきたわけですが、今年11歳のクリスマスにはどんなプレゼントをご希望される予定ですか?」
「今までは獲得した現金を様々な環境・人道支援団体に寄付していたのですが、ここ数年は皆様のご協力のおかげで多くの団体に十分な活動資金が行き渡るようになりました。そこで、今後はサンタへの支援、協力体制を整えることができないかと考えています」
「サンタの役に立つための活動ということでしょうか?」
「ええ、私は、これまでサンタと共に人生を歩んできました。かけがえのないたくさんのプレゼントを貰ってきました。だから今度は彼のために何かをしてあげたいんです。まず今年はサンタとのコミュニケーションをプレゼントとして願うつもりです……後は、一般的に反抗期を迎える年齢なので悪い子にならないよう気を付けます」
「はははっ! つい忘れてしまいがちですが、そう言われれば佐藤さんはまだ小学校5年生でしたね」
「もう、忘れないでくださいよ!」
「「あはははは!」」
数年後、彼女がサンタの妻となり生涯彼と共に世界中の隅々まで笑顔を届けることを今はまだ、誰も知らない。




