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好きな気持ちより、嫌いな気持ちが勝ったので  作者: ここるく


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2/5

中編

ここから創作


 目が覚めると、ようやく見慣れた自室の天井だった。

 見渡しても誰も居らず、ぼんやりとしながら経緯を思い出す。


 あぁ……私、倒れたんだっけ?



 はっ!!



 陛下があの人を側妃にするって言った!


 嘘よね?

 だってだって、私を愛してるって……私だけを妻にしてくれるって言ったのに!?



 いても立ってもいられず、慌てて起き上がり部屋を飛び出した。


 見つかると面倒くさい事になるのは予想出来たので、 こっそり(・・・・)陛下を捜す。



 やがて廊下の向こうから何人かの侍従を連れて、陛下が歩いているのを遠目で見つけた。

 だけど私にネチネチと嫌味を言う宰相が一緒に連れ立っているのも見えたので、咄嗟に柱の影に隠れて身を潜める。



「そう言えば、王妃殿下がお倒れになったそうですな?」

「ああ、イレーヌの事を伝えたら、いきなり倒れおったわ」

「ほぅ、それはそれは。ようやく陛下のお妃様が決まりになられるというのに、なっとりませんなぁ」

「イレーヌには待たせてしまったからな。すまない事をした」

「それにしても……わざわざあの娘を正妃になさる事はなかったのでは?」

「形だけでも聖女を正妃にしておけば、対外的にも抑制になるだろう?」

「それはそうですが……あのような平民を王家になど……」

「まあ、いいではないか。私も異世界人を味見したかったのだ」

「ほほぅ。それで、如何でしたか?」

「なーに、その辺の娘と何ら変わらんかったわ。もう飽きたし」

「そう考えると、少し興味が湧きますな」

「そうか?なら、誘えば良いぞ。ちょっと優しくしてやったら、コロッと落ちおったわ。今なら傷付いているようだから、お前でも簡単だろう」

「そうですか?でしたら狙ってみますかな?」



 ワハハと笑いながら去っていく一行を見ながら、ズルズルと壁に背をつけて座り込む。



 あぁ……全部、嘘だったんだ……。



 

 いきなりこの世界に喚ばれた私に優しくしてくれたのも。

 この世界の瘴気を祓うための修行を励ましてくれたのも。

 帰りたいと泣く私に、愛を囁き、お姫様のように扱ってくれたのも。




 無意識に流していた涙を拭いながら、とぼとぼと歩いていると使用人達の部屋の前で声が聞こえた。



「ようやくイレーヌ様がお妃になられるのよね?」

「そうそう! 明日のパーティはその発表でしょう?」

「良かったわぁ〜。あんな平民が王妃だなんてみっともないと思っていたのよ。その点イレーヌ様なら安心よね〜。公爵令嬢だし、頭脳明晰で美しいし、マナーも完璧。私、イレーヌ様の侍女になれるように頑張るわ!!」

「私も!」



 賑やかに話し合っているのを聞いて、そっとそこから離れた。自室に戻り、ドサッとベッドに横になる。






 なんとなく気付いてた。



 王妃とは名ばかりで、専用の侍女もおらず、ほぼ放って置かれて居る状態。食事もこの部屋に持ってこられて、一人で食べる毎日。


 お渡りも最初の内だけで、すぐに公務が忙しいという理由で顔すら見せなくなった陛下。


 王妃教育と言う名の勉強も、この世界の事を何も知らない私には覚える事が多すぎて。

 ようやくマナーを身につけ、人前に出ても可笑しくない程度にはなったと思ったんだけどな……。



 全部、無駄だった。



 最初から私はお飾りで、あの女と結婚するつもりだったんだ。

 

 いつも私を目の敵にして、ちまちまとした虐めをしてきたあの嫌な女と。




 使用人達のよそよそしさも、大臣達の見下すような目線も、みんな全部知ってたんだ。




 ふふふ……笑えるわ。





 これでも私なりに、あの人の事を愛してたんだけどなぁ。








 一晩泣いて、目がぽんぽんに腫れた私は、鏡を見て、何だか猛烈に腹が立ってきた。




 何で私が苦しまなきゃいけないの?


 

 いきなりこんな世界に喚ばれて(望んでないのに)


 聖女なら瘴気を浄化して欲しいと言われ(知らんがな)


 浄化し終えて好きに生きようと思ったら、どうしてもと王妃に望まれたから、王妃になったのに!!(ちょっと浮かれたけど)




 そっちがその気なら、もういいわ。



 さっさと離婚してこんな国、出ていってやるんだから!!





◇◇◇



 あれから細々とした準備をしていると侍女達がやってきて、あれよあれよという間にドレスアップされてパーティ会場まで連れてこられた。

 

 どうやら私は最後らしい。


 陛下はあの女をエスコートしてもうすでに入場している。

 

 私はエスコートもなく、一人きり。

 まあ、いいんだけどさー。




 名前を呼ばれて入場すると、会場の全員の視線が一斉に集まる。


 以前は緊張していてよく分からなかったけれど、今落ち着いて見てみると貴族達の視線が冷たい事に気付く。

 中には明らかに侮蔑の表情を浮かべて、私を見ている者もいる。



 こんな事にも気付かなかったなんて、恋愛脳って怖いわー。




 陛下の隣に並ぶと、朗々とあの女を側妃に迎えると告げた。

 貴族達が一斉に喜びの声をあげ、会場が華やぐ。


 白けた気持ちでそれらを見ていると、挨拶を終えたあの女が近付いてきた。


 それに気付いた人々がそっと様子を窺っているのが分かる。


「聖女様。体調はもうよろしいのですか?」

「……ええ」

「それは良かったですわ。これからはわたくしが陛下を支えて参りますので、聖女様はゆっくりとなさってくださいませ」

「……」

「これからはわたくしとも仲良くしていただけると嬉しいですわ」

「それは遠慮するわ」

「なっ!」


 ザワリと会場が騒めき、ヒソヒソと囁き合う。


 陛下が溜息を吐きながら、私を見て言う。


「どう言う事だ? イレーヌと仲良くできんのか? お前を思う優しきイレーヌを蔑ろにするつもりか!?」



 スクっと立ち上がり、陛下達に向かい合う。



「いいえ、そうではありません。私は離婚しますので、もう関係ありません。お二人でお好きになさったら?」




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