55話 彼女なんだよな...
夏休みが終わり、今日から二学期となる今日、春から柚木の、引きこもりの更生を頼まれて、柚木とコンタクトを取ったがファーストコンタクトは最悪の結果となった。
それから、学校へ登校する条件として柚木の漫画家になる手伝いをすることになった。
加えて、登校の条件として友達になって一緒に学校に登校して欲しいと頼まれて柚木の学校への復帰を果たした。放課後デートをしたり、ゴールデンウィークに映画に行ったり、夏休みには、下條や立花たちと一緒に、水族館や夏祭りにも行った。
夏休みの終わり頃、柚木が突然、俺の前から消えた。イタリアに帰国しようとする柚木を引き留めて、告白して俺たちは恋人同士になった。
先日、柚木の世話を本格的にするのに柚木と同棲することになった俺は、家の家事を妹の愛那に任せて、お隣に住む柚木と同棲を始めた。
眠い目を擦り、俺たちの朝食を作り終えると柚木を起こすべく彼女の寝室へと向かう。
昨日は、唯依と寝室のベットを共にするかどうかで揉めて、俺がソファで寝ることで柚木とは話がついたのだが…「首がいてぇ…」どうやら寝違えたようだった。近いうちに布団を買わないとだな。と思い首をさする。
寝室に入ると、既に冷房は切れていて、もわっと暑い。柚木は、タオルケットを蹴っぽって寝ていた。「柚木、起きろー!今日から学校だぞ!」と多少、声を張り上げて言う。が、
柚木は起きる気配がない。「柚木、起きないとゲームとマンガ捨てるぞー。」と耳元で囁く。
すると柚木は、ガバっと起き上がり「ダメー!捨てないでー!」と飛び起きた。これは効果抜群だな。今後、柚木が起きない時はこの手を使おう。柚木は、ベットから這い起き、寝ぼけながらゲームコレクションを確認すると、「良かったー、ちゃんとある。藤也くんにゲームを捨てられる夢を見たから焦ったー」と額に汗を滲ませて言う。
「これから先、ゲームばっかりして夜更かしするようなら捨ててしまうかもな」
「あー!それはダメー夜更かししないから!」
「本当かー?ちゃんと見張っておくからな!」
「しまった、藤也くんと同棲しなければよかった…」
えー。そんなこと言うなよ……
「聞こえてるぞ柚木。俺と一緒に暮らすからにはお前の自堕落な生活を正してやるからな」
「程々にね」
「柚木がいい子にしていれば、そんなに言わないぞ」
柚木が何も問題を起こさなければ俺だってそんなうるさくは言うつもりはない。柚木が手のかかる子だから言うまでだ。
「もう、お兄ちゃんみたい、なんだか、朝起こして貰って朝食まで作ってもらうなんてさ、なんだか新婚生活みたいだね」
「あ、そう言われれば…」
俺たちがやっていることは完全に同棲生活のそれだった。意識すると恥ずかしくなってくる。
「まったく、女の子と同棲と言ったら、朝食を美少女から作ってもらう夢があったのにこれじゃあ、立場が逆だよ。になんで俺がこんなこと…」
「わたしに料理させる気?どうなっても知らないよ?」
「やっぱりいいや!火事になっても困るし」
柚木に料理させたら駄目!仕方ない、男の浪漫は諦めよう。
朝食を食べ終えて家を出ようとするとき、柚木が俺の手を握り引き留めた。
「どうした?柚木、やっぱり学校へ行くのは怖いか?」
まだ、数回しか学校へ登校していない上に慣れない学校生活の喧騒の中に戻るのは怖いか。
「柚木、どうしても無理というならもう少し学校へ行くのは待つけど、どうする?」
「う〜ん」
「行っておくけど、後に伸ばすと復帰するのが辛くなるだけだぞ」
無理に学校へ行ったとして辛い思いをして行くのはんんだか違う気がする。
「学校に行きたいけど…怖いの!」柚木は悲痛の叫びで痛々しく訴える。
「大丈夫、俺も一緒だから。学校へ行けば、涼風や下條だっているしさ、頑張って学校に行かないか?」
「藤也くんが一緒なら頑張って行きたいけど、それでもまだ勇気が足りないの。」
「勇気か…俺にできる事は何かあるか?」柚木の目を真っ直ぐ見て訊く。
柚木は、恥ずかしそうに視線を逸らして「…して」と聞き取れないような小さな声で何か言って来る。
「なんだ?よく聞こえないぞ!?」
「だから、わたしとキスして!」
「キスってあれか?ホッペにチューとかそういうやつか?」
「ち、違う…唇にするやつ」
「本気で言ってるのか?俺、そういう経験無くて初めてなんだけど」
「わ、わたしだってした事ないよ!」
「わ、分かった…するぞ」
人生初のキスに心臓の鼓動がうるさい。ていうか、キスってどうやってするんだ??
「ど、どうぞ…」
俺は、柚木の柔らかい頬に手を添え、彼女の唇に自分のを重ねる。
ほのかに香る甘い匂いは柚木本来の匂いだろう。柚木の唇はプルプルで潤っていてすごく気持ちいい。俺は唇を軽く触れさせるだけにして柚木の反応を見る。柚木は頬を紅潮させ、恥ずかしそうに目を逸らす。「これでいいか?柚木学校は行けそうか?」
「うん、大丈夫そう。続きはまた学校から帰ってきたらしよ…今は、もう大丈夫。」
柚木は、さっきと顔色が変わり、頬が紅潮して息遣いも少し荒い。
「分かった。それじゃあ学校に行くか…」
こうして柚木の二学期の挑戦が始まった。
その前に、俺も初めての事で心臓が暴れ出し、沈めるまでもう少しかかりそうだ。
「ちょっと、顔洗ってくる」と頭を冷やしに行くのだった。
九月に入っても、外の気温は、未だに暑い。夏休み中の猛暑は過ぎ去ったが、まだ、汗ばむ気候は続いている。学校へ登校するのもうんざりするがそれ以上に俺の隣には恋人となった柚木が居る。柚木の表情を伺うと照れ笑いで笑顔を返してくる。
(俺の彼女なんだよなー)
柚木は俺の袖を掴み、手をつなぎたそうにしてくる。俺は、それに気付くと「手、繋いでみるか?」と優しく訊くと、柚木はコクン、コクンと頷く。
俺は、柚木と恋人繋ぎをし、学校に歩みを進めて、校門に差しかかったところで馴染みのある声に後ろから呼び止められた。「やあ、お熱いね二人とも!」そう無駄に爽やかな笑みで話しかけてくるコイツは…
「なんだ?爽太、これは別に特に意味はないけど。柚木が手を繋ぎたそうにしてたから手繋ぎで登校してただけだ」
「だけだって…本気かい?」
「そりゃあ、友達同士仲良くなれば手ぐらい繋ぐだろ?」
「恋人繋ぎでかい?!」
「まあいいや、そういうことにしておくよ。せいぜい周りの人達を火傷させないようにね」
「火傷?どういうことだ」
改めて、周囲を見渡してみれば俺と柚木を見て、頬を赤らめている人たちがチラホラいたり
俺と柚木の様子を射殺す眼差しを向けてくる奴もいたりとしていた。
「悪い意味でもいい意味でも注目の的じゃないか!」
でも、悪いな。柚木は俺のだからせいぜい指をくわえて見ていてくれ。
と周囲の男子たちに柚木は俺のだとアピールす売るのに彼女の肩を引き寄せる。
すると、柚木の肩がビクンと揺れて強張る。「柚木、いやだったか?」
「いや、イヤとかじゃ無かったけどいきなりのことでビックリしただけだよ」
柚木は、イヤな素振りを見せることなく俺を受け入れる。
「そうか、周りの男子たちに唯依は俺のだとアピールしようと思ったんだけど、ダメだったか?」
「イヤ、ダメじゃないけど照れる……」とそっぽを向いてしまう。
もしかして俺たちが公衆でやっていたことって目の毒だったんだなと痛感した。と同時に恥ずかしさが押し寄せるのだった。
「でも、瀬翔くんならいいよ」
「あっ名前で呼んでる」
「だって、瀬翔くんだってわたしのことを名前で呼んだから…」
そうだな、今更他人行儀なんてできないし、よろしくな俺の彼女」
「よろしくね、わたしの彼氏さん」
と二人だけの時間は過ぎていくのだった。
物語に区切りがついたのでここで完結させます。
続編として続きは書いていくのでまたの応援をお願いします。




