彼女なんだよな
ダイニングテーブルに朝食を並べていると、寝室から唯依が着替えを済ませて出て来た。
まだ、半分、寝ぼけた顔の唯依に熱々の濃いめのカフェオレを淹れてあげる。
「ほら、唯依!コーヒーでも飲んでシャキッとしろよ」
唯依の口に合うように適量の砂糖を入れた甘めのカフェオレを出すと。唯依は椅子に座り、
コーヒーをチビチビと飲む。
朝食は、目玉焼きとベーコンでベーコンエッグ、焼き鮭。豆腐の味噌汁となっている。急いで作ったからこんなものだ。
俺も一緒に食べる。うん。美味しく作れたな。
唯依は、「うん。美味しい!流石は、藤也くん」といつものお褒めの言葉をくれる。
「早く食べ終わって、さっさと学校に行ってしまおう」
「ほんと言うと今日なんて学校になんか行きたくないよ」
「いや、そんなことは許さないぞ。また、引きこもりの性分が出ているぞ」
本当に、気を抜いたらいつでも、引きこもりに戻り兼ねない。俺が、ちゃんと見てやらないと。
「学校に行ってもいいけど、お願い聞いてくれる?」
「なんだあ・それは?」
「今は言えない。登校中に言う」
いったい、俺に何をお願いするというんだ?見当がつかなかった。
「わ、わかった。ほら、急いで食べないと本当に遅刻するぞ!」
「ちょっと待ってー。ゆっくり食べさせてよ!」
「ギリギリまで寝ていて奴がなに言っているんだよ!」
俺は、そう唯依を急かして先を急ぐ。
朝食を食べ終えて、俺たちは急いで家を出ようとする。
「歯は磨いたか?ハンカチとティッシュは持ったか?」
「あー、もー!オカンかってのー」
こうして、俺たちは慌ただしくも家を出た。
***
危なかったー。電車、ギリギリだったねー
」
「唯依がトロいからだぞ」
「もー酷いなー」
そんなことを言いつつ駅から学校までの通学路を唯依と並んで歩く。
周囲にはまだ、学生の姿はさほど多くない。次第に学校の校門が見えてきた。唯依は俺に歩調を合わせて何やらモジモジとしている。
なんだ?トイレにでも早く行きたいのか?などと思っているとキュッと袖を掴まれる。
「唯依どうした?もしかして手を繋ぎたいのか?」
「...うん。いい?」と上目遣いに言われる。
これは、反則じゃないだろうか!?か、可愛すぎる仕草に心臓がドキリと跳ねる。
え?...どうして、こんないきなり甘えてくるんだ?もしかして、それは―
「わたし達、付き合っているんでしょ?だから、お願い」
「そう、だったな...」
そうだ、唯依は、俺の彼女なんだよな......
俺は、唯依の小さい手を自分の手で覆うようにして手を繋ぐ。
が、唯依は「違う、これじゃない」と不満を訴える。
「えっ、違うのか?こう、か?」
そして、俺たちは慣れない手つきで指と指を絡めて恋人繋ぎをする。
これが、唯依からのお願いか。つまり、恋人らしいことがしたいということか。
「そう、これ!」唯依はご満悦な表情で頬を緩める。
せっかく、唯依と恋人同士になったんだ。恋人らしいこともしてみたのも確かだけど、
えっなに?スゴく恥ずかしいんだけど!
唯依と恋人繋ぎをして歩いていると、後ろから「ひゅーひゅーお熱いねー」
と野次が飛ばされる。
なんだ、冷やかしかと思い、野次を飛ばされた方を振り返ると、爽汰だった。
「なんだ、おまえだったか。ウザイな」
「その様子だと、やっと柚木さんと結ばれたみたいだね!いやー長かったな、君達の焦らし具合は」と爽汰は、茶化してくる。
「そう言うお前は、恵とはどうなんだよ?夏祭りの時にいい感じだったじゃないか。俺たちのことばかり気に掛けてさ、自分の恋もしっかり見てろよな」
「恵ちゃんとは、なんというか、まだどうともしないよ。藤也と柚木さんほどの進展はないかな」
「ふーん。告白はしたのか?」
「いや、まさか?!全然。前にも言わなかったっけ?僕は三次には興味ないってさ」
「いや、爽汰それは勿体ないって!せっかく顔がいいのにさ」
「まあ、そのうちね。さあ、遅刻しちゃうよ、急ごう、藤也。柚木さんもおいで」
学校へと入ると、唯依と繋いでいた手は解き、唯依と並んで歩く。流石に、学校の中まで恋人繋ぎでいるのには、いささか恥ずかしいから。
唯依は、名残惜しそうに繋いでいた手を離すと、一定の距離を取って俺の傍をテクテクとついていてくる。
「ごめんな唯依。流石に恥ずかしいからさ...嫌だったか?」
「ううん、いいのわたしも、人前だと恥ずかしいから...」
俺と唯依の間に甘ったるい空気が漂い、爽汰は、「身体がむず痒いわ!」といい身体を掻きむしる。
周囲の生徒も、学校一の美少女であり、才女でもある唯依が、男と仲睦まじく話していることから注目の的となった。
教室へと入ると、クラスメイト女子から、「藤也くんと柚木さんて付き合っているの?」などと質問攻めに遭う始末。
唯依が、「は、はひっ...などと顔を紅潮させて顔から湯気が出そうなほど、ぽっぽしている。
質問を投げかけてきた彼女に俺が唯依の代わりに、「うん、付き合っているよ」と簡潔に告げて、それを聞いた女子から、「キャー」という黄色い歓喜の声を教室中に響くのだった。
「やっぱりね!さっき、校門の手前で柚木さんと藤也くんが恋人繋ぎして仲良く登校してうのを見かけたから、もしやと思って聞いてみたんだけど、本当に付き合ってたなんて」
「俺が、一方的に好きになったから」
「いや、わたしだって...」
「お熱いねー。やるね。このっこのっ」と肘で脇腹を小突いてくる。
「えっと、ども。吉田って人の恋バナ好きだな」
「そりゃあもう、JKは皆、恋バナ好きだよ」
「そうなのか?」
雑談をしていると予鈴が鳴る。
咲良先生が教室に入ってきた。
「じゃあな、咲良ちゃん来た」
「じゃあね、藤也くん。柚木さんも、またね!」
そう言い残して、吉田は自分の席に戻っていった。
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