来日と宣戦布告
唯依と一緒に自宅マンションに帰ると、柚木宅の前に一人の女性が立っていた。その見覚えのある顔を見て、ハッとする。「あっ!ママ...」唯依が顔色を曇らせる。今、顔を合わせるのは不都合のようだ。「久しぶりですね、唯依。引きこもりは解消した?お母さん様子見に来たわよ。その様子だと、無事に学校に登校に行っているいるみたいですね。安心しました。これは夢じゃないんですよね」
「まあ、一応は学校に通っています」
「それにしてもいきなりですね。何かあったんですか?」もうすぐ夏休みが始まろうとしている中、抜き打ちで、イタリアから日本に来日してくるんだしてくるんだ。何かなければこんな事はしないだろう。
「唯依が引きこもりを更生してくれたなら話が早いわ。唯依、あなた今の学校を辞めてフィレンツェの学校に通いなさい。」
「えっ...なんですって??ママ、今なんて言ったの?!」唯依は慌てふためいて再び、舞依さんに訊ねる。
「そうよ、芸術学校の名門校が、わざわざあなたの空席を開けて待っていてくれたのよ。」
「そう、なんだ...でもわたし、フィレンツェには行けないよ」
「なんで?あなた日本に残ってまで何かやりたいことでもあるって言うの?」
「そ、そっちこそ何でわたしが引きこもりから更生さえすれば転入すると思ったの?」
「わたしには、漫画家に成るって夢がある. . . その為に日本まで来たんだから!」
「唯依、はっきりと意見を言えるようになったのね。でも、それは駄目よ」
「うぅ。そんなこと言ったて戻らないんだから......」
「漫画家を目指すってことは、日本で今の学校に適当に通って、漫画家を目指すってことですよね?」
「適当に通いながらって...」
「そんなの許しません!」舞依さんが唯依の言葉を遮って言う。
「そんな、わたしの気も知らないで......」
「何か言いたいことでもあるようですね。何ですか?」
「わたしにとって漫画は、希望だったの。フィレンツェで活動していた頃は、名門校
に通っていたけど、それは只、敷かれたレールの上をただ歩いているだけで楽しいと思ったことなんてなかったの」
それこそ、毎日が苦痛だった。もう、あんな生活に戻りたくない。自分が自分で居られない日々を過ごさないといけないなんてもう、うんざりだった。
「才能を認められて、十分な活動が出来てなにが不満だったのですか?」
「絵を描いても描いても心が満たされなかったの、でもネットやツビッターに投稿してある漫画を読んでいると、わずか数ページしかないのに読者を楽しませていて、スゴいなと思ったの。そこで、わたし思ったの、わたしも、こんな風に人を楽しませたいって。それが、私の夢なんだ」
この夢だけは誰になんと言われようとも譲れない。フィレンツェに居ては叶えられないことだった。だからわたしは......
「なんで漫画なの?絵画では駄目なのですか?」
「絵画は...素晴らしいものだけど、美術館に行くのにもその絵を購入するのにも掛かる費用が高すぎると思うの」
「でも、漫画なら数百円安価から漫画を購入出来て多くの人を楽しませることができるの」
「そんな、漫画なんてくだらない。そんな低俗の文化より絵画の方が優れているわ!」
「お言葉を返すようですが、舞依さん、僕は、小説を書いていてくだらないだなんて思ったことはないです」
「そう言えばあなた小説を書いていると言うけど、小説なんかで稼げていけるの?」
あなた、私との約束を忘れてないわよね?小説で唯依と同等成果を出せなかったら身を引くって」
「そ、それは...確かに、今のままでは成果も出せていないし稼げませんがでもいつかは!」
「ほら、見なさい!そんな先が見えない夢物語小説や漫画なんて子供の道楽に過ぎないのですよ」
「クッソ...」
「確かに、周りから見たら道楽かもしれない。それでも俺は、小説に魂削って頑張ってきたんだ。それを、只の道楽なんかで、括らないで欲しい。」
「唯依、我儘言ってないで帰りますよ。」
「イヤだ!行きたくない!」
「舞依さんそれなら、唯依の漫画を連載させて唯依には才能があることをことを照明させてみせますから!」そう俺は、そう啖呵を切るのだった。
舞依さんが帰った後で唯依宅で、俺は、唯依と二人で過ごしていた。あんなことがあった後でまったりと過ごせる訳もなく、重々しい空気」の中で、二人してどう会話をしていいものかと
沈黙が続く。舞依さんとの約束を果たせなかったことへのショックと唯依がイタリアに連れていかれてしまう不安で、「はぁ~」と凹んでしまう。そんな俺の溜息を聞いて唯依は、チョコンとソファーの端に座り、そして、自分の隣を叩き俺をソファーに誘う。俺は、何事かと唯依の隣に座ると、唯依が瑠璃色の瞳で見つめてきて、「今回は、特別だからね。さあ、膝枕をしてあげる」そう言い、自分の腿をポンポンと叩く。ここに頭を乗せろという意味だろうか。
「い、いいのか?こういうことはご褒美にしてあげるんじゃ...」
「いいの。藤也くんを慰めてあげたいときも有効だから」そう言い優しく俺の髪を梳く。
「明日から夏休みだし、リフレッシュにプールでもいかない?藤也くん」
「それ、いいな。どうせならサークルメンバーも誘っていかないか?」
「恵ちゃん」と秋雫先輩だね。いいよ!」
「そうだな。あと、下條もな」
「うん、わかった!」
こうして、夏休みは、サークルメンバーでプールに遊びに行くことになった。
***
藤也くんと別れて一人になりたかった。部屋に閉じこもり、ベットにボフンと身を投げる。
ママに、漫画はくだらないって言われちゃった。そんなことないって上手く伝えられなかったな。でも、藤也くんが私の代わりに怒ってくれた。「漫画はくだらなくない」ってわたしの気持ちを代弁してくれた。助けられた。わたしの気持ちを分かってくれた。それが、スゴク嬉しかった。藤也くんの想いに応える為にもお母さんに認めて貰う漫画を描く。
それが、今、自分に与えられた課題だった。その為に、今は多くの経験を積まないといけない。
サークルメンバーと一緒に面白い漫画を創っていこう。最後には、自分だけの力で......
そして、夏休みが訪れようとしていた。皆とプールに行ってリフレッシュしてそして...これからわたしの熱い夏が始まる。
読んでくれてありがとうございます。
連続投稿です。
連続投稿はひとまずストップです。
今後ともよろしくお願いします。




