強敵と決壊
翌日、学校の昼休み、涼風にWEB小説コンテストに応募するかどうかを悩んでいることを告げた。
涼風は「そうか。でも、チャンスを与えられてるんだからモノに出来ないなんて勿体ないよ。もうエントリーされている小説があるけど」
「そうか」
「見て見てよ!この作者、相当の強者だぞ藤也。」
涼風は、俺にスマホのWEB小説サイト小説家になろうよ!の画面を見せてくる。
「夜上月か。あれ?このペンネームどこかで聞いたことがあるような...」
「わかった!二年の特待生。A組の八神光だ!」
A組と言えば、芸術コースと文芸コースに分かれる特待生クラス。
そうか、八神は、文芸コースに在籍していたのか。
八神といえば、爽やかな王子様キャラで男女共に分け隔てなく気さくに接することからクラスの人気者なことは隣のB組にも伝わってきていた。
「ねえ、八神の小説主人公の名前がライトくんだって!」
「おいおい。あの人「ほぼ実名でで俺TUEEE小説なんて書いているのかよ」
「まあ、読んでみろよ。中身は本物みたいだよ」
俺は涼風に促されて小説に目を通してみる。
いったいどんな、作品なのか?!
一通り目を通しあまりのクオリティにド肝抜かれた。
これを俺と同い年の高校生が書いたなんて。
武者震いがした。
【爆焔のダークナイト】
王都の結聖騎士団に所属する主人公のライトは第二王女に秘かに想いを寄せていた。
ある日、屋敷に王女の命を狙う刺客が潜入して刺客との戦闘になる。死闘の末に、ライトは、王女を守る為に。禁忌である暗黒面の魔素をその身に宿す禁術を使い、暗黒騎士となり刺客は退けた。
だけど禁忌を冒し暗黒面堕ちたライトのことを騎士団団長は『お前は聖騎士じゃない!』と騎士団を追放されてしまう。
流浪の騎士となって自分はたとえ禁忌に触れたとしても正しい行いをしたはずなのにこの仕打ちはあんまりだ!と怒り成り上がりを決意する。
それでも王都に害を成す勢力やモンスターなどを駆逐していく。
その頃、騎士団はというと今まではライトが居たからこそ倒せていたモンスターに苦戦するなどして戦績が低迷していた。
そんあことが続いたある日、魔族達の闇の軍勢が攻めてきて最悪の事態に陥る。
騎士団は、唯一魔族と対等に渡り合える暗黒面の力を持つライトの力を求めて団員達は、騎士団から追放したことを深く後悔する。
騎士団の危機にライトが現れ、魔族を一閃薙ぎ払う姿を見て団員達は、ライトのことを見直すのだけど、団長だけはライトの功績を素直に認めないのだった。
「おお、これは悔しいけど面白いな!小説家になろうよ!の今流行の現地主人公で追放ネタも使われていていい!」
「藤也だって、凄い実力を持っているじゃないかまだ錆びれてないだろ?」
「まあ、今は,オリジナル小説を書いているけど、またあんなことになるんじゃないかと思うとこのままコンテストに出していいものかと思ってさ」
そう、あれは苦い記憶で思い出しただけで吐き気がする。
「うっ......」
「てっ、おい!大丈夫かい?!」
「悪い、ちょっと昔のこと思い出してしまって気分が悪い。午後から早退させて貰うわ」
「そ、そうかい。気を確かにね」
そう言い、俺は午後から学校を早退してマンションへと帰るのだった。
俺は、高一の頃に商業作家として小説家デビューしていた。
デビュー作は今とは作風が違っていて、異小説を書いていた。
小4頃好きだった作家宮部みさきさんの異世界ファンタジー小説【ブレイブソード・ストーリー】の作風に感動して自分もこんな作品が書きたいと思い、二次創作小説として当時書いていた小説のリメイクとして書いた。その作品【ブレイブソウル・ファンタジー】が丸川文庫の新人賞を受賞して商業作家デビューを果たした。
だけど、その小説はネットで大批判を受けた。『宮部みさきの劣化レプリカ』『ファンにしたってクオリティが酷い』など
ディスられて深く傷つき、小説の続巻も発売されることはなかった。
一巻で打ち切りとなってしまったことで自信を失いそれで、また小説を書いてディスられるのが怖くて小説を書くことが怖くて出来なくなった。
そんな時、WEB小説の二次創作サイトで、楽しそうに小説を書いている人達を見て、自分も二次創作で書いてみたくなりこれならまた自分でも書けるかもしれないと思い、同サイトで二次創作小説で再び小説を書き始めた。
そして、小説を書く面白さを再び思い出したのだった。
でも、自分の作品に絶対の自信がある訳じゃない。
誰かの『大丈夫』と言う声が欲しい。そうしたら俺は再び自信を持ってコンテストに臨める。
そう思い、自然と足は唯依の元へと、208号室へと唯依の元へと向かっていた。
インターホンを押そうとする手が緊張で震える。今まではなんのためらいもなく押せていたのに今は、それが出来ない。
俺は、意を決してインターホンを押す。もう迷わない。唯依に救いを求める恥ずかしさも全部打ち明けよう。
そして、扉が開き唯依が軽快な足取りで出迎えてくれた。
『あっ藤也くん!どうしたのこんな早くに。今行くね』そう唯依がにこやかに微笑み掛けてきてもう決壊寸前だった。
いつも通りのピンクのチェックのパジャマから水色のチェック柄へと変わっていた。
俺は意を決して言う。自分が過去に商業作家としてデビューしていたこと。
その小説が大批判を喰らって小説が書けなくなっていたこと。二次創作と出会い再び、小説を書き始めたことをすべてを打ち明けた。
その後、俺はこう締めくくる。「こんな俺でも、今書いてるラブコメ小説でWEB小説コンテストにエントリーしようと思うんだけど、大丈夫かな……」と。
唯依は目を輝かせ「スゴイ!藤也くんなら出来るよ。大丈夫!藤也くんが書く小説、わたし好き!」と言ってくれてそれだけで俺はすべてが救われた気がした。
それでも、俺なら出来る!とそう思えてくる確かな自信には繋がらないのだった。
自分の書く小説は果たして面白いものなのか迷走を繰り返すのだった。
次回、秋雫先輩による特訓です。
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