くま 第2話
「みずほ、どうする?」
「余興だっていうのなら、付き合ってもいいけど。」
「よーし、さくらちゃんのハートは、私たちがいただくよ!」
「なんか違う気がする。」
「それで、どこを探す?」
女湯でクマの着替をどうやって、というのもあるけれど…
「部屋に戻りましょう、怪しい場所に心当たりがあるわ。」
そうして、部屋に戻ると、開口一番、あきちゃんがのたまう。
「さぁ、みずほの傘はどこにあるの、その中に謎が隠されているはず!」
「言いたいことは、だいたい分けるけど、なんで私のに限定したの。」
「えっ、ちがうの?」
「ちがうから。」
夜目、遠目、笠の下…、美人の条件ね。
「でも、その考え方で、方向性はあっていると思う。」
「ほう。」
「怪しいのはこの絵。この花は、多分ショウブではなくて、アヤメだと思う。」
「あーなるほど、いずれアヤメかカキツバタね。」
額縁の裏をさぐると、メッセージカードがあらわれる。そこには、青いインクを使って、なにやら見慣れた名前が書き連ねてあった。
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あかつき
安芸
さくら
瀬戸
はやぶさ
北斗星
みずほ
最後まで残ったのは?
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ちなみに、旦那の名前が北斗だったりする。
「あ、これ知ってる、高校生のころに気が付いた。」
そう言う、あきちゃんに。
「えっ、高校って、さくらもあるけど?」
「さくらちゃんもあったのは知らなかったけれど、調べればわかると思う。」
ちょいちょいっと検索したスマホの画面を見せながら、あきちゃんが説明してくれた。
「へー、これ全部、列車の名前なの?」
「そう、それも寝台特急『ブルートレイン』の名前。」
あきちゃんが頷く。
「ブルートレインは、もう走っていないのだけれど、グーグル先生にお尋ねしたところ、一番最後のブルートレインの名前は『北斗星』だって。」
「つまり北斗星が答えね。」
「青いインクを使っているのも、青い列車って意味だと思うし間違いないと思う。」
「北斗星について他に何かある?」
「名前の由来は、北斗七星と北極星。食堂車もついていたんだって、なんかあこがれるよね、寝台列車の旅。」
「いいよね、もう走っていないのかあ、残念。」
「それで、北斗星をどうしたらいいのかな。」
「そりゃあもちろん、犯人のしっぽを捕まえるんでしょう。」
「犯人のしっぽ?」
「そう、犯人にはしっぽがあるの。」
あきちゃんの一瞬のはてな顔に、ふふんと気を良くして説明を続ける。
「答えの北斗星は北斗七星のことを指していると思うのだけれど、北斗七星からは何が連想できる?」
「ひしゃく、一年中いつでも見える、88星座だと…、ああ、わかった、あいつか。」
犯人の方へ視線を送る。
「あー確かに、しっぽがあるね。」
次回は、『くま 第3話』です。
明日、更新です。




