不在証明 解答編
この話は、『不在証明 問題編』の続きとなっています。
先に、『不在証明 問題編』をお読みください。
なお、一人称の主人公が、お父さん → 長女に、変わっています。
「ねぇ、お母さん、変だよね?」
二人だけになった台所で聞いてみる。
「お父さんは、モモにフラれてるよね?」
そうだね、とクスクス笑ってる。
「だとしたら、モモにエサを食べてもらえないお父さんには、アジの開きを消すことなんて出来ないってことになる。」
うなずいて先を促す母は、面白そうにしてる。
「モモが、エサを食べないのは、満腹だったから。それって、お父さんが帰ってきたときには、すでにアジの開きを他の誰かからもらって食べちゃった後だったってこと。」
「言い換えれば、モモがアジの開きを食べた時刻、つまり犯行時刻には、お父さんはまだ家にいない。アリバイが成立し、真犯人は別にいる。じゃあ――」
「真犯人は誰?ってことになるよね。・・・それで、居間で一緒にテレビを見ていたという確かなアリバイがある弟たち二人を除くと――」
「あと残っているのは、誰と誰?」
モモかな?、と、母は、いたずらっぽくとぼけてる。
「モモは、常に誰かの傍にいたよね。」
「居間に入っていくところを私に目撃されて、居間にいる間は弟たちと一緒、廊下ではお父さんにねらわれてた、だから・・・」
だから?、とたずねてくる。
「だからね、お母さんには、誰にも気づかれずに、モモにアジの開きをあげるチャンスは一度もなかった。」
それに。
「それに、犯行時刻はもっとしぼられるよね。」
「まず犯行時刻は、お父さんが帰ってくるよりも前。」
「お父さんが帰ってきたとき、モモは居間にいた。」
「でも居間には弟たちもいたから犯行は無理。犯行時刻は、さらにモモが居間に行く前に限定される。」
「つまり、私がアジの開きを冷蔵庫で見つけてから、モモが居間に行くまでの間しかありえない。」
そう。
「その間に犯行が可能なのは一人しかいないものね。」
犯人は、私でしかありえない。
「お母さん、とっくに誰の仕業かなんてわかってて、無実のお父さんをいじめて遊んでたでしょ?」
ああっ、お母さん、わるいかおをしてるよ・・・。
「もしかして、お父さんのポケットの中身って。」
あっ、やっぱり煮干か。
そりゃあ、お母さんにはかなわないよね。
あーやっぱり、ちょっとお父さんがかわいそうかも。
にゃんこシリーズ、その2