不在証明 問題編
この小説は、ミステリーです。
最後に、読者への挑戦状があります。
それは、作中にて、真相を解き明かすためのヒントが、全て出そろったことを意味します。
どうか推理に挑戦してみてください。
「私がこの場を離れている1時間の間に犯行は行われた。つまり・・・」
「犯人は、この中にいる!!」
とまぁ、うちの奥さんは、高らかに宣言されているけれど。
「消えたアジの開きの行方をつきとめたところで、なんになるだろう。」
かたや容疑者にされても素知らぬ顔。
「よしよし、美味しかったかい?」
猫なで声をだして手を伸ばしたが、つれなくされてしまった。まったく、貢ぎ物を持っていった時でさえ、お腹がいいと寄ってもこないのだから。
「待って、モモは犯人じゃないよ。」
そんなにくいあんちくしょうをかばいだてしたのは長女だった。
「私が飲み物をとりに降りてきたときに、アジの開きがまだそこに一緒にあったのを見たから、犯行はその後になるけど、牛乳を温めて二階に戻るときには、モモが居間に入って行くのを見かけたよ。」
その証言は、すぐに長男と次男によって裏付けられる。
「うん、二人でテレビ見てたけど、モモもずっと一緒にいたよね?」
「いたよ。でもお父さんが帰ってきてモモにちょっかい出すから、廊下へ逃げて行っちゃったんだよ。」
「ああ、そういえば、廊下からいつもみたいにモモをてなづけようとしてるお父さんの声がしてたんだけど・・・」
奥様、そんな楽しそうな目でこっちを見ないでください。
「また、フラれてたみたいね。」
「嫌っ!お母さん、これ以上お父さんをいじめないで。モモはあんなに可愛いんだもん、気持ちはわかるよ。」
娘よ・・・、それ、かばってないよね?
その後をついで、あきれ顔の長男が指摘する。
「そもそも牛乳と一緒だったんでしょ?、それじゃモモはあり得ないよ、冷蔵庫を開けられるはずがないんだから。」
「よしっ、今日はお父さんは、お魚ぬきね。」
「えっ!、お母さん、それはちょっとお父さんがかわいそうかも。」
うちの奥さんは、私のポケットにジーッと目配せをしてから、娘に視線を戻してにこやかにのたまった。
「いいの、いいの、お父さんには煮干しでもかじらせときましょ。」
やれやれ、我が家の名探偵さんは、ポケットの中身まで全部お見通しですか。
まぁいいか、かわいそうと言ってくれたしね。
ここで読者への挑戦状です。
謎を解くために必要な情報は、全て与えれました。
登場人物の中に嘘をついている者はいません。
お父さんは、本当に犯人なのか?
どうか与えられた情報から推理して、真相を解き明かしてください。
次のページから解答編です。
推理は完了しましたか?
それでは、ページをめくってください。