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たいむらじお
天才を子供に持つ親の気持ちがわかりますか?
「”タイムラジオ”ですか?」
若い研究助手が、私の手元をのぞき込み、たずねてくる。
「はい、娘の発明で、過去の放送電波を受信します。」
「なんか凄いんですね。」
「古いラジオは、つまみを回すと周波数表の上を線が移動していくでしょう?」
「はい。」
「それが年表を想起させ、時間を遡るアイディアになった様です。」
「あーなんとなくわかります。」
「フフ、ただね、1メモリが億年単位なのです。」
「なんだ、聞こえたら、まさに恐竜の時代まで、人類の歴史を塗り替えてしまう発明という訳ですね。」
この時、のどかな彼に真実を明かすべきか逡巡した、後。
「聞いてみますか?」
「聞けるんですか?」
「娘が聞こえると言い張るので試したのです。」
イヤホンを外し、ボリュームを上げ、三角の再生マークを押す。
”が…がが…”
やがてスピーカーから漏れてきたのは、幼い子供のかわいい声。
”がおー”
「うちの子、天才です。」