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むしろ、犯人はコイツだ
シャッ。
一瞬のカーテンレールの音。
開いた隙間からガラスに映り込むのは、若い女性がすがるように布地を握りしめたまま倒れ込む姿。
ブチブチッと引きはがされたカーテンを、彼女はクルクルと自身に巻き付けながら引き寄せる。
「むにゃむにゃ。」
コラーッ、この酔っ払いが!
女三人集まって飲みの果ての惨状。
足先だけをのぞかせて、すっぽりとくるまって動かない彼女を、もう一人の友人が睥睨すると、すっかりカーテンの無くなった、裏庭へと続くサッシを開けてのたまう。
「これはもう埋めるしかないな。」
「えっ?」
形ばかりの生垣の向こうに、驚いた様子の男性がいた。
「しまった、目撃者をだしてしまった。」
呟く友人、叫ぶ私。
「うわぁー!」
消そう。
素早く枕で友人の口をふさぎ、部屋へ押し戻して、サッシを閉め、明かりを消した。
ベッドに飛び込み布団をかぶる。
もう知らない!、全部忘れる!
血の付いたカーテン、もしくは、絨毯にくるんで遺体を埋めるというのが、ミステリーの定番のひとつにありまして。