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お題『新生活』
「デートしよう!」
「お金がありません!」
即答した僕。
「ぶー。」
「まあまあ、一緒の買い物を楽しもうよ。」
「…スーパーの食品売り場じゃない。」
「今月は引っ越したばかりで物入りでね、自炊を迫られるくらいに。それに、ここも楽しいよ、例えば・・・」
「僕バナナ、シュガースポットが自慢、只今大安売り中、うれすぎちゃって困っちゃう。」
「ハハ、何よそれ。」
好感触、さらに棚を物色。
「笑顔が一番、涙はむいてないからね。」
「じゃ、屋根の上に光るタマネギを見に行っちゃう?、貯金箱壊して武道館のコンサートチケットをプレゼントしてくれてもいいよ。」
「それフラれるやつ!」
「もう仕方ないなー。」
彼女は、野菜の袋を手すさびながら。
「私はね、頑張る君の味方だから、たとえお金が無くて、遊びに連れて行ってくれないとしても。」
そっと微笑んで。
「今は、日の目を見なくてもいいの、きっと芽が出ると信じてる。」
「そう言いながら、もやし生活を勧めないでくれますか。」