わんにゃかぱっぱーゆんぱっぱー、めいがで、あ・そ・ぼ!
「美術館なんて行っても、場違いな気がする。」
「そんなことないよ、ほら見て、これとか知ってるし、落葉拾い。」
「落穂だよ、穂。」
狙ったように「ば」違いだし・・・。
なんだか一緒に行きたがっているのだが、こうしてネット検索で十分っポイな。
どこかしらから見つけてきた、美術館主催のデザインコンテストは、オリジナルのマスコットキャラクターを募集していた。名画をもじってマスコットにするつもりらしく、”モデルにする絵”を探すためにと息巻いているのだ。
「美術館といえば・・・」
彼女が再び口を開く。
「一度、あれを言ってみたいな。」
「あれって?」
「ここからここまで全部下さい。」
「台無し感半端ないな。」
わからなくもないけど、と思っていたら。
「いくらくらいだろうね、ピカソとか。」
「何千万とかじゃきかないんだろうなあ、きっと億だよ、億。」
「逆さまでも通りそうな絵なのに・・・」
「何億な。」
「むぅー、いやむしろ、私もいける!」
「あーまぁ、とりあえずマスコットのデザイン頑張れ。」
「うん、次は、”私の時代”が来るよ。」
「ピカソだけにか。」
ピカソは、作風の違いによって、青の時代など、○○の時代と呼ばれているのを、もじったらしい。
けれど、検索した名画を、にまにまと嬉しそうにしながら、こちらに見せてくる様子は、マスコットのモデルを探している様には見えない。
「見て、ヴィーナスの誕生。」
「あ、うん。」
「見て、民衆を導く自由の女神。」
「だからなんだよ。」
「いやー、変な空気をもたらそうと。」
「そういうのやめろ。」
ほんとやめれ。
「ねえ見て、これ駐車場の航空写真なんだけど。」
「うわっモナリザだ!」
すごいなー、と喜んたのが失敗だったか、いそいそと次を検索して、目をキラキラさせてのたまった。
「この中に裏切り者がいる!」
「ここには二人きり、つまりお前か。」
「いや、えっ待って、これ最後の晩餐、だからね、ほら。」
「せいぜい味わっておくんだな。」
「いやあああ。」
まあまあ、楽しい。
「ねー帰りに公園でぶらんこしよー。」
フラゴナールのぶらんこを見せて、せがんできた。
「そんな魂胆の見え透いた誘いには乗りません。」
実は、フラゴナールのぶらんこは、ひるがえるスカートの中を覗こうとしてる人がいるという、おちゃめさんな絵だったりする。
「私もスカートだよ。」
「そのアピールいらないから。」
裾をつまんでカーテシーとか、そんなのどこで覚えた。
「ああーっ!」
「どうした、叫びだして、ムンクか?」
「違うよ、ピカソだよ、さっき逆さまでも通りそうって言った後の返しで、『何億な』っていってたの、あれはもしかして?」
「ああ、それ今になって、意味がわかったのか。」
ピカソ画『泣く女』ね。
ちなみに後日譚。
「オリジナルのマスコットキャラを考えたよ。」
「どれ見せてごらん。」
「ジャーン!その名も”踊るひまわりさん”、特技は交通整理のナイスガイ。会議室でも事件を起こすよ。」
「いや、このサングラスの奴、思い切り見覚えあるから。」
リクエストされれば、下調べも何のその、なんだって書くのです。
フラワーロック、ご存知ですか?