井原さんは、今日も元気に、こじらせている
男の子どうしの妄想が好きな女の子の話です(普通の人も安心して読めるので大丈夫です)。
「たまには、ファミレスとかに、寄ってみない?」
こくり。
部活が終わり、二人の少年に誘われ、井原さんは小さく頷いた。
席に案内されるやいなや、三人の先頭を切って歩いていた少年がさっそくという感じで席に陣取ると、すぐ後ろにいたもう一人の少年が声をかける。
「もう少し、そっちに詰めてくれないか。」
「なんで、となりに座ろうとしてるんだよ。」
少し面食らった様子で答える少年。
「そりゃそうなるだろう。」
少年たちが振り向けば、井原さんと、ちらり目が合う。
「しょうがないなあ、ほら。」
まさに今、テーブルを挟んだだけの場所に、男の子が二人、横に並んで座っている。この状況で、井原さんにほおが緩むのを止める術のあろうはずもない。
「いやに、締まりのない顔をしているな。」
それは、淑女に向かって何たる暴言!
少年の失礼千万な物言いへの憤りを、しかし、ぐっと飲み込む。井原さんは思った。ここは落ち着いて、きちんと言うべきことを言っておくべきだろう。
「ごちそうさまでした。」
「注文もまだだよ!」
井原さんは、今日もこじらせている。
「今度、一緒に映画にいかない?」
井原さんは、もう一人の少年の姿を探す。
「これペアの招待券なんだ。」
「ならば、ぜひ彼とお二人で!」
勢い込んで言った。間髪を入れなかったという。
井原さんは、今日もこじらせている。
「この席をどうぞ。」
七人がけの席に、三人は並んで座っていたが、すかさず老人に席を譲った少年に、二人の視線が集まる。
「なんだよ。」
照れた様子に、笑顔を向けて、もう一人の少年が言った。
「かっこいいじゃん。」
「うるさいよ。」
ぐほお。
少年が二人イチャイチャしている、井原さんは思わず立ち上がると、席を譲った少年に言った。
「この席をどうぞ。」
「なんでだよ!」
「また、いいところを見れるかもしれないから。」
井原さんは、今日もこじらせている。
リクエストされれば、なんだって書くのです、ふっふっふ。