名探偵・たかあき -2-
男の話は要約すると、こういうことだった。
男は、とある暴力団で働く下っ端の組員らしい。
そして、探してくれと私に依頼された女は組長の愛人とのことだ。
組長はある日、ベッドの上でぽろっと【ある秘密】をその女に漏らしてしまった。
「はて、その秘密とは?」
「言える訳ねぇだろ。そんなもん」
男は追加で頼んだイチゴパフェをパクパクと食べていた。
どうやら甘党のようだ。
女に秘密をばらされては不味いと頭を抱えた組長はその女に口止め料を渡した。
しかし、それに味を占めた女は、組長に対して定期的に金銭を要求するようになった。
「肝の据わった女だ。俺にはそんなおっかねえことはできねえな」
「確かに」
私は男が渡してきた写真を見た。
「この人相で生まれてきたなら、私は些か神を憎むでしょうね」
組長とされる男は、"スキンヘッドのブルドッグ"という感じだ。
ペケに写真を見せると、"うぅ"と低い声で唸った。
女の方は非常に美人で自信に満ち足りた表情をしていた。
まだ22歳とのことだったか、年齢よりは5歳ほど上に見える。
ペケに女の写真を見せると、写真をペロリと一回舐めた。
ペケは若くて綺麗な女の人が好きだった。
「まあ、そんなことを繰り返してたら、うちの組長も黙っていられなくなったってわけよ」
男は通りがかったウエイトレスにチョコレートパフェを追加で頼んだ。
どうやら、相当の甘党らしい。
「女はそんな気配を感じたのか、3週間前に突如消えちまった」
「組一丸となって探し回ったんだがな。どこにいったのかさっぱり分からねえ」
「そこで、あんたにも女を探すのを手伝って欲しいって訳だ」
「なるほど。非常に明快なお話でしたね」
私はコーヒーをずずずと啜った。
「いいでしょう。お受けいたしましょう。」
私はコーヒーカップを机にトンと置いた。
「おっ。そう来なくっちゃな」
そう言って、男はにやりと笑う。
「じゃあ早速報酬の話だがな。手付金は10万持ってきた。足りるかい?」
「ええ、十分です」
私は10万という大金に大変驚いていることを悟られないように振舞った。
いつもは大抵3千円くらいしか貰っていない。
ペケの尻尾が1秒に3往復くらいの速さで揺れている。
ペケも嬉しいようだ。
「後は有力な情報をくれたらその都度払うよ。もし女を俺たちの前に連れてきたら......」
「連れてきたら......」
私はゴクリと唾を呑んだ。
ペケの尻尾が垂直に立っている。珍しい。
「300万払うよ」
「さ、300万」
私は眩暈がした。
ペケは私の足に噛みついて唸っている。どうやら興奮しているらしい。
だがそうなると非常に残念なことになったと思わざるを得ない。
これは男に尋ねておいた方がいいだろう。
「それは【死体】でも構わないのですか?」
「あん?死体だと」
男が変なものを見るような目で、私を見た。
「なんでそんなこと聞くんだ?」
「だってその女の人……」
私は少しバツの悪さを感じた。
「もう、死んでますよ」
名探偵・たかあき2 -終-