表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

ささくれ

作者: はちまゆ

 





 ささくれだった指先。禿げかけのネイル。いつしか転んでできた痣。不健康に浮き出た鎖骨。靴擦れした痕。最近出来た小さなニキビを潰す。

 鏡を見て溜息をついた。


 画面の割れた携帯。裾が少し汚れたブラウス。最近痛む親知らず。唇を強く噛み締める。

 鏡には歪んだ顔の人。


 不安で眠れない夜。

 知らない間に流れた涙。

 鏡には悲しくて苦しそうな私。


 いつからか我慢することが当たり前になった。本音を隠して、本音が分からなくなった。

「あなたはだあれ?」

 問いかけたところで、眉間に皺を寄せた醜い私が笑顔を貼り付けているだけで、答えは見当たらない。


 ささくれを引っ張ると深くまで肉が(えぐ)れ、真っ赤な血がじわり、と、溢れてきた。

 血を舐めとり、抉れた肉を噛みちぎる。

「私は私、何者でもない」

 自嘲気味に笑う私が見えた。








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ