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第十三話 大群相手に無双して終わると思った? 残念、ゴブリオはゴブリオだったゴブゥ!


 シニョンちゃんの魔法〈聖域(サンクチュアリ)〉の範囲外に出た俺は、群がるゴブリンを倒していく。

 ほらほら、まきびし踏んで痛がってる場合じゃないゴブよ? 動きを止めたら殺されちゃうゴブ! 俺になあ!


 5000の大群で行進していたゴブリンとオークたち。

 いまでは戦列を乱して、川の近くにいたヤツらは俺たちに向かってきてる。

 ゴブリンの間から【覗き見】する限り、川から遠い方はそのまま揃って港町に進んでる。

 んんー、こっちに来てるのは三分の一もいないゴブな? 1000ぐらい? それでも1000って多すぎゴブゥ!


 状況を確かめている間も、俺は動きを止めない。

 ゴブリンの攻撃は【回避】して、【短剣術】で斬りつける。

 リーダーっぽいゴブリンには【投擲術】で小石を、オークには投げナイフをお見舞いする。

 右手の短剣で攻撃しつつ、左手は腰につけた布袋を漁る。

 小石が入っているはずの布袋は空だった。

 おっと、持ってきた小石がなくなっちゃったゴブな! ピーンチ!


 布袋を漁って慌てる俺に、ゴブリンどもも気付いたんだろう。

 ちょっと後ろにいたゴブリンが「ゲギャーッ!」と鳴いたのを合図に、一斉に襲いかかってくる。

 ピンチかと思った? 残念、フリでした! 【ゴブリン語】にもなってない合図を出したおまえがリーダーゴブな!

 はじめまして、死ね!


 小石が入ってた布袋のすぐ横。

 ベルトから武器を抜いてリーダーっぽいゴブリンに【投擲術】で投げつける。

 額に命中して突き刺さる。

 リーダーっぽいゴブリンは、後ろ向きに倒れていった。

 準備ぐらいしてくるゴブ! さすが油断しない男ゴブリオ、抜け目ないゴブ!


 俺が投げた武器。

 片方を尖らせた棒状の金属で、投げナイフより小さな投擲武器。

 棒手裏剣。

 オークみたいにデカいヤツじゃなければダメージ充分ゴブな! まきびしと棒手裏剣ってコレほんとニンジャみたいになってきたゴブ! ゴブリンじゃなくてゴブ(にん)ってね! ハハッ!


 一斉に襲ってきたところで、しょせん雑魚ゴブリンだ。

 俺も雑魚ゴブリンだけど、【回避LV2】と【逃げ足LV2】で見てから回避ヨユーゴブ!

 かわしてするする抜け出して途中で短剣で斬りつけて、ライフポイントを稼ぐ……いてッ!


 調子よく戦ってたら、太ももに痛みが走った。

 つったかな、と思って視線を落とす俺。

 目が合った。

 俺の太ももに噛み付いたオオカミと。

 ああ、そういえば先発隊だか偵察隊の集団に何匹かいたゴブなあ……行軍に見当たらなかったから忘れてたゴブ!


 右手の短剣をオオカミの頭に突き刺して殺す。

 もふもふなオオカミだけど()る気満々すぎてかわいくないゴブ! 心なんて痛まないゴブよ? こっちを殺しにきた畜生を殺してもゴブリオ何も思わないゴブ! ほら俺は鬼畜生だし! ゲギャギャッ!


 太ももに喰らいついたオオカミの牙を外すのにちょっと手間取った。

 それにゴブリオ最大の武器、【回避】と【逃げ足】を活かせなくなった。

 これヤバいゴブな! 回復役のシニョンちゃんから離れてるし!


 よたよたと歩きながら、左手にも短剣を持って襲ってくるゴブリンに対処する。

 手数を優先させた短剣二刀流。

 でも移動しづらくて、群がるゴブリンをさばけなくなってきた。

 くっ、働け【体力回復】! ボスオーガはあっという間に回復してたゴブ! シニョンちゃんは『オーガは【体力回復】スキル持ちなんです』って言ってて同じスキルなのになんでこんなに差があるゴブか!?


 短剣で棍棒をそらす。短剣で突く。

 回避して斬りつける。投げる。

 避けきれず腕で受ける。突く。

 足に取り付かれる。短剣の柄頭で頭を砕く。

 一手遅れて肩に棍棒をくらう。短剣を振る。

 棍棒が当たり、いた、いたいゴブ!

 めちゃくちゃに短剣を振りまわす。足元にオオカミが駆け込んでくる。

 オオカミをかわしたところで、大量のゴブリンが飛びかかってくる。

 逃げ切れない。


『ゴブリオ! オデ、ゴブリオ守ル!』


 オクデラの声が聞こえる。

 ゴブリンの隙間から、ハルバードをぶんぶん振りまわして近づいてくるオクデラが見えた。


『待て、オクデラ! ゴブリオの言葉を忘れたか!』


『ゴブリオさん……私、信じてますから! 神の奇跡を!』


 オクデラを止めるアニキと、シニョンちゃんの声が聞こえてくる。

 ガツ、ゴツッと体に響く棍棒。


 そのたびに痛むけどもう慣れたもんゴブ! でも一思いに殺る優しさはない……ゴブ……か……。

 最後に、オークの足の裏が見えて。



 俺は死んだ。

 大群相手のわりには思ったより遅かったゴブ!



  □ □ ■ ■ □ ■ ■ □ □



 目を開ける。

 緑色の光が目に入る。

 俺はまた、いつもの謎空間にいた。


『よし、また復活できる! いやあ、ほんと毎回不安になる。あと痛いのはやっぱりやめてほしい』


 ブツブツ言いながら円形のステージの上にあがって、半透明のスクリーンにタッチする。


『種族を選んでください』


 無機質な女性の声もいつも通りだ。

 二つ並んだスクリーンの左側に、種族名がずらっと並ぶのもいつも通り。

 まずライフポイントを見てみる。

 199。

 ひゃく、きゅうじゅうきゅう。

 あああ、惜しい! 200まであと1LP(ライフポイント)だったゴブ! あと一匹ゴブリンを殺してれば!


 キリが悪いけど、新記録なことに間違いはない。

 やっぱりハイリスクハイリターンゴブな! まだまだライフポイント、じゃなかったゴブリンはいるし、復活すれば200なんてすぐゴブ!


 それに、さっきまで大量のゴブリンを殺したわけで。


『さーて、選べる種族は増えてるかなー』


 俺が倒したことのないモンスターは、ライフポイントが足りてても選べない。

 もちろんライフポイントが足りなきゃそれはそれで選べないけど。

 それとゴブリンやゴブリンの上位種は、ほかの種族を選ぶのに比べて必要LPが少ない。

 だから俺は積極的にゴブリンを殺してきたし、今回だってゴブリンを狙いまくった。

 アイツら「男は殺せ! 女は犯せ!」だしね! ニンゲンの敵で鬼畜だから殺しても罪悪感わかないゴブ! さすがゴブリンな俺、同族殺しの鬼畜生!


 左側のスクリーンに目を向ける。

 今回、ゴブリン以外の種族を選ぶつもりはない。

 なにしろいま戦闘中だからね! いきなりスライムとか剣シカになっちゃったら動きに戸惑ってるうちに殺されそうだし! ゴブリオ油断しない男ゴブよ? オオカミがいるって忘れてて殺されたけど! ハハッ!


 ゴブリンベイブ1、ゴブリン1、ゴブリンリーダー10、ゴブリンシャーマン20、ゴブリンヒーラー20、ゴブリンウォーリアー20、ゴブリンレンジャー20、ゴブリンジェネラル200……。

 ゴブリンだらけゴブなあ! 選べないけどシャーマンとヒーラーって、アイツらの中に魔法使ってくるヤツがいる可能性もあるゴブ? 気をつけようっと!


 …………待って。

 増えてる、ゴブな?

 ウォーリアーとレンジャーって何ゴブ?

 いや何かはわかるけどね! なんで増えてるかってことゴブ! しかも白文字で選択可能だし!

 アイツらの中に戦士と斥候がいた? そんで殺した? 待て待て、レンジャーって戦隊モノの可能性もある……わけないゴブゥ! そんなレンジャーならいたらすぐ気付くから!


 それにしても、なんでいま急に増えたのか。キュウにレンジャーが増えたのかってね! ハハッ!

 見覚えもないし殺したこともないと思うシャーマンとヒーラーは、選択できないけどリストにはあったわけで。

 いま急に選択肢が増える理由がわからないゴブ!


 もしかして新種が生まれた? ウォーリアーとレンジャーが白文字になってるってことは殺したってことだし、今回の大氾濫(スタンピード)で。

 アニキも新種になったわけで、ありえるゴブなあ。

 まあいっか、わからないことを考えてもしょうがないゴブ! 切り替え切り替え!


 大群相手にライフポイントを稼いだら、またゴブリンリーダーを選ぼうと思ってた。

 ボスオーガには勝てなかったけど、強くなってたと思うし。

 でも。


『俺の戦闘スタイルには合ってるしなあ……それに、殺した中に見た目がおかしいヤツはいなかったし! きっとちょっと大きくなるぐらいでイケるイケる!』


 ゴブリンリーダーを選ぶのは止めた。

 左のスクリーンの種族名をタップする。

 右側のスクリーンに、選んだ種族の見た目が表示された。


『いや単体で出ても大きさわからないし! この場合は意味ないゴブ!』


 突っ込んでも答えはない。

 左のスクリーンにYES・NOの選択肢が出てきた。

 一瞬迷う。

 でも俺は、YESをタップした。


 俺が選んだのはノーマルなゴブリン、雑魚ゴブリンじゃない。

 ゴブリンリーダーでもない。


 ゴブリンレンジャー。

 いまの俺のスキルと戦闘スタイルならウォーリアーよりこっちゴブな! 復活が楽しみゴブ!


『スキルを選択してください』


 あっはい。


 せっかく盛り上がってたのに、無機質な女性の声は冷たい。

 今度は左側のスクリーンにスキルと必要LPの一覧が並ぶ。

 右側のスクリーンに表示されるのは、選んだ種族の初期スキルっぽいものだ。

 あいかわらず一度取ったスキルは選び直さないといけないのか、LPが必要ないのはうれしいけど面倒だな、とか思って右のスクリーンを見ると。

 見慣れないスキルが表示されていた。


 【夜目】はいい、いつものスキルだ。

 オクデラもアニキも持ってるし、たぶんゴブリンとオークの初期スキル。


 でもほかにもスキルがあった。

 【聞き耳】と【追跡】。

 ヒャッハー、さすがゴブリンレンジャー! レンジャーってひょっとして斥候とか猟兵どころかエリート部隊の方のレンジャーゴブか? 戦隊モノのレンジャーじゃなさそうゴブ!


 それにしても【聞き耳】と【追跡】って! これゴブリオが持ってた【覗き見】と【逃げ足】とあわせたら完璧にストーカーゴブ! 待っててねシニョンちゃん!って違うし、俺ストーカーじゃないし! シニョンちゃんとは相思相愛っぽいからストーキングする必要もないゴブ! あれ、それもなんか違くない?


 一気にテンションが上がる。

 テンションは上がるけど、俺は冷静にいままで持ってたスキルを追加していく。

【覗き見】【逃げ足】【隠密】【短剣術】【投擲術】【統率】【回避】【体力回復】【ゴブリン語】【人族語】。あとこの前死んだ時に取った【打撃耐性】。


 これに【夜目】と【聞き耳】と【追跡】が加わるゴブな! おっと、この前取った二つのスキルも忘れないようにしないと! 合計16のスキルって、これでもう雑魚ゴブリンとか言わせないゴブ! 実際雑魚ゴブリンじゃなくてゴブリンレンジャーになったけどね!


 ……でも、俺は気付かないレベルでゴブリンレンジャーを殺したわけだし、実はあんまり強くない? ダメダメ、考えちゃダメゴブ!


 時間かけて復活にタイムラグできちゃったらアレだし、オクデラは心配してるだろうし。

 LPはまた稼げるし大群との戦闘は継続中なわけで、スキル取得は行き詰まったら考えればいいゴブ!


 さーて、復活復活!

 雑魚ゴブリンで雑魚ゴブリン相手に無双してたゴブリオが、エリートゴブリンのゴブリンレンジャーになって復活ゴブ!

 5000の大群だろうが強敵だろうが蹴散らしてやるゴブ!


 ……あ、なしなし、やっぱいまのなしで。

 【打撃耐性】があったのにさっき普通に痛かったし。


 強敵、ボスオーガには勝てる気がしないゴブ!

 あとゴブゴブいい過ぎてよくわからなくなってきたゴブ! まあいつものことゴブな! ゲギャギャッ!



次話、7/14(金)18時更新予定です!


■ ゴブリオ(ゴブリン → ゴブリンレンジャー)

 【ライフポイント】

  183 → 199 → 179


※スキル一覧はネタバレになるので省略。

 該当箇所だけ伏せ字入れて書いた方がわかりやすいか……

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