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ゴブリンサバイバー〜転生したけどゴブリンだったからちゃんと生き直して人間になりたい!〜  作者: 坂東太郎
『第四章 港町 デポール』

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第二話 港町が見えてもうすぐ避難民の護衛依頼も終わりそうゴブな!


『ゴブリオ、オデ、オーク殺ッタ!』


『お、おう、見てたゴブ。強くなったなオクデラ』


 純粋なのは変わってないかもしれないけど返り血浴びた姿で言われてもかわいくないぞオクデラ!

 漁村の村人が海路と陸路に分かれ、避難をはじめてから四日。

 俺たちは今日も、避難民から離れて周辺の警戒とモンスター退治に励んでいた。


『ゴブリオ、こちらも終わったぞ』


 モンスターの援軍が来ないかまわりを【覗き見】していた俺に、血まみれのアニキも声をかけてくる。

 アニキもオクデラも見た目を気にしようね! その姿をニンゲンに見られたらどん引きだから! ただのモンスターにしか見えないから! あ、俺たちモンスターでしたわ! ゲギャギャッ!


 5000の大群が近づいてきていてこっちに逃げてきたのか、モンスターや獣の数は多い。

 角がないタイプのウサギやシカ、火を吹かないクマ、群れたオオカミ。

 この辺の獣は何度も見つけて、食料の足しにしてる。

 いやオオカミは喰わないけどね! だいたい角がないとか火を吹かないとか当たり前だし!

 まあモンスターの方は角もあるし火を吹くんだけど! 異世界こわい!


 獣だけじゃなくて、偵察か先行部隊なのか、ゴブリンやオークもときどき見かける。

 見かけるっていうか、見つけ出して襲いかかって倒してるんだけど。


『オデ、オーク殺ッタ! 女将、プティ、危ナイ、減ルカ?』


『ああ、そうだなオクデラ。ちょっと危なくなくなったと思うゴブ』


『ヤッタ! オデ、ガンバル! オーク、滅ボス!』


 ……なんか純粋さが危ない方にいっちゃってるぞオクデラ! 称号が【オーク the ED】から【オーク the END】に変わってるからわかってるんだけどさあ!


 今回俺たちが遭遇したのは五匹のゴブリンと一匹のオークだ。

 とりあえず「群れ、入れてほしい。ボス、どこゴブ?」って話しかけてみたんだけど、今回の団体さんは問答無用で俺を攻撃してきた。

 アニキとオクデラがすぐに反撃し出したから、俺はまわりを警戒しつつシニョンちゃんを守ってたんだけど……。

 オクデラもアニキも強くなりすぎィ! オクデラがオークに一対一で勝つのはいいとして、え、アニキは昔ゴブリンにボコられてなかった? 俺の出番がなくてライフポイント稼げなかったゴブ!


『あの、ゴブリオさん、あれ』


『シニョン? どうした……ゴブ……?』


 ゴブリンとオークの討伐証明部位を切り取って歩き出した俺たち。

 丘を越えると、シニョンちゃんが俺の肩をポンと叩いた。

 【覗き見】するまでもない。


 丘からは、遠くに港町が見えた。


 漁村の住人の避難先、港町だ。


『……護衛の依頼はもうすぐ完了ゴブな!』


『ゴブリオさん……』


 俺とオクデラは入れないはずの、港町だ。

 シニョンちゃんは心配そうに俺を見つめてくるけど、最初からわかってたことだ。


『よし、んじゃみんなと合流するゴブ! もうすぐそこだって教えないと!』


 俺はシニョンちゃんと目を合わせずに、元来た方へ戻りはじめた。

 オクデラとアニキを連れて。

 シニョンちゃん、心配そうに胸の前で手を組んでむぎゅっておっぱいが潰れちゃってるから! 俺せっかくかっこつけたのに思わずシニョンちゃんの方をチラチラ見ちゃうゴブ!




 漁村から陸路で避難している人たちは、ほかの村の住人も合流して大規模になっていた。

 いつも俺たちの相手をしてくれる冒険者ギルドのコワモテおっさんがいたのは隊列の最後尾だ。

 自分も戦えるから、戦闘になったら護衛を指揮するニンゲンが必要だからって、おっさんは最後尾を引き受けたらしいけど。

 たぶん、俺たちに対応するためっていうのもあるんだろう。

 俺とオクデラは漁村では受け入れられてるけど、ほかの村の人にとってはただのゴブリンとオークだから。


『おうお前ら、あと少しだからって気を抜くんじゃねえぞ!』


 俺たちの報告を聞いて、もうすぐ到着だって喜ぶ冒険者を注意するコワモテのおっさん。

 頼れるおっさんっぷりを見せつけて、俺たちに向き直る。


『本当に行くのか?』


『最初からそのつもりゴブ』


『なあ、遠慮することはねえんだぞ? 漁村のヤツらはお前らのことを認めてるし、俺も娘も港町の出身だ。俺たちが言えばなんとか避難民の中に』


『港町で篭城するって聞いたゴブ。おっさん、5000のゴブリンとオークと戦いになって……街にいるゴブリンとオークが、どんな扱いされると思うゴブ?』


『それは……』


 ボスオーガが率いる5000の大群。

 オオカミ系もいるけど、ほとんどはゴブリンとオークらしい。

 ってそれは俺が敵ゴブリンから聞き出したんだけど! はぐれゴブのふりしたらあっさり教えてくれたゴブ! 聞き出したゴブリン? いまごろ土に還ってるゴブな! さすがゴブリン、同族喰いの鬼畜生! おっと俺は喰わないけどね! ゲギャギャッ!


 もうすぐ港町に到着する。

 それはつまり、冒険者として依頼を受けた陸路の護衛は完了するってことだ。


『俺、どう思われるかわかってるゴブ。ゴブリオ賢いから』


『ゴブリンなのに?』


『ゴブリンなのに!』


 いつものフレーズを言いながら、おっさんはちょっと寂しそうに笑ってた。

 きっと俺も似たような表情……おっと俺はただの邪悪な笑顔でした! 俺ゴブリンだから!


『リオちゃん、デラっち、行っちゃうの……?』


 俺とコワモテのおっさんの会話を聞きつけて、プティちゃんが寄ってきた。

 幼女の上目遣いとか反則ゴブ! ゴブリオ危うく『じゃあ止める』って言いそうになっちゃったゴブな!


 この地の領主は、5000のモンスターの大群を前に篭城策を選んだ。

 港町は、陸は石壁で囲まれてる。

 逆に海側には壁はないけど、ゴブリンとオークは泳げないらしいから問題はない。

 海側から物資を搬入することも可能だし、壁を活かして援軍を待てばいい。

 領主が保有する軍は1000ちょっと、冒険者と合わせても2000ぐらいだっていうし、篭城策は妥当な作戦だろう。


 でも俺は元人間だから、わかってる。

 まわりの村から避難民を引き入れたし、街にいるニンゲンは不安になるだろうって。

 そんな中に、普通はモンスターとして扱われて、しかも街を囲むヤツらと同種のゴブリンとオークがいたら。


 不安を煽るどころか下手したらリンチに合うゴブ! コワモテのおっさんとか漁村の村人を信用してないわけじゃないけど、ほかにもたくさんニンゲンはいるからね! ぜったい危ないでしょコレ!


『プティちゃん、若女将も。いままで、お世話になったゴブ』


『ううー』


『オデ、離レル。デモ、プティ、女将、守ル!』


『……オクデラさん?』


『デラっち? どういうこと?』


『お前ら、もしかして』


『あー、バレバレだったゴブな。俺たちは、もうちょっとヤツらを削っておくゴブ!』


 せっかく黙って行こうとしたのに! というか若女将、オクデラのいまの言葉だけでよく反応できたゴブな! 以心伝心ってヤツ? え、やっぱり若女将とオクデラ通じ合っちゃってる感じ?


『ははっ、そういうことか! おう、何か必要な物があるならなんでも言え。避難後はどうせヒマだからな、そのへんは俺に任せておけ』


『ありがたいゴブ。欲しい物と、何か情報が入ったら』


 チラッとシニョンちゃんを見る。

 小首を傾げるシニョンちゃんはかわいい、じゃなくて。

 シニョンちゃんはまだニンゲン恐怖症が治りきったわけじゃない。

 ひとりで街に行かせるのは、って悩んでたら。


『俺が伝えに行こう』


『あ、ああ、アニキがいたゴブな! うん、その時はアニキを行かせるゴブ!』


 そういえばアニキはリザードマン扱いで港町に入れるんでした! しかもスキル【水中行動】があるから、もし包囲されてても海から行けば余裕だったゴブ! アニキ優秀すぎィ!

 あれ、俺の価値は? 元ニンゲンで〈ストレンジャーズ〉のリーダーの俺の存在意義は?


『おう、しばらくしたら一度街に来い。小舟の一艘ぐらい用意しといてやるから、いざとなりゃそれで港町まで逃げられるだろ』


『おっさん、ありがとう! 優しいゴブな!』


『コワモテなのに?』


『コワモテなのに!って自覚してんのかよ!』


 ゲギャグギャ笑い合う俺たち。

 いやおっさんは普通に笑ってるだけだけど。


『おっさんが舟を用意してくれるらしいし、プティちゃんも若女将も俺たちの心配はいらないゴブ』


『ううー』


『ほらプティ、ワガママを言ってはダメよ。男が決めたんですもの、私たちは帰る場所を守るの』


『でも、おかーさん!』


『オデ、死ナナイ! オーク、殺ス!』


『デラっち! プティ待ってるからね!』


『ふふ。オクデラさん、敵を倒すより、生きて帰ってきてください。帰ってきたら……』


 …………。

 ……。

 え、帰ってきたらどうなるゴブ。


 気のせい、気のせいゴブな! いくら未亡人でやたら色っぽい若女将だからってオークのオクデラといい感じになるわけないゴブ! ないよね? 帰ってきてしばらくしたらオクデラのEDが治っちゃってるとかないよね? いやもうしそうなったらゴブリオ祝福するけど! 祝福するけど? オークとニンゲンのカップルってあり得るゴブか?


 ……難しいことを考えるのはやめやめ!

 とりあえず俺たちは5000の軍勢を削らないとだからね! ニンゲンを守るために!


 騙し討ちできるしゴブリンとオークは雑魚で、囲まれなければライフポイント稼ぎまくれるからじゃないゴブよ? 俺そんな自分のことしか考えてない自己中、おっと、ゴブ中じゃないゴブよ? プティちゃんとか若女将とか漁村の人たちを守るためゴブ!


 さーて雑魚ども、俺にライフポイントをよこすゴブゥ!




『ゴブリンサバイバー 1』、いよいよ公式発売日です!

秋葉原に見に行ったら更新ちょっと遅れました。

書き溜め? ありません!

次話は明日26(金)18時に更新します!

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