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第三章 エピローグ


『おう、〈ストレンジャーズ〉か。首尾はどうだ』


『ゴブリンとオークを狩ってきたゴブ!』


 そう言って、切り取ってきたゴブリンの耳とオークの耳を冒険者ギルドのおっさんに差し出す俺。

 いや俺の耳でもオクデラの耳でもないからね! 森にいたゴブリンとオークの小隊を全滅させてきただけゴブ!

 アニキはいるしオクデラは覚醒したし俺はスキルで強くなったし、騙し討ちしないで堂々とね!  まあ奇襲はしたけど! 卑怯? 何のことゴブか? こちとら鬼畜生ゴブ! ゲギャギャッ!


『リオちゃん、すごいすごい!』


『ふふ、本当ねプティ。みなさんありがとうございます』


 俺たちに頭を下げたのは斧槍亭の若女将とプティちゃんだ。


 俺たちはいま、漁村から港町へ向かう海ぞいの道を歩いてる。

 伝令に従って、ゴブリンとオークの大群から逃れて、港町に避難するために。


 村長と冒険者ギルドのおっさんの指揮のもと、貴重品や大きな荷物は船に積まれて、老人や子供は海路で出発した。

 若女将とプティちゃんは船に乗れたはずなのに歩くことにしたらしい。

 たぶん俺とオクデラのために。

 ゴブリンとオークな俺たちは、また村人から複雑な目で見られてたから。


 敵じゃないって信じてるけどコイツらゴブリンとオークだし、みたいな割り切れない気持ちがあるんだろう。

 そりゃそうゴブな! もし俺がニンゲンで村人ならぜったいそう思うゴブ! というか叩き殺してるかもしれないゴブ! みんないいヤツすぎ……あれ? 俺やっぱり心までゴブりはじめてるゴブか?


 ともあれ、俺たち〈ストレンジャーズ〉は陸路で避難する村人たちの護衛についた。

 護衛って言っても、俺たちは遊撃役だ。

 道から自由に離れて、草原や森にいるモンスターを狩るのが役割になってる。

 俺が言い出したことだけど、コワモテのおっさんもそれがいいだろうって同意してくれた。


 一角ウサギやグレイウルフはもちろん、ゴブリンやオークを狩ってくれば俺たちはニンゲンの仲間だって実感してくれるだろうからね! ゴブリオ元人間だからそのへん賢いゴブよ?


 実際、避難をはじめた初日よりまわりの目が柔らかくなってるのを感じる。


『デラっちもすごいね! がんばったね!』


 モンスターを狩ってくるからってのもあるけど、プティちゃんの存在もデカいのかもしれない。


 ゴブリンとオークにさらわれたけど、俺たちに助け出されたプティちゃん。

 俺はゴブリンでオクデラはオークなのに、二人はアイツらとは違うんだとばかりに話しかけてくれる。

 きっと、勇気を振り絞って。


 若女将とプティちゃんが陸路を選んだのは、たぶん俺たちのためだ。


『オデ、プティ、守ル! ミンナ、守ル!』


 称号のEDがENDになったオクデラは確かに強くなった。

 スキル【腕力強化】のせいか、武器がすぐ壊れちゃうのが悩みなぐらい。


『ふふ、ありがとうございますオクデラさん。みなさんが助けてくれたから、私とプティはこうしていられるんですよ。ちゃんと守られました』


 そう言って、そっとオクデラの腕に手をかけて微笑む若女将。

 横に立つプティちゃんもうれしそうだ。


 ……あれえ? これなんかいい雰囲気になってないゴブか? オクデラはオークなのに、ニンゲンで未亡人で色っぽい若女将といい雰囲気になってないゴブか? しかもプティちゃんも懐いてる感じゴブな?


 え、コレひょっとしてオクデラまだEDかどうか試されちゃう感じ? もしかしてDT捨てちゃう感じ?

 ダメダメ、ダメゴブ! 俺より先に、じゃなかったニンゲンとして、もし子供ができたらただのオークの子供になっちゃうゴブ!

 あれ? オクデラは最初からただのオークだしありっちゃありなの? ゴブリオよくわからなくなってきたゴブゥ!


『助けていただいたお礼に……オクデラさんに、渡したいものがあるんです』


 愛か!? 愛ゴブか!? それとも若女将自身ゴブか!?

 さすが色気たっぷりの未亡人、昼間から大胆すぎゴブ!


『これ……受け取っていただけませんか?』


『コレ? コレハ?』


『亡き主人の斧槍です。オクデラさんはモンスターを倒して、私たちを守ってくださるのですから……いまは宿もありません。眠らせておくよりは、使われた方が主人も本望かと』


 違ったみたいゴブ! 俺がゲスすぎてなんかやり取りがまぶしすぎる件!

 というかホントにいいゴブか!? それ形見だし宿屋〈斧槍亭〉の名前の由来の逸品って聞いたゴブ!


『ゴブリオ、オデ、ドウシタラ』


『若女将、ホントにいいゴブか? プティちゃんも』


『はい、ゴブリオさん。オクデラさんは普通の武器だと壊してしまうほど力が強いみたいですから。この斧槍、いいものだそうですよ』


『あのね、プティ、おかーさんとお話したの! デラっちならいいよって!』


『そうゴブか……じゃあオクデラが預かっておくゴブ。避難が終わって、漁村に戻ったら返すゴブ』


『まあ。ふふ、お待ちしてますね。では、オクデラさん』


 荷車の上、デカい木箱に入っている斧槍を示す若女将。

 オクデラはためらいがちに斧槍を手に取った。


 斧槍、あるいはハルバードと呼ばれる武器。

 長柄で、先には槍と斧とピックがついてるポールウエポン。


 重量級のそれを、オクデラは片手で持ち上げた。

 左手にタワーシールドを持ったまま、右手一本で斧槍を振り回す。


 ……ちょっとオクデラ腕力スゴすぎませんかねえ! スキル【腕力強化】のせいゴブか!? ひょっとして武器スキルの【槍術】と【斧術】も効いてるゴブか!?

 アニキとオクデラが強くなりすぎてゴブリオ雑魚疑惑! くっそ、ライフポイント稼いで俺も強くなってやるゴブ!


『ふむ、なかなか鋭い振りだ』


『すごいですオクデラさん!』


『オデ、プティ、ミンナ、守ル! オーク、滅ボス!』


 ああうん、がんばろうなオクデラ。

 敵は5000らしいけどちょっとずつ削っていこうなオクデラ。

 そんでアニキとシニョンちゃんは一気に強化されたオクデラにもうちょっと疑問持とうな! ゴブリオのツッコミが追いつかないゴブゥ!


 漁村を出て、俺たちは歩く。

 漁村はせっかく入れるようになった人里で、俺たち〈ストレンジャーズ〉の拠点だったのに。

 俺たちはこの先で合流するほかの村の住人に受け入れてもらえるのか。港町は。


 俺は正直、キツイと思ってる。

 漁村の住人が受け入れてくれても、俺たちはゴブリンとオークだから。

 アニキとシニョンちゃんはイケると思うけど、っていうかアニキはもう港町の通行許可証持ってるけどね! よくそれもらえたなアニキィ!


 港町に避難するまで、護衛としてみんなを守る。

 でも、その後は。


 5000のモンスターたちを前に、俺は、俺たちはどうするか。


 群れを率いるボスオーガには三人がかりでも相手にならなくて、俺は一矢も報いれずに死んだ。

 今回は、それに大量のモンスターもいるらしい。


 悩んでもまだ答えは出ない。

 いまはただ、港町まで護衛を務めるだけだ。

 護衛っていうか周辺の雑魚狩りだけどね! 雑魚ども、俺にライフポイントをよこすゴブ!


 めっちゃ強くなれば俺だってきっとあのボスオーガに勝て……るかなあ。

 ムリっぽいけど! でも強くなるにもニンゲンになるにもとにかくライフポイントがいるから!

 ほらほら雑魚ども、首おいてけェ! おっと、俺も雑魚ゴブだったゴブ! 俺の首は置いていかないゴブよ! ゲギャギャッ!



ちょっと短めですが、エピローグですのでご容赦ください……。

次話、5/19(金)18時更新で、次章『港町 デポール』に入ります!


※5/19追記:申し訳ありません、次話更新、5/23(火)に変更します

 二ヶ月連続刊行&二シリーズ同時刊行のムリがたたって体にガタがw



【三章終了時のステータス】

■ ゴブリオ(ゴブリン)

 【ライフポイント】

  47

 【スキル】

  夜目

  覗き見(ピーピング)LV2

  逃げ足LV2

  隠密

  短剣術

  投擲術

  統率

  回避LV2

  体力回復

  ゴブリン語LV2

  人族語LV2

 【称号】

  森の臆病者(チキン)


■ オクデラ(オーク)

 【スキル】

  夜目

  斧術LV1

  槍術LV1

  腕力強化

  体力回復

  鈍感

  ゴブリン語LV1

  人族語LV1

  オーク語LV1

 【称号】

  オーク the END


■ シニョン(普人族)

 【スキル】

  夜目

  魔力感知

  魔力操作

  光魔法LV2

  受難LV2

  人族語LV4

 【称号】

  運命神の愛し子


■ アニキ(新種族)

 【スキル】

  夜目

  棍術LV2

  鱗鎧化

  打撃耐性

  斬撃耐性

  水中行動

  ゴブリン語LV3

  鱗人族語LV1

  人族語LV2   ※UP!

 【称号】

  突然変異の創始者(ミュータント)


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