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第十六話 俺、強くなってまた復活! さあ逆襲して逃げ切る時間……ゴブ……?


 ゴブリンとオークの追撃を遅らせようとしんがりを務めた俺は、予想外の攻撃であっさり死んだ。

 いやぜんぜん油断なんかしてなかったゴブよ? おごれるゴブじゃなかったゴブよ?

 オークがゴブリンを投げてくるとか反則ゴブ! というか投げるならゴブリンじゃなくて持ってた棍棒を投げればよかったんじゃないの?

 オークもやっぱりバカゴブなあ! あ、それで死んだ俺の方がバカでしたわ! ゲギャギャッ!


 またあの空間に行った俺は、今回初めて種族を変更した。

 ゴブリンからゴブリンリーダーへ。

 ゴブリンなことに変わりはないから、種族変更って言うかは微妙だけど。


 いまこうやって考えられるってことは、また意識が戻ってきたんだろう。

 俺はゆっくり目を開ける。

 目に映るのは空と森で、視界の端っこに通り過ぎてくオークとゴブリンが見える。

 時間はそれほど経ってないみたいだ。


 よし、すぐ起き上がってコイツらを倒して、オクデラたちに追いつかないと……。

 と思うんだけど体が動かない。

 おっと、復活するのは光ってからでした! ひさしぶりすぎて忘れてたゴブ!

 ……なんか俺だんだんバカになってない? おバカなゴブリンになってない? でも大丈夫、今日から俺はゴブリンリーダーゴブ! 雑魚ゴブとは違うエリートゴブゴブ!


 そんなことを考えているうちに、俺の体が光る。


「ぐわ! これ何ゴブ!」


「裏切りゴブが光ったゴブ!」


 まわりのゴブリンが騒がしい。


 ……あれ?

 たしかゴブリンとオークは死体を食わないことが最大の侮辱で、だから裏切りゴブって思われた俺は食われなかったわけだ。

 これ普通ならどうなってたの?

 俺、危うく食われてる時に意識が戻るとこだった?

 んんー、裏切りゴブで良かった! そんなスプラッターとか求めてないしめっちゃ痛そうだし復活できるかわからないゴブゥ!


 死んだはずなのに立ち上がった俺に驚いたのか、ゴブリンたちはゲギャグギャゴブゴブ騒がしい。

 俺はスキルを意識して叫んでみる。


「うるさい! 黙るゴブ!」


 俺の言葉を無視してゲギャグギャゴブゴブ騒ぐゴブリンたち。

 俺ゴブリンリーダーになったはずなのに。

 ゴブリンリーダーの基本スキルっぽい【統率】も手に入れたはずなのに。

 ちょっ、むしろゴブリンたち襲ってくるんですけど! ぜんぜん【統率】できてねえし! これあれゴブな、自分の群れに有効とかそういうヤツゴブな! 【統率】は使えないくそスキルか!


 焦りながらゴブリンとオークの攻撃をかわす俺ことゴブリオ、ゴブリンリーダー。

 攻撃はすべて回避できた。

 そう、スキル【回避】取ったからね!

 役に立ってるっぽいゴブ! 10ライフポイントで取れるなんてちょっとお得な感じ! くっそ、さっき【回避】があれば死ななくてすんだかもしれないのに! めっちゃ痛かったゴブ!


 さっき殺された仕返しに短剣で斬りつけていく俺。

 でもなんかうまく攻撃できない。

 雑魚ゴブからゴブリンリーダーになって、体がちょっと大きくなってリーチが変わったっぽい。

 革鎧もちょっとキツくて動きづらい。

 これ一気にでかい種族になったらヤバそうゴブな! ちょっとしか変わらなくて良かったゴブ!


 雑魚ゴブリンを殺してくうちにだんだん慣れてきて、オークも斬り殺す。

 倍返しどころかあっさり殺しちゃったゴブ! まあしょうがないね、いま急いでるし!


「よし、この辺にいるヤツは全部殺したゴブな! 待ってろオクデラ、すぐ追いつくから! いやホントに立ち止まって待ってられたら困るけど!」


 自分で言ったのに自分につっこむ俺、孤独な男ゴブリオ。

 走り出す前に革鎧を固定するベルトを緩めていまの体に合わせる。

 いままで俺の身長は130センチぐらいだったけど、150ぐらいになったかな? くっ、目線がおっぱいちゃんのおっぱいの高さじゃなくなったっぽいゴブ! しかも谷間を覗き込むには身長が足りなそう! 中途半端すぎて残念……おっと、そんなこと考えてる場合じゃないゴブ!


 今日は風がないからか、俺が仕掛けた罠から出る煙はけっこう(とど)まってる。

 洞窟で使った時ほどじゃないけど視界は悪い。

 きっとこれが追っ手の数を減らしてくれるはずだ。

 そう信じて俺は走り出す。

 オクデラと、オクデラに背負われた若女将とプティちゃんと、シニョンちゃんを追いかけて。


 罠を仕掛けるのはオクデラたちの姿が見えてからって決めて、追いつくことを優先させる。

 投剣は使い切っちゃったし、ときどき手頃な石を拾って皮袋に入れてるけど。

 よし、これで雑魚ゴブもオークも、囲まれすぎなきゃ相手にならないゴブ! ただでさえ強いゴブリオがノーマルゴブリンからゴブリンリーダーになったからね! 【回避】のほかにもう一つスキルも取ったし、ゴブリオ無双伝説のはじまりゴブ!


 テンションのままにスピードを上げて走る俺。

 いままでなら息があがりそうな全力疾走だけど問題ない。

 俺はあの空間で、もう一つスキルを取ったから。

 さっそく出番だぞスキル【体力回復】!

 30LP(ライフポイント)もしたし、体力もHP的なアレも回復してくれるって信じてるゴブ!


 森を走る俺が【覗き見】した先に、オクデラたちの姿が見えた。

 でも、なぜかみんな立ち止まってる。

 しかもオクデラは女将とプティちゃんを下ろして、タワーシールドと長柄のメイスを手にして。


「追いついたゴブ! オクデラ、止まってどう……した……?」


 オクデラに声をかけた俺だけど、途中で気がついた。

 森が、静かなことに。

 オクデラたちも、動物も、木々のざわめきも、そんなに遠くないはずのゴブリンとオークの声も聞こえなくなってることに。


 まるで、危険な生き物が近くにいる、みたいに。


 俺はこんな状態を体験したことがある。

 果ての森の(ヌシ)、フィールドボスっぽい火を吹くってクマを見かけた時だ。

 オクデラたちにゆっくり近づく俺。


 地面に下ろされた幼女のプティちゃんは、泣きながら若女将の足にしがみついてる。

 若女将は見ただけでわかるほど震えてて、顔色も悪い。

 シニョンちゃんは若女将の前に立ってるけど、足も、杖を構える手も震えてる。


 俺はゆっくり進む。

 声をかけないんじゃない。

 かけられないんだ。

 この先にいる何かを、体が、ゴブリンの本能が、怖がってて。


 逃げろ。

 そっちに行くな。


 頭の中に響く声を黙殺して、俺はオクデラの横に並ぶ。


「オクデラ」


「ゴブリオ、オデ、オデ……」


 オクデラは体をぶるぶる震わせてる。

 それでも、武器と盾を構えてることを褒めるべきだろう。

 俺だって逃げ出したい気持ちでいっぱいになって、めっちゃ震えてるから。


 俺たちの前にいる何か。

 あのクマと同じように、一目見ただけでわかる。


 コイツはやべえ。

 存在感が違う。

 圧倒的な強者のオーラをまとって俺たちの前に立ちふさがってる。


 腰にまとった毛皮以外は全身むき出しだ。

 はちきれんばかりの筋肉がむき出しだ。

 緑色のゴブリンと違う赤い肌。

 額の角もゴブリンより太くて長くて固そうで立派だ。いや角の話ね?

 口からはわずかにキバだか犬歯だかが覗く。

 身長はオクデラと同じぐらいだから2メートル近いだろう。

 もっと大きく見えるけど、俺はわざわざオクデラをチラ見して確かめた。

 正確に知っておかないと、リーチを読み違えて即死だろうから。


 俺たちの目の前に現れたのは、オーガだった。


 いやオーガって種族かどうかは知らないけど。

 大鬼とか赤鬼とか人食い巨人とかオグルとか呼ばれてるかもしれないけど。


 コイツと戦う? え、マジで?

 ……でも道をふさいでるし、俺たちをスルーしてくれそうにない。

 大丈夫、大丈夫、俺死んでも復活するし! ほら俺さっきゴブリオ無双伝説のはじまりとか考えてたし! さっきまでの俺をぶん殴ってやりたいゴブゥ!


 そういえば、最初に殺した群れのリーダーが言ってた。

 取り巻きゴブリンが女を犯していいかリーダーに聞いたら、「王にお伺いを立ててからだ」って。

 マジか。

 え、ひょっとしてコイツらがゴブリンとオークの群れの王? このオーガはボスオーガってこと? ちょっと強さのハードル上がりすぎじゃない?


 いつまでも考えてたってしょうがない。

 俺は、口を開く。


「そこ、通りたいゴブ」


 あんまりよくわかってない感じで言ってみた。

 俺たちはさすらいのゴブリンとオークとニンゲンで、たまたまここを通りかかっただけですよー、みたいな感じで。


「我を前に言葉を吐くか。興味深いゴブリンだ」


 口の端っこの方をちょっと持ち上げるオーガ。

 ぜんぜんおもしろそうじゃないゴブなあ! あとなんか堂々としすぎなんですけど! ゴブリンとオークのボスが威風堂々ってどういうことですかねえ!


 とりあえず、このボスオーガがどく気配はない。

 つまり通してくれないらしい。

 というか俺の質問に答えてない。

 強者ズルいゴブ! 質問にはちゃんと答えなさいって学校で教わらなかったゴブか? あ、オーガの学校なんてあるわけないか! 威風堂々でもしょせん鬼畜生だし! ハハッ!


「ゴブリオ……」


『オクデラ、戦えるか? シニョンちゃんは女将とプティちゃんを守ってほしいゴブ』


『わかり、ました。でもゴブリオさんがケガしたら、私が治します!』


 ボスオーガに聞かれないように【人族語】に切り替えて話す。

 あ、シニョンちゃん、気持ちはありがたいけどコイツの攻撃受けたら死んでそうな気がするゴブ! ワンパンってヤツゴブな! 俺殺られる方だけど!


『オデ、オデ、ヤル。ゴブリオ、シニョン、プティ、守ル!』


 シニョンちゃんに続いてオクデラも決意を固めたみたいだ。

 オクデラめっちゃ震えてるけど。

 あと女将のこと忘れてるぞオクデラァ!


『俺が相手する。オクデラはスキを見て攻撃するゴブ!』


 本当はオクデラが盾役で、俺は遊撃でいきたい。

 でも震えが止まらないオクデラには酷だし、それに。

 俺はワンパンで死んでも復活できるけど、オクデラは死んだら終わりだ。


 くそ、こうなったらゾンビアタックでもやってやるゴブか! でも死ぬのめっちゃ痛いからゴブリオ死なないようにがんばるゴブ!

 取っててよかったスキル【回避】!

 HP的な回復もあって長期戦できるようになったって信じてるよ【体力回復】!

 ああくっそ怖いけど逃げるために背中見せるのも怖すぎるゴブ!


「ほう、我に立ち向かうか」


 また口の端を持ち上げるボスオーガ。


 コイツ余裕すぎゴブな! 卑怯な手でもなんでも使ってほえ面かかせてやるゴブ! おごれるゴブもひさしからず! おっと相手はゴブリンじゃなくてオーガでしたわ! むしろ強くなって無双するとかおごってたのは俺でしたわ!


 ……ところでシニョンちゃん、これ【受難LV2】関係ないゴブな? 準備なしでボスと遭遇戦とか難易度あがりすぎてツラいです神様ァ!



※4/21 以下ステータス修正

  ライフポイントは一度減ったものの、

  復活後に敵を倒してまた増えてるのを見逃しました!

  ご指摘ありがとうございました!


■ ゴブリオ(ゴブリンリーダー)

 【ライフポイント】

  48

 【スキル】

  夜目

  覗き見(ピーピング)LV2

  逃げ足LV2

  隠密

  短剣術

  投擲術

  統率   ※NEW!

  回避   ※NEW!

  体力回復 ※NEW!

  ゴブリン語LV2

  人族語LV2

 【称号】

  森の臆病者(チキン)

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