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ゴブリンサバイバー〜転生したけどゴブリンだったからちゃんと生き直して人間になりたい!〜  作者: 坂東太郎
『第一章 果ての森1』

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28/96

第一章 エピローグ


「おーい!」


 俺が声をかけると、すぐに縄梯子が下ろされた。


 あれから俺たちは、最初の拠点に戻って生活してる。

 バオバブっぽい木の上だ。

 ゴブリンたちはニンゲンに殲滅されたけど、ニンゲンたちはもう街に帰ってる。

 いまのところモンスターの縄張り争いがおきる様子もない。


「ゴブリオ、オデ、木ノ実、集メタ」


「おっ、やるなあオクデラ。俺は一角ウサギを狩ってきた! コイツら慣れると楽勝ゴブ」


 一回死んだ後、俺は自分のライフポイントが見えるようになった。

 溜める方法はあっさりわかった。

 体内に魔石がある生き物を殺すこと。

 おっぱいちゃん、おっと、シニョンちゃんが言うにはニンゲンの体の中にも魔石があるらしい。


 拠点を木の上に戻して、まわりの様子も変わらない。

 俺たちの生活も変わってない。

 あの洞窟を拠点にすることも考えたんだけど、入り口が一つで逃げ場がないから止めておいた。


 ニンゲンの死体?

 うん、死体漁りしたら丸裸になっちゃったゴブ! 森じゃ布も貴重品だから! 死体はモンスターが集まると大変だから川に流してやったゴブ! そうとう深く埋めないと掘り返されるからね!

 あ、田舎の若者だけは何も盗らずに埋めてあげました! 俺はやさしいゴブなあ! 俺ゴブリンだけど! 鬼畜生だけど! ゲギャギャッ!


 俺たちの生活は変わらないけど、武器は手に入ったし、皮鎧も服も便利な道具も手に入った。

 あと。


『お帰りなさいゴブリオさん。ご飯にしますか? 先に体を拭きますか? それとも……』


 あの時助けたニンゲン、シニョンちゃんが森で一緒に暮らすようになった。

 あの日以来ニンゲンが怖くて、俺とオクデラ以外のモンスターにもビビってる。

 トラウマになっててニンゲンの街に帰れないらしい。


 え、それともって何? 何が続くの!? ご飯かお風呂か、その後に続くって言ったら……ダメダメ、ダメゴブ! ゴブリオにはまだ早いゴブ! だいたいまだ夕方だし! ミッドナイトじゃないし! ジェントルゴブ!


『ゴブリオさんが狩ってきた一角ウサギを食べたいなら、料理しますけど』


 はいそもそも『それとも私?』じゃありませんでしたー! 残念じゃないゴブよ? 本当ゴブよ?


「ゴブリオ、荷物置ク。重イ荷物、オデ、持ツ」


 そう言って、拠点に帰ってきた俺から荷物を受け取るオクデラ。

 一角ウサギを渡して、武器を渡して、鎧を外すのを手伝ってもらって。

 かいがいしく俺の世話をするオクデラとシニョンちゃん。

 うん、俺たちの生活は変わってない。


 ……。

 …………。

 変わりまくってるゴブゥ! なにコレ、新婚さんゴブか! しかも一夫多妻ゴブ! ハーレムゴブ! ただいまハニーたち! おかえりのチューはないゴブか? まあないよね! というか一人はオークだしね! チューされても困るゴブ! なに馴染んでんだオクデラァ!

 アニキ……アニキ、どこで何してるゴブ……早く帰ってきてほしいゴブ……。


 俺が死にかけたところを見てから、いや実際死んだんだけど、オクデラは前より心配性になった。

 狩りや見まわりだって俺一人で行くのを止めたぐらいだ。

 束縛が激しい系彼女だね! オクデラはオークだけど! というかその前に男だけど! でも男の一部はアレだけど! オクデラEDだからね! ハハッ! すまんオクデラ。


 二人にはまだ生き直しのことは説明してないから、オクデラはシニョンちゃんが魔法で俺を治したと思ってる。

 おかげでシニョンちゃんのことを拝み出しそうなぐらい大事にしてて、拠点で二人きりにしても安心だ。

 あとEDだし。

 いいヤツすぎだぞオクデラ! オークってなんだっけな! でもこのまま純情弱気オークで生きていってほしいゴブ! ピュアオーク!


 生き直し。

 あれから何度もスライムと一角ウサギを倒して、ライフポイントは11になった。

 一匹倒すごとに1しか増えないのか、敵の強さによるのかはまだ不明だ。


 でも。

 それも、明日わかる。


「ゴブリオ、明日、本当ニ、ヤルノカ? アイツ強イ」


「大丈夫だオクデラ。狙い通り罠にはめたら戦うけど、うまくいかなかったら逃げるゴブ」


 心配そうなオクデラに、何度も説明して安心させて。


 俺はメシを食べて、眠りにつく。

 強いヤツを倒せばライフポイントがたくさん増えるのかどうか。

 俺が100万ライフポイント溜めてはやくニンゲンになるためには、大事な検証だ。


 俺は眠りにつく。

 スキルはあいかわらず生えないけど、俺にとっては問題ないかもしれない。

 たぶんライフポイント、残機がある限り死んだらまたあの空間で、ライフポイントを消費すれば種族を選んで生き直せるしスキルも取れるから。


 俺は眠りに……つけないんですけど!

 木の上の拠点は三人並んで寝るには狭くてシニョンちゃんと密着してるから! 当たってる、当たってるゴブ! 当たってるというか腕が挟まれてるゴブ! 生殺しゴブ! あ、うん、俺たぶん殺されても死なないんだけど! ハハッ!


 でもしょうがない。

 シニョンちゃんは、眠るとだいたいうなされてる。

 たぶんあの時の悪夢を見てるんだろう。


 くっつかれて何もしない俺まじジェントルゴブ! はやくニンゲンになりたいゴブ! そしたらおっぱいちゃんとデートしたりイチャイチャしたり、あ、ああ、あんなこととか、こんなこととかしちゃったり……ゲギャッ。



「ほらほらこっちゴブ! 雑魚ゴブに追いつかないとか雑魚ゴブなあ!」


 いま、俺は森を走ってる。

 剣シカに追いかけられて。


 挑発するように言ってるけど、徐々に追いつかれてる。

 働け俺のスキル【逃げ足】! もうちょっとだから! もうちょっと、もうちょっとで! よし!


 上から垂れるツタを使ってジャンプする俺。

 剣シカは気にせず走って追いかけてくる。

 俺の狙い通り。

 そして。


 剣シカは、穴に落ちた。


 オクデラが掘って、俺が隠した落とし穴に。


 よっしゃああああ! しょせんシカ、馬鹿の片割れゴブなあ! 元人間サマの知恵には勝てないゴブ! ゲギャギャ!


「ゴブリオ、ヤッタ! ゴブリオ、スゴイ!」


 落とし穴の近くで待機していたオクデラは大喜びだ。

 どんな感じかと振り返る俺。

 剣シカは落とし穴に落ちて、底に固定しておいたニンゲンの剣と、一角ウサギの角がブッスリ刺さっていた。


 さすがモンスター、まだ息があるゴブな! でも罠で殺したら俺にライフポイントが入るか検証するのはまた別の時! いまは雑魚ゴブより一角ウサギよりスライムより強い剣シカを殺したら、ライフポイントがどれだけ増えるか検証ゴブ! ちゃあんとトドメをさしてやるゴブなあ。ゲギャギャッ!


 落ちた時にとっさにバランスを取ったのか、剣シカは立った状態で、下から腹を刺されてる。

 追いかけていた俺の方を向いて。


 正面から行くと剣みたいに鋭い角があるから、穴をぐるっと回り込む俺。

 剣シカの背中が見える。


 落とし穴に落ちて、ニンゲンの剣に体を貫かれて、一角ウサギの角が何本も腹に刺さった剣シカ。

 まだ息はあって動こうとしてるけど、固定した武器がそれをさせない。

 つまり俺は、余裕で後ろから攻撃できる。

 よし、一思いに殺ってやるゴブ! 俺は優しいゴブなあ! ゲギャギャ!


 一角ウサギの角はそんなに長くないから、剣シカを貫いて背中から出てくることはない。

 それを知ってる俺は、ニンゲンの剣だけを避けて。


 剣シカの背後から、落とし穴に飛び込んだ。


 ニンゲンの剣を手に、後頭部を狙って。


 ヒャッハー、その命もらったゴブ! 罠にかかるなんて油断したヤツが悪いゴブ! ライフポイントになって俺の糧になるゴブ!


 勢いをつけてジャンプした俺。

 剣を突き刺そうとして。


 剣シカと、目が合う。


 え? なんで正面から俺のこと見れるゴブ? 首がぐにゃってなってるゴブ! 関節! 関節どうなってるゴブ!?


 剣シカは、ぐにゃんと首を曲げてこっちを向いてる。

 剣のような角を、俺に向けて。


 空中にいる俺はどうにもできない。

 この後は、ただ角に突っ込むだけだ。

 ああうん、モンスター舐めてたゴブ! 油断した俺が悪いゴブ! くっそ、こうなったらお前だけは仕留めてやる! 相討ちゴブ!


 鹿っぽいっていっても、剣シカは異世界の生物でモンスター。

 俺は油断してたみたいだ。

 モンスターがいて、魔法がある。

 そんなファンタジー世界を生き抜く剣シカは、首を180°以上まわして攻撃できるらしい。


 くっそ、検証とかいって舐めてたゴブ! 神様! ライフポイントは11あるゴブよ! またあの空間に行けるって信じてるゴブ! 俺まだ死なないよね? 大丈夫だよね? 信じてるゴブ!


 手にした剣を角の間に通して、剣シカの頭を貫いた手ごたえがある。


 すぐ、体を貫かれた感覚がする。


 ブシュッと勢いよく血が流れて。


「ゴ、ゴブ、ゴブリオ! ゴブリオォ! オデ、オデ……ソウダ、ニンゲン呼ンデ来ル! ゴブリオ、死ナナイデ!」


 焦るオクデラの声を聞いて、ライフポイントがあんまり溜まってないから次も雑魚ゴブだなあとか、スキルも新規で取るのはキツイなあ、とかぼんやり考えながら。




 俺は死んだ。(三日ぶり二回目)




ということで一章終了。

あ、(三日ぶり)は作中時間です。念のため。

次話から二章スタート予定!


【一章終了時のステータス】

■ ゴブリオ(ゴブリン / 死亡中につきライフポイント消費予定)

 【ライフポイント】

  13

 【スキル】

  夜目、ゴブリン語:LV2、覗き見(ピーピング)、逃げ足、人族語:LV1

 【称号】

  森の臆病者(チキン)


■ オクデラ(オーク)

 【スキル】

  夜目、ゴブリン語:LV1、鈍感

 【称号】

  オーク the ED


■ アニキ(ゴブリン / 行方不明中)

 【スキル】

  夜目、ゴブリン語:LV3、棍術、鱗化

 【称号】

  突然変異の革新者(ミュータント)


■シニョン(普人族)

  不明

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― 新着の感想 ―
一回無事逝けたからってその後すぐほいほい逝くとか節操なさすぎゴブ!!もうちょっと頑張れゴブ!!
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