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ゴブリンサバイバー〜転生したけどゴブリンだったからちゃんと生き直して人間になりたい!〜  作者: 坂東太郎
『第一章 果ての森1』

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第八話 仲間になったオークくんが属性持ちすぎて盛りだくさんすぎるだろおい!


 オークの名前はオクデラになった。


 なんでって?

 うん、特に意味はない。

 オークラとかオークリとかオークボとかオーグロとか、いっそオークニヌシとかオークワガタとかオークウッドとかいろいろ浮かんだんだけど。

 なんかしっくりこなくて。

 オクデラくん。

 うん、深い意味はない。


 でら適当でかんわ!


 ……。

 …………。

 さて。

 ゴブリオこと俺とオクデラ、アニキはまだ岩によりかかって座ってる。

 キョロキョロ目を向けて警戒することは忘れてないけど。がんばれ俺のスキル【覗き見】!


 話したいことはまだある。

 うん、一方向だけでも気にしなくていいってラクだな。

 アニキが考えて休憩場所に選んだだけのことはある! さすがアニキ!


 もしこのそこそこでかい岩を越えてきたり、砕いてくるヤツがいたら?

 うん、その時は逃げるだけだよね。脱兎のごとく! いや、脱ゴブのごとく! 期待してるぞスキル【逃げ足】!


 話したいこと。

 そう、スキルについてだ。


 これからこの危険な森で三匹で暮らしてく以上、オクデラとアニキのスキルも知っておきたい。

 あと、なんでオクデラがゴブリンの里に来たかも。

 追われてたりしたらマズイじゃんね。


 ということで。


「オクデラ、ちょっといい? オクデラってなんでゴブリンの里に入りたかったの?」


 小さな声で、ぐふぐふ笑うオクデラに話しかける。

 自分に名前を付けてもらって相当うれしかったらしく、噛みしめてたみたいだ。

 うん、なんかその、適当ですまん。


「オデ、オークノ言葉、ワカラナイ。デモ、ゴブリンノ言葉、ワカル。ダカラ」


 は?

 ……ちょっと整理しよう。


 オクデラはオークだ。

 どこからどう見てもオークだし、自分でもそう言ってたし、アニキもオークだって言ってた。

 オークなのに、オークの言葉がわからない。

 そんなんあり得るの? でもゴブリンの言葉はわかるってどういうこと?

 あ、そうか。


「オクデラ、それってひょっとしてスキルのせい? スキル【オーク語】がなくて【ゴブリン語】があるとか?」


 よし、自然な流れでいけた! ほら、スキルがあるゲームとか物語だと隠しといた方がいいって言うじゃん? この世界にはスキルがあるわけで、どうやって聞こうか悩んでたんだよね!


 だけど。

 オクデラは首を傾げるだけ。

 いやいや小首を傾げるオークとかかわいくないから!

 困った時はアレだ、頼れるアニキだ。

 視線を動かすと、アニキも首を傾げていた。

 いやいや小首を傾げるゴブリンもかわいくないから! しかもアニキ、顔の半分が鱗っぽくて見た目けっこうアレだから!

 え、うそ、マジで?


「ゴブリオ、スキルとは何だ?」


 マジか。そもそもスキルの存在って知られてないのか。

 少なくとも、ゴブリンには。

 オーク? うん、オクデラはずっとぼっちだったからね。オークが知らないとは言い切れないよね。


 あれ? これひょっとして、スキルがあるのは俺だけって可能性がある?

 俺、実はチート持ち? ここに来てまさかの大逆転!?

 はやる気持ちをおさえて、オクデラに話しかける俺。平静、平静。


「オクデラ、『スキルウィンドウ』って言ったら、頭の中に何か浮かばない?」


 スキルを見る時、俺の口から出てたのはゴブリンの言葉だった。

 だったら、スキルが俺以外でも存在するなら、オクデラでもアニキでも見えるはず。


「待ッテ。スキ、スキ、スキッル」


 ……いやオークに好き好き言われてもな! ときめかないから! 変な活用みたいになってるし! 好き好き好きる!


「スキッル、スキルウ、スキルウドウ、スキルウィン、『スキルウィンドウ』」


 ツッコミをおさえて、じっとオクデラを見つめる俺。


 オクデラは、ぼんやり斜め上を見ていた。

 それどころか手を伸ばして空中を掴もうとしてる。スカ、スカッと空振る。

 うん、アレだね、いまオクデラの見た目だいぶヤバいね。ボケたみたいになっちゃってるね。


 でも、これは。

 この反応は。


「ゴブリオ、コレ、何ダ? 変ナ模様ガ」


 スキルあるのか! 俺だけのチートじゃなかったのかよ! うん、薄々わかってた!

 よし、落ち着け俺。

 大丈夫、スキルは俺だけじゃないだろうって薄々気づいてた。ほら、あのニンゲンたちめっちゃ強かったし。大丈夫、大丈夫。


「オクデラ、その模様を、そのまま地面に書いて欲しい」


「ウン、ワカッタ」


 うむ、素直でよろしい! なんだろ、よこしまな俺の心が洗われるようだ。やるな純情系オーク! 純情系オークとか響きがおかしいけど!


 地面に落ちてた木の枝をオクデラに手渡して、しばらく待つ。

 待ってる間は周囲の警戒を忘れない。

 ゴブリオ、できるゴブゴブ。


 オクデラは『変な模様』と言っていた。

 それがオークの文字なのか、それとも。


 めっちゃ気になるけど、書き終わるまで見ない。

 途中を見てたらもどかしくてイライラしそうだし、まわりを見ないと危ないしね!

 そして。


「ゴブリオ、オデ、デキタ」


 オクデラの声を聞いて、俺は地面を見た。


 そこにあったのは。


 ぐちゃぐちゃに崩れた、文字だった。

 外国人が書く、日本語のような。


 いや、もっと崩れている。

 言葉を覚えていない幼児が書く、日本語のような。


 はい?

 え、日本語?

 なにコレ、どういうこと?


 いや俺の場合はまだわかるよ?

 ほら、あんまり思い出せないけどたぶん日本人で、それがいつの間にかゴブリンだったわけで。

 頭に浮かぶのが日本語だったとしてもおかしくない。

 うん、むしろこの世界の文字だったらわからないし。


 え、オクデラが日本語?

 オクデラまじ奥寺?


「ゴブリオ、どうした? 落ち着け」


 アニキから声がかかる。

 俺、ちょっと混乱してたらしい。

 オクデラが奥寺なわけない。

 そりゃそうだ、いま俺が適当にオークにつけた名前だもの。


 落ち着け、落ち着け俺。

 一つ大きく息を吐いて、地面の文字を眺める。

 うん、崩れてるけどやっぱり日本語っぽい。

 崩れすぎて読めない。

 よし。


 時々オクデラに声をかけて、まっすぐかとか、曲がってるとか直角とか確かめて。

 やっぱり日本語で書かれてた、オクデラのスキルと称号が判明した。



 まずスキル【夜目】。

 これはいいんだ。俺も持ってるし、オークが持ってても問題ない。うん。


 次。

 スキル【鈍感】。

 ……ええー。

 鈍感ってスキルなのかよ! ぜんぜんプラスなイメージないんですけど! あれかな? オクデラは鈍感系主人公なのかな? オークだけど! ハハッ!


 最後。

 スキル【ゴブリン語:LV1】。

 うん、そうだね、俺がスキル【ゴブリン語:LV2】だもんね。それより喋れなかったらLV1でおかしくないよね。

 …………。

 オークだけどな! スキル【オーク語】なかったけどな! なにコレマジどうなってんすか! しかも勉強して覚えたんじゃないんだって! 意味わからん!


 ゴロゴロと転がる俺。

 オクデラはオロオロと、アニキは俺に何か異常がおきたかと心配そうに見つめている。


 うん、大丈夫、大丈夫。

 落ち着け、落ち着け俺。

 はあはあと荒い息を吐いて気持ちを落ち着ける俺。

 深呼吸を繰り返す。


 そう、まだ終わりじゃない。

 オクデラには、称号があったらしい。

 俺の【森の臆病者(チキン)】みたいなヤツだ。

 さっきオクデラにまっすぐとか直角とか確かめて、俺が地面に書いた。

 文字は書いたけど、とりあえず流してる。

 だって。

 だってさ。


 称号【オーク the ED】。


 ……。

 …………。

 ………………。

 意味わからん! いや意味はわかるけど! なんで片仮名とアルファベットが混ざってんだよ!

 いや違う、問題はそこじゃない。

 オークなのにEDってどういうことだよ! オークってゴブリンと並ぶエロ担当だろ! EDでどうやって女騎士の相手すんだよ! 姫騎士は! エルフは! オークの存在価値の危機だろ!


 動揺のあまり後ろの岩に頭を打ちつけ出した俺を、アニキが必死で止めてくれた。

 ありがとうアニキ。

 優しいアニキに癒される。

 まあこの後アニキのスキルもチェックするんだけどな! アニキもこんなんだったら俺もう突っ込まない自信がねえよ!


 ようやく落ち着いてきた俺は、オクデラに目を向ける。


 自分でもわかる。

 俺、すっごく優しい目でオクデラを見つめてる。

 純情ぼっち弱気オークで【鈍感】で【ED】だもんなあ。


 がんばろう、オクデラ。

 一緒にがんばろう。

 大丈夫、きっと克服できるよ。

 そしたらほら、純情で鈍感でEDって、まるでハーレム系主人公みたいじゃん。


 だから一緒にがんばろうな。

 俺はゴブリンで、オクデラはオークだけど。



■ ゴブリオ(ゴブリン)

 【スキル】

  夜目、ゴブリン語:LV2、覗き見(ピーピング)、逃げ足、

 【称号】

  森の臆病者(チキン)


■ オクデラ(オーク)

 【スキル】

  夜目、ゴブリン語:LV1、鈍感

 【称号】

  オーク the ED

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