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雪の降らない冬の日(タイトル募集中)  作者: もこたすぃ
第一章 消えない傷跡
2/9

『少女の声』

読んで頂きありがとうございます!最後まで読んで頂けると嬉しいです。

何の音も声もしなかったはずなのに、アキラは見たこともない所で立っていた。

亜人のような、獣のような、見たこともない奴らが広い道を行き交っている。


「な、なんだってんだ」


足が地に着く感覚、先ほどまでの浮遊感はまるで嘘だったかのように思えた。

賑わう道には龍車やら店やらで一杯。

龍車が走り、足に伝わる振動。


ーー死んだんじゃなかったのかよ。


道の真ん中に独り佇むアキラを誰もが肩をぶつけ、それでも前へと歩いた。


「……くっ」



気付くと無我夢中で走っていた。

体中は汗だらけ、まさに満身創痍。

アキラはフラフラの足を休めるように、誰もいない路地裏の壁にもたれかかった。


現実から逃げたくて、走れば元の世界に帰れるのかもって……だから走っていたんだ。


もう既にアキラの思考回路は壊れてしまい、考えることも出来ない。

一度死んでしまった体は、もう一度死ぬとどうなるのだろうか。


「ーーユウキ」


やはり浮かぶのは『アキにぃ』と呼んでくれる中学二年生の妹だけ。

アキラが生まれて直ぐ母親は他界し、父親はアキラが17歳、ユウキが14歳の時に不慮の事故で亡くなった。

約一年、父親の代わりにアキラがバイトを掛け持ちして食べていけてた。


「ユウキを残しちゃ……ダメなんだよ!」


アキラは強く、強く地面を殴った。

ズキンと痛みが拳を襲った。

アキラは独りうずくまり痛みに悶える。


ーー痛い?


アキラは拳の痛みに違和感を感じた。

元の世界で自分が刺殺された時、背中に感じた痛み。

死んだ後の暗い世界で地面を殴った時の無痛。

異世界での痛みは今、生きていると言える気がする。


「……生きてる、よな」


アキラは自分の頬っぺを抓ったり、爪で腕を掻いたりと痛みを感じるか確認した。


「い、いででっ」


痛みは生きてる証拠。

痛いからか生きてることが嬉しいからか涙目になる。

でも今自分に置かれた状況は最悪だ。

自分のいる場所も、どうなってるのかも分からない。

アキラの手元にあるのは少し暖かい普段着と電池の残量が心許ないスマホのみ。

今の自分に頼れるのはスマホだけ。

アキラはスマホの電源を入れ電話帳を開く。


ーーユウキ。


電話を掛けたら出てくれるのか。

そもそも繋がるのか。

アキラは何となく繋がらない気がしていたが。

それでもアキラはユウキの声が聞きたいとスマホを耳に当て蹲った。


ーーピロリピロン!


「ーーっ」


薄い期待と不安で潰れそうな時、静かな路地裏に着信音が鳴り響いた。

声にならない思いが込み上げる。

繋がったことを意味する着信音。


「アキにぃ!何してたのさ!」


繋がったことへの嬉しさに浸る時間も与えてくれず妹は電話に出た。

スマホの向こうで怒ってるユウキの顔が浮かぶ。


「……アキにぃ?どうかしたの?」


ユウキ、ユウキ。

アキラは心の中で名前を呼んだ。

妹の声が聞こえ聞きたいから電話を掛けた。

電話を掛けて何を言いたかった?

ユウキに自分の死を伝えてどうなる。

何のために電話を掛けたんだ。


「おーい!もしもーし!アキにぃー?」


ユウキの声を聞き、アキラは心を決め息を呑んだ。



「……俺な、ユウキ」



震える声。

ユウキの名前を呼ぶのは半日ぶりくらいなのに、何年ぶりのようで。


「な、なぁにアキにぃ」


ーーその『アキにぃ』って呼んでくれる声が好きで。


「よく……聞いてくれ」


ーー俺のことをいっつも元気付けてくれて。


「聞いてるよ?」


ーー俺は……ユウキ。




「お前が大好きだ」



ーープツン。


アキラがそれを言い終えると携帯の電池は切れ、通話終了の画面が最後目に入った。

ありがとうございました!次回もよろしくお願いします!

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