継ぎ火 ー壱之語ー
「ッサン!……オッ…ン!!」
なにやら遠くで喚き散らす女の声がする。
意識が微睡みの中から引っ張り起こされる。
「起きろよッ!!お客さん来てるって言ってんだろ!」
…むぅ…やかましい。惰眠を邪魔するとは良い根性してんなコイツ。
「ふぁ~……お前は優しく起こすって事を知らないのかね…。こう、もっとだな、」
詳しく説明しようとした所だったが「客つってんだろ!」と椅子の背もたれを蹴られ無理やり動かされる。
ため息を付きながら最低限の身嗜みを整え隣の事務所への扉を開ける。
「あードモドモ、失礼しました。私こういうもんです。」
くたびれた男が応接室で待っていた女性に名刺を渡す。
そこには
琥珀堂ー店主 兼 所長ー
弓削 善之助
女性は受け取り、名刺と善之助を見比べる
「あの、ここは探偵事務所以外にも何かお仕事を?」
「えぇまぁ。外の張り紙に書いてる探偵業以外に少々雑貨を扱っておりまして。…あ、今怪しいって思ったでしょ?」
「え、あ、いやそんな事は」
女性の目が泳ぐ。
「なんなら胡散臭い壺でも買ってみます?」
そう言いながら善之助は部屋の棚の上に置かれた怪しい壺を指を指して怪しい笑みを浮かべる。
「オイ、善之助。アンタがそんなのだからお客さん困ってんでしょ!ちゃんとしろ!」
隣の俺の私室から俺を蹴り飛ばした小娘が出てくる。
「すいません、こんな小汚ないオッサンですけど一応仕事はちゃんとしてるんで…あ、お茶淹れますね。コーヒーとかもありますけど、どうしましょ?」
客を逃すまいという圧と気遣いが来客を包み込む…!
「あはは…お茶でお願いします…」
依頼者の女性は苦笑いを浮かべながらソファーに座り直す。
「ゴホン…では改めて。私、弓削善之助と申します。こっちのうるさいのは」
「誰がうるさいのだ!……華菱 紅華と申しますオホホ…」
ものすごい早さでお茶を持ってきたお盆で善之助の頭を叩く紅華。
「ってぇ……あぁ、すいません。それでは、今度こそ改めてまして。それでお話というのは?」
依頼者の女性も座り直し、
「それでは私も改めまして。水加美 雫と言います。」
初作品でお目汚しになると思いますが、頑張っていきたいと思いますので良ければ読んでみて下さいッ!