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(見届ちゃ、駄目だ……)
渡辺の時と同じ事を、何度も何度も頭の中で唱え続ける。
(見届けちゃ……)
男の口から、星加チャンの顔が生えている。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
星加チャンの口から漏れるのは、深呼吸の様な叫び声。
ソレが不思議と、コレから男の胃袋に潜る為の息継ぎのように聞こえて、見えて、何故か俺は、ホッとした。
そして、星加チャンの顔が男の口の中に沈んで行くのを最後まで見届けた。
圧力の所為か、眼球がボロリと転がり落ちたのが、とても印象的だった。
*
「オイ! オイ! 阿久津! 阿久津!?」
耳元で、島田の声がする。
そうだ。島田と電話している最中だったのを忘れていた。
(渡辺と星加は大学に行けやしない。
だって、あそこで跡形も無く丸呑みにされたんだから。
でも、そんな事を言ったって、誰も信じやしないだろうけど)
あの後、俺はそう慌てる事も無く、遽走る程度で1人逃げ果せた。
「ぁ、ああ、ごめん、島田……最近、眠れなくて……」
「えぇ?」
「悪い夢を見るんだ……」
夢じゃなく、現実の繰り返しをみているんだけどな。
「病院、行った方が良いんじゃないのか?」
「病院か……」
「そうだ! ソレじゃ、気晴らしに何処か遊びに行くか?
場所が変われば、パッと眠れるかも知れねぇぞ!
行きたいトコあるか? 俺、付き合ってやるぜ!」
「行きたい所……」
島田に言われてスンナリ思い浮かんだのは、
「――そうだ。
ちょっと遠いんだけどさ、格安のロッヂがあって、そこに行ってみたくて……」
「ロッヂかぁ! 面白そうだな! 良いぜ、行こう行こう!」
折角 逃げてきたのに、どうして又あんな場所に行きたいと思うのか……
「じゃぁ、来週末にでも早速 行くか!」
「ああ」
電話を切って、俺は持ち帰っていた あのロッジのパンフレットを広げる。
「予約……」
毎日、毎秒、あの光景が思い返される。
脳に焼きついて離れない、血みどろの戦慄の現場。
「ぁ、もしもし? 山奥ロッヂですか? 宿泊の予約をお願いしたいんですが……」
ゴクリと喉が鳴る。
(また、見たい……見届けたい……)
あの時の興奮が忘れられないんだ。
(捕食されてく人間の姿があんまりにも妖艶で、何度でも何度でも見届けたい)
予約は完了。
「俺は食べられないように気をつけなきゃな」
あくまで、餌を持ち込む鑑賞者でいたいから。
END 2013/04/06 writing by Kimi Sakato




