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病み憑き  作者: 坂戸樹水
6/6


(見届ちゃ、駄目だ……)


 渡辺の時と同じ事を、何度も何度も頭の中で唱え続ける。



(見届けちゃ……)



 男の口から、星加チャンの顔が生えている。



「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」



 星加チャンの口から漏れるのは、深呼吸の様な叫び声。

ソレが不思議と、コレから男の胃袋に潜る為の息継ぎのように聞こえて、見えて、何故か俺は、ホッとした。


 そして、星加チャンの顔が男の口の中に沈んで行くのを最後まで見届けた。

圧力の所為か、眼球がボロリと転がり落ちたのが、とても印象的だった。



*



「オイ! オイ! 阿久津! 阿久津!?」


 耳元で、島田の声がする。

そうだ。島田と電話している最中だったのを忘れていた。


(渡辺と星加は大学に行けやしない。

だって、あそこで跡形も無く丸呑みにされたんだから。

でも、そんな事を言ったって、誰も信じやしないだろうけど)


 あの後、俺はそう慌てる事も無く、遽走る程度で1人逃げ果せた。


「ぁ、ああ、ごめん、島田……最近、眠れなくて……」

「えぇ?」

「悪い夢を見るんだ……」


 夢じゃなく、現実の繰り返しをみているんだけどな。


「病院、行った方が良いんじゃないのか?」

「病院か……」

「そうだ! ソレじゃ、気晴らしに何処か遊びに行くか?

場所が変われば、パッと眠れるかも知れねぇぞ!

行きたいトコあるか? 俺、付き合ってやるぜ!」

「行きたい所……」


 島田に言われてスンナリ思い浮かんだのは、


「――そうだ。

ちょっと遠いんだけどさ、格安のロッヂがあって、そこに行ってみたくて……」

「ロッヂかぁ! 面白そうだな! 良いぜ、行こう行こう!」


 折角 逃げてきたのに、どうして又あんな場所に行きたいと思うのか……


「じゃぁ、来週末にでも早速 行くか!」

「ああ」


 電話を切って、俺は持ち帰っていた あのロッジのパンフレットを広げる。


「予約……」


 毎日、毎秒、あの光景が思い返される。

脳に焼きついて離れない、血みどろの戦慄の現場。


「ぁ、もしもし? 山奥ロッヂですか? 宿泊の予約をお願いしたいんですが……」


 ゴクリと喉が鳴る。



(また、見たい……見届けたい……)



 あの時の興奮が忘れられないんだ。



(捕食されてく人間の姿があんまりにも妖艶で、何度でも何度でも見届けたい)



 予約は完了。



「俺は食べられないように気をつけなきゃな」



 あくまで、餌を持ち込む鑑賞者でいたいから。






END 2013/04/06 writing by Kimi Sakato

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