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病み憑き  作者: 坂戸樹水
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ホラー好きなので、初のホラー小説を投稿させて頂きました。

R指定ではありませんが、ややグロテスクと感じられる描写があるやも知れません。

苦手な方はご注意ください。

得意な方には、最後まで読んで頂けたら嬉しいです。




 何故、こんな事になってしまったのか解からない。


「ハァ、ハァ、ハァ!!」


 今が何時いつかも解からない。


「ゴク。ゴク。ゴク。ゴク。――はぁ……」


 喉が乾く。

眠っても眠っても直ぐに目覚めてしまう。悪夢に魘されるんだ。


「クソ……」


 何日こんな状態が続いてるのかも忘れちまった。

大学に進学して折角の一人暮らしだってのに、部屋中 散らかり放題だ。

雨戸も開けてない。大学にすら行ってない。



Tururururu…



 携帯が鳴った。

コレばっかりは無意識にも充電してたんだな、俺。


島田しまだ? ―― あぁ確か、同じ学部のヤツ……)



―― Pi



「……はぃ?」


 掠れた声で応答すると、島田が口籠もる。


「ぉ、俺、島田だけど…阿久津あくつ? だよな?」

「――ぁぁ。そうだよ……」

「ど、どうしたんだよッ?

夏休み明けて1週間 経つのに、お前、全然 大学こないでさぁ、具合悪いのか!?」

「1週間……」


 こうゆう駄目な暮らしになってから、少なくとも1週間は経過しているって事を知った。

俺が呆けた物言いをすると、島田は狼狽する。


「お前、大丈夫か!? 何かあったのか!?

夏休みボケで大学 辞めたくなったとか言うんじゃないぞ!

お前まで大学こないとか、ココ1週間の俺、メッチャ孤独だったっつの!」


 あぁ、何と無く現実を思い出して来た。

島田は大学に入ってからの友達で、心配性で口煩い男。


「オイ、聞いてるか? 渡辺わたなべ星加せいかチャンも来ないしさぁ……」

「渡辺……星加……」


 そうだ。そいつも大学からの友達。少しトボケたヤツ。

星加は渡辺の彼女で……あぁ、でも、アレは きっと俺に気が合ったに違いない。

そうでも無きゃ折角の夏休み、恋人と2人きりの旅行だってのに『阿久津クンも一緒に行こう』何て、俺を誘ったりやしない。


「阿久津、ホント、お前、おかしいぞ?」


 そう。何が悲しくて男2人・女1人で旅行に行っちまったんだろう?

そもそも、そこから間違っていたんだ。



*



 ―― 2週間前。


「阿久津ク~ン! こっち、こっち!」

「よぉ! 星加チャン、渡辺! ワリぃワリぃ、寝坊しちったよ~~」


 その日は猛暑だった。

道には陽炎が漂っていて、吸い込む酸素も熱気に満ちていて、

ソレでも『折角の旅行に雨が降るよりはマシだ』と、3人で笑った。


太一たいちったらね、バス来ちゃうよ~~バス来ちゃうよ~~って、

ずーっとグズグズ言ってたのぉ!」

「だって、そうだろ? 1本 乗り落としたら1時間 待たなきゃ次のは来ないし、」

「その前に渡辺、予約制なんだから、乗り過ごしたら待ったって次のには乗れねぇぞ?」

「遅刻した本人が言う事かよ……」


 旅行に誘われたのは、昨晩の事だ。

星加チャンから電話が来て、宿泊代の安いロッヂを見つけたから一緒に行こうって。

バイトも無かったし、暇だったから2つ返事でOKしたけど、旅行なんてそう滅多に行かないもんだから、何を用意すれば良いのか分からず、鞄に荷物を詰め込み終わったのは明け方の事だった。


(もっと早く連絡くれりゃぁ寝坊なんてしなかったっつの)


 俺は星加チャンを見た。この蒸し暑い中でも涼しげな笑顔。

キャミソールにショートパンツ。その景観の良さには暑さもフッ飛ぶ。


「ってゆうか、渡辺、俺もくっついてって良いのかぁ?」


 わざとらしく聞くと、渡辺は苦笑した。


「ハハ。良いよ良いよ」

「そっか。そんなら良いや」


 渡辺は人の良い男だ。

本当は星加チャンと2人で行きたかったに決まってる。

でも、星加チャンの言う事には逆らえない。

言い逆らって捨てられるのが怖いのか、渡辺はいつもこの調子で星加チャンの尻に敷かれている。


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