乙女ゲーム転生しました!まさか、私が王道パターンの悪役なんてっ!!3
はい、皆様。ごきげんよう。
さあ、話の続きですわ!
話の続きと言っても、彼が毎日のように来て、話をして帰るだけなんですが…これがまた、大変なのですよ!
こっちを睨む。ひたすら睨む。
俺様発言、人の話を聞かない。
なんなんですかね?あの人?
この間も、私の好きな本の話になって話していた時の事です。
昼下がり、私が部屋で絵本を読んでいた時に、彼はやってきました。
「おい。それは、どんな話なんだ?」
“おい”って…。流石、俺様ですわね…。偉そうですわ…。
というか、挨拶が始めに出てこないのは何故?
「彰様、ごきげんよう。これは、妖精が出てきて悪者と戦う話ですわ。読んでみます?」
この絵本は、挿絵も綺麗で、話も深い内容になっているのです。短編以上中編未満な感じの分厚さ。
前世の絵本は、可愛らしい物しか読んでなかったので、こんな絵本があるなんて知りませんでした。
「いや、いい。絵本は、読まないからな」
じゃあ、何故、聞いたのですか?
「そうですか…。彰様は、何を読まれるのですか?」
よしっ!会話の出だしとしては良い感じなのではないでしょうか!?
「経済学と経営学」
……それは、読書の定義に入りますの?
後継者だから、今から勉強してるだけなの?
「そうなのですか?私は、そちらの方はよくわかりませんの…」
だから、話が合わないから帰ってくれません?…って、言えませんけどね!
「気にするな。お前は、社交の勉強さえしてれば、問題はないだろ?会社の経営は、俺の仕事だからな」
いやいやいや!誰も、将来の話なんてしてませんからね!?今話してるのは、本の話でしたよね!?
「そ、そうですけど…。彰様は、物語とかは読まれないのですか?」
「“物語”?興味ないな。作り物だろ?」
…前世の私からしてみたら、今の私達も“作り物”なんですけどね。言えないけど…。
「そうですか…」
話が続かない!いや、あまり続かせて長引かせたくないけど!
だからと言って、邪険に扱うわけにはいかないし…どうしよう?
「でも、薔子が勧めるなら読んでみよう」
おっ?どういう状況の変化ですか?
「そうですか?では、こちらをお貸ししますね?」
私は、手に持ってた絵本を差し出した。
…差し出したんだけど、受け取らない。なんで?
読む気になったのではないの?
「彰様?」
首を傾げて呼べば、ハッとしたように本を受け取った。
なんなんでしょう?
社交辞令を鵜呑みにしたらダメでした?
いやでも、今、受け取ったし……。はて?
「これは、お前の気に入ったやつなのでは?」
ああ、気を使ってくれたのですね。
「はい。お気に入りです!実は、寝る前にも読んでいますの」
寝る前に読むのは、前世からの習慣みたいなものなんですけどね。
「……借りて良いのか?」
「はい。他にも本はありますから!」
戸惑いながら聞くわりには、素早く本を仕舞うのは何故ですかね?
本当は、興味があったとか?
「そうか。なら、借りていく。……そうだ。今度、我が家でパーティーがあるんだ。薔子も来るだろ?」
さあ?私の一存で出欠席は決められませんし。
“来るだろ?”と言いつつも、来るのが当たり前みたいな顔付きは、腑に落ちませんが…。
婚約者ですから、行くのでしょうね…。
「父に聞いてみないと…」
「いや、来るのは決まっているから聞く必要はない」
なら、聞いてこないで!
「本当は、このパーティーで発表するつもりだったんだが、父上に止められた」
「発表ですか?」
肩を落として、残念そうな顔付き…。余程、発表したかったのですね…。
「ああ。薔子との婚約をだな…」
「まだ早いと思います」
おじ様、グッジョブですわ!
何を考えているんですか貴方は!?
原作でも、中等部に入ってからの婚約だったのに!
展開が早過ぎです!
「何故だ?遅かれ早かれ、俺と薔子は婚約するんだから良いだろ?」
良くないです!
どちらかと言うと、破棄してほしいのですよ!?
良いわけないです!
「早いと思いますわ。それに、まだ、私達は若いのですから…ゆっくりいきませんか?」
そして、婚約を諦めてください。
悪役なんてしたくないんですよ!
「そうか…そうだな。ゆっくりでも良いか…。俺さえしっかりしていれば…」
何を?何を“しっかり”するのですか?
目の前で、ブツブツと呟かないでください!恐いですよ!
「……わかった。婚約者だと告げるのは、今回は諦めよう」
気になるキーワードが出てきましたけど?
“今回は”って、なんなんですかっ!?
次もないですよ!
婚約の話だって、双方の親達が『子供達、お互いが大人になってから』と言う話なのですけどね?
覚えてますか?覚えてますよね!?
「学園に入学してからにしよう」
「双方の親は、私達が“大人になったら”と話していましたよね!?」
貴方の“大人”の定義はなんなのですか!?
「話してはいたが、別に構わないだろ?何か、問題でもあるのか?」
構いまくりに、ありまくりですよ!!
「問題があるから、双方の親達は“大人”になってからだと言ったのだと思いますが?」
本当は“双方の親達”ではなく、私の父親の一言でこうなったのですけどね。
簡単に言えば、ただの親馬鹿発言ですが。
『娘は、そう簡単には嫁にだしませんから』
どちらかと言うと、おっとりタイプの父親が、背景にどす黒い物を背負って、相手の親と彼に伝えていました。
彼は、渋々受け入れていましたけど…。
そう、“渋々”です。
納得してないのはわかりますが、こちらにも言い分があるのを理解していただきたいですわ!
こちらの言い分は“婚約したくない”ですけどね!聞いてくれないですから、言いませんけど!!
「なら、いつが良い?」
おや。珍しく聞いてきましたね。
「……そうですわね…。私達が高等部に進学してからとか…?」
「それは遅過ぎるだろ?せめて、中等部に進学する前には…」
遅くないから!
「遅くないですわ。それが嫌でしたら、婚約の話を無しにして「わかった。高等部だな」」
最後まで話を聞いてくださいな!
「じゃあ、そろそろ失礼する」
「はい。わかりました」
本当に、唐突ですわね!
いえ、帰ってくれるのは嬉しいのですけどね?
「また来る」
そう言って、いつも帰っていきますが、呼んでいませんので来なくても構いませんよ?
「わかりましたわ」
もちろん、言えませんけどね!
……嵐のようでした。
毎回、こんな感じで会話して帰っていくのです。
好意を持たれてるような気もするのですが、どうも“恋愛”の好意とは違う気がするんですよね。
“玩具”扱いではないみたいですし……。
なんなのでしょう?
ただ、はっきり言える事は、相手が早く婚約をしたがってると言う事。
何が、彼を追い立てているのでしょうか?
謎です。