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第8話「けついと契約」

「は~な~せ~よ~!」


涼は手と足をばたつかせて抵抗を続ける。


「うるせぇ!」


パンッ!


クレルがいいかげん堪りかねて涼のお尻を叩いた。


「ひゃあっ!」



え、何今の?


俺の・・・・声?



自分でも理解できないほど高い声で悲鳴を上げたことに驚く涼。


「くははははは、かわいい声で鳴くじゃねか」


クレルはそう言いながら何度も涼のお尻を叩く。


「痛っ!にゃっ!うぅぅ!ちょっ!もぅっ!やめっ!」


涼は、涙目になって抵抗することなく弱弱しく抗議をする。


「最初からおとなしくしていればいいんだ」


そう言って叩くことをやめてくれたクレルだが、もう10回以上叩かれた。



ううぅぅぅぅ・・・


いたい・・・・、おしりが~~・・・・



唸りながらクレルの肩の上で干された洗濯物のように無抵抗になる。


クレルは階段を降りて、廊下を歩いて。


10分ほどで立ち止まった。



「ほら、着いたぞ」


そう言ってクレルが降ろしてくれたのは、すこしジメジメとした暗い石の通路。


等間隔で灯された松明が僅かな明かりを通路にもたらしているが、それでも夜の月明かりよりも頼りない。


「お尻が~~」


しかし涼はそんな周りのことよりも降ろされた衝撃で痛むお尻のほうが気になる。魔力が使えないために普段無意識におこなっている身体能力の向上もできず、魔力なしの生身の体がこんなに痛いとは思わなかった。


動くと痛いので降ろされた場所から動かずに周りを見渡す。


「なんか牢屋みたいな場所だな」


「ここは牢屋だ」


クレルが松明を持ってきながらそう言った。


「ま、まさか俺を閉じ込めるのか!?

・・・・・いや、けど・・こいつの嫁と虜囚の身となら、牢屋のほうがましかもしれない・・・・」


涼がそう言ってぶつぶつ言っているとクレルが松明で辺りを照らしながら歩いていく。


「俺が自分の嫁にそんな事をするわけがないだろ。それよりもこれを見ろ」


バカかお前?と言っているかのような顔をして俺を見降ろしてくる。


若干いらっとしながらクレルが照らした牢屋の中を覗き込むと、そこには両手足を壁に鎖で縛られた30代くらいの中世的な顔立ちの男が捕まっていた。


「なんで、人間がいるんだ? 俺と同じように嫁とかにするつもりか?」


涼が本気でそんなことを言いながら中を覗き込む、中の人間はこちらには特に関心がないようでちらっとこっちをみたがあとは無関心だった。


「これは、兵士の訓練用に捕まえてきた人間たちだ。この牢には6人捕えてある。新米の兵士たちに宛がい戦闘訓練をさせる魔法使いたちだ。もしも、俺の嫁にならなければこいつらを1人ずつお前の眼の前でゆっくりと惨殺しよう。それが嫌ならあきらめて俺の嫁になれ。人間はこういう人質を取ると言うことを聞きやすいらしいからな、バカみたいな考え方だが・・・・お前はどうする?」


クレルは松明でわずかに見える暗闇の中、それでもはっきりとわかるくらいに満面の笑みで言い放った。


「この悪魔が! そんなこと認められるわけがないだろうが!」


「そうか・・・、残念だ」


そう言って、クレルは松明を持っていないほうの手を牢屋に向ける。

その手に魔力が集まり始めて・・・・


ブシュッ!


「ぎぃぃぃあああああああああ!」


朱が舞った。捕まっている男の左手の指が5本弾けた。そのなくなった掌から先から勢いよく赤い血が噴き出した。

さっきまで何の反応も示さなかった男は突然の激痛に悲惨な声を上げる。


涼は茫然とその光景を見ていた。


え・・・・なん・・・で、血・・・・俺の・・せい・・・。


「・・・ちょっ! 待っ・・・」


ブシュッ!


再び肉が引き裂け血が噴き出す音が聞こえた。男の掌から先がなくなっている。男は意識を失ったらしく何の反応も示さなくなっていた。


男のことを見ていた涼は「はっ」と我に返り再びクレルを止めようと声をかけた。


「ま・・・待てって!」


「なんだ?」


にやにやと愉しそうに男を痛めつけていたクレルが、涼のほうに振り向く。


「わかった! わかったから・・・・、お前の嫁にでも何でもなるから・・・・もう、やめてくれ」


クレルの服にすがりつきながら懇願する。


いくらなんでも目の前でこんなことをされるのは嫌だ。


「ほう・・・やはり人間にはこのやり方が効くということか。面白くなってきたところだが仕方がない、そんなに俺の嫁になりたいというのなら、こんなことをする意味もない・・・・さあ、こんな陰気な場所は出るとするか」


クレルはそう言うと元来た道を戻り始めた。


「おい、この人間たちはどうなるんだ」


涼が動き始めたクレルの背中に声をかける。


「ん、さあな、どうでもいいことだ、行くぞ」


「なら! それなら人間界にこいつらを解放してくれよ、な。お願いだ」


クレルの前に回り込んで解放を懇願する涼。


もしかしたらこいつなら、捕まっている人たちを殺しそうだしどうにか解放しないと・・・・・というか、今動いた時まだお尻が痛かった・・・・。なんか涙でそうなんだけど・・・。


「・・・・・・・ふん。まぁ、いいだろう」


「そっか・・ぁぁああ!?」


ちょっと安心。こいつらが言うことを聞くかは疑問だが・・・・、え? ちょっと待って! なんで抱きつくの!? あれ? そして抱き上げて・・・あぁ、これはお姫様抱っこか・・・・。


「って! やめろ! 恥ずかしいから!」


「断る。ここにいる人間どもは解放してやろう、だが解放したからと言って俺のもとから離れるようなことをするなよ、魔族にとって契約は絶対だ。これを、俺とおまえの契約とみなす。いいな」


「ああ! それでいいから、降ろせ」


「断ると言ったはずだ。聞こえなかったのか? よく聞いておけ間抜けが・・・。部屋に戻るぞ」


いや、なにこれあきらめるしかないの? かなり恥ずかしいんだけど・・・・。

こいつ、絶対にSだな・・・・。


しかし、不本意だが嫁になるしかないらしい・・・・・。


いや・・だけど、それならこいつの寝首をかくことも可能ってことだ。


それに、この城のどこかに居るはずの王を倒せば人間界の侵攻も終わりになるんじゃねぇか?


だったら、むしろこの状況はラッキーだったてことになる・・・か?




「そう思わないとやっていけねぇよ」


涼はぶつぶつと呟きながらクレルの腕の中に収まった。


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