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第6話「俺は男だ!そのはずだ・・・」

「よっと!」


布団から這い出した涼は、裸足で毛足の長い絨毯のようなものマットの上に降りて軽く感動して、その感触を確かめる前に自分の姿を見て唖然とした。


「なんだこれは~~~!!!」


身体の傷がないのは回復系の魔法でも使って、誰かが直してくれたんだと思う。


あれだけの怪我がよくここまで治ったものだ、かなりの使い手だと思う。もはや、ほとんど痛みを感じない。


しかし、そんなことよりも気になることがある。


「なんで・・・・」


涼が寝間着として来ていたのは女もののネグリジュだった。乳白色のやわらかな色合いに、スケスケではないが薄い生地に明らかに上等だとわかるさわり心地、滑らかできめ細かな生地は着たことがない涼にでも(当たり前だが・・・)、高級品だとわかる逸品だ。それをゆったりと身に纏わされていた。


「わけがわかんねぇし! なんでこんなものを着なきゃならんのだ!」


最近のウェルカードの人間は変態になったらしい。いくら治療してくれてもこれはふざけ過ぎている。多分美鈴さんあたりが一番可能性が高いのだが、あのひとがここまでやって来たことはない・・・・・はず。ついに一線越えやがったか・・・。


そう言って涼はこの服を一秒でも長く着ていることは耐えられないとばかりに、とっとと纏装服に換装しようとして魔力を込める・・・・が。


「なん・・・で?」


魔力が集まらない。


全身換装ができないならばと消費魔力が少ない部分換装を行い、一条だけ布を出そうとしたがそれもできない。


「ふん!ふん!」


腕を振りながら力づくで「出ろ~」とかやるが、全く反応がなかった。


「もしかして・・・・、俺・・・魔力が無くなったのか?」


死にかけたことが原因か・・・・、いやだけどそんなこと・・・聞いたことが・・・・・。


・・・・・。


・・・・・・・・。


「・・・ん、考えててもわからん! もっと詳しい専属の奴に聞くしかないな」


そう結論付けた涼は身体を解しながら、思考を切り替えた。




キィィィィ・・・


とりあえず部屋を物色しようと歩き始めた時、扉が開いた。


扉が開く音に気がついた涼は、その方向を凝視する。


そして、開ききった扉の前に立っていたのは1人の男だった。

190cmはあろうかという長身に切れ長の瞳、短い青髪を軽く遊ばせている、西洋の世界から抜け出してきたような印象だ。だが、その顔つきは理知的で整った表情をしているが、目が何を考えているのか分からないような怪しい青い輝きを放っていて、はっきり言って近づきたくはない人物だ。


扉を開け放った男は涼のことを観察しながら無言で涼に向かって歩いてくる。


「な・・・・なんだよ・・・」


何なんだよこいつ。


涼が若干身を引きながら警戒していると、男はこちらを見下ろしながら涼から2mほどの距離で立ち止まる。


「ほぉ、似合ってるじゃねぇか」


は?なんだこいつ!


「うるせー!俺の趣味じゃねぇ!」


男は、「くくくくくっ」と笑ってまるで意に介さずに笑う。


「ここどこだ!そしておめぇは誰だ!! ウィザード社にお前みたいのは見たことねぇぞ! どこの所属だ!」


こいつ、なんかムカつく!


男は涼の言葉を気にした風もなく、手を横に広げてやれやれといったような態度を取る。


明らかに人を小馬鹿にした態度である。


いちいちムカつくやつだ。


「ここは魔界だ、お前らの住んでいる人間界とは次元の違う世界だ。そしてここは、王都ラディスオン帝国の城にある俺の私室だ。あと、「おめぇ」ではなく、バストマ・クレルという名がある、クレルと呼べ」


すげー上から目線で話してきやがる!


いや、それよりも魔界!? ここは日本・・・人間界じゃないのか?

ちょっと待て、ということは・・・なんだ、あれか、あれだよ。・・・俺は捕まったということなのか? いや、けど・・・・しかし、状況が状況だったから嘘だと断言することもできないし・・・・、とりあえずは様子見か?


「・・・・ここがどこかは分かった。で、なんで俺はここにいるんだ?」


「俺がさらってきた。人間界になかなか強い面白い女がいると聞いていたのでな、観察しに行ったわけだ。それで、正面からやりあうと面倒くさそうだったから、不意を打たせてもらったというわけだ。だが、驚いたぞ? 女だと思ったら男だったのだからな、しかし・・・」


くそっ! やっぱりこいつは魔族か・・・、しかも俺よりも強い可能性のある。


けど、これだけは言わせてもらおうか!


「俺は女じゃねぇ! 男だ!」


みんな一度は間違えやがるからな、確実に男だと言っておかないとうざい奴が多いんだよ、こいつがどうかは知らないが、雰囲気から絶対めんどくさいことになりそうだ。


クレルは自分のセリフを遮られたことに然して気にしたようでもなく、むしろ楽しげに口元をゆがめた。


「くくくくく、まだ気が付いていないとはおめでたい奴め」


「あぁ! 何のことだよ!」


明らかに俺のことをバカにしていやがる! こいつ!


「なに、貴様が男だと気が付いてな、それが気に食わなかったからつい最近部下が禁制の秘薬を押収したと言っていたことを思い出してな、使ってみたんだよ」


「薬? なんのことだ・・・」


薬、しかも禁制のだと? なんだ? 支配系のものか? ・・・それか? それなら俺の魔力がないことにも合点がいく。ならば、魔力封じ薬か、俺の意志に作用した支配系の魔力封じ薬とみて間違いはなさそうだ・・・・。




「なに、SRS薬。簡単に言うと性転換薬だな」




「・・・・・・・は?」



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