第2話「天女のうわさ」
唐突であるが俺の魔法は纏装魔法という魔法である。
俺たちが使う魔法は大別すると「属性魔法」と「心象魔法」の2つに分かれる。
属性魔法は誰でも使える魔法で、火・水・風・土とその派生形である。これらはファンタジーとかでよく見るような魔法をイメージしてくれればいい、それを言霊・呪文などといった言葉と共に使うのが属性魔法だ。
一方で心象魔法は一定以上の魔力を持っている人が、自分の心の存在意義を見出した時に発現できるといわれる固有魔法ともいわれる。発現する人によって能力は様々だが、似たような能力はあっても同じ能力は存在しないといわれている。いまだによくわかっていない魔法ではあるが属性魔法よりは格段に強い力を持ち、魔力効率も高いので魔法使いたちの最終目標とも言われている。
そして俺が使うのは心象魔法の中での分類では、魔法で作りだした魔法衣を身に纏って戦う「纏装魔法」だというわけだ。
俺はいま上空15000mを飛行中だ。
飛行の魔法は風の中位魔法だが俺の場合は纏装魔法で飛んでいる。
風の風障壁を前面に展開して風圧を軽減しているが、それでもかなりの風が身に纏っている纏装をたなびかせる。
俺の纏装は白に銀のよくわからない刺繍(最初に発現させた時から付いていた、意味は不明)の入った布だ。纏装魔法は一緒に武器なども現れることが多いが俺にはなかった。
布はまるで重力が関係ないかのようにふわふわと浮かびながら体に巻きついている。纏装魔法は発動されると、今まで来ていた洋服は魔法少女のように消えてなくなり(もちろん魔法解除したら後で出てくる)、纏装のみを纏うわけだ・・・・。
つまり、俺は・・・・最初は全裸に布のみ、という変態街道まっしぐらの纏装を纏っていた。
ふざけるなと、俺は断じて露出狂でも変態でもない!
今ではなんとか見れるような纏い方ではあるがな・・・・。外見はインド人の衣装というか、布が浮いているから天女の衣装に近いのが妥協点だったのが嫌なところだな・・・・。
さらに女顔のせいで、どいつもこいつも天女ってマジで呼んでくるし・・・。
「なんだよ! 白の天女って! 見たままか! それに男どもは告白してくる奴もいるし! 死ね! うざいわ!」
思い出したらムカついてきた・・・。
・・・・・落ち着こう。
しかも身内だけでなく一般人にも天女で認知され始めているし、もはやあきらめるしかないのか・・・・orz
仕切り直して・・・というわけで纏装の浮遊力を使って飛んでいるというわけだ。実際に風の浮遊魔法も使えるが、纏装魔法のほうが断然効率いいしな。
で・・・ちょっと長い回想というか説明をしている間に今回の海上防衛地点に着いたか。
~とある自衛隊員side~
国から魔物接近の緊急警報が出て自衛隊に出撃命令が出た。
今は戦時中といってもいい状況なので太平洋側は特に警備が厳重で、すぐに魔物のやってくる予想進路に軍艦が集まって来た。
自衛隊旗艦の甲板上。
「やばい、トイレ行ってきます」
「またかよ、さっきいったばかりだろうが・・・」
隣にいた自分より2つくらい年上のさっき友人になった人に襟首を掴んで引きとめられました、ちょっと苦しいです。
「い、いや緊張しちゃっ・・・してしまって」
「まぁそうか、お前3日前に異動で配置されたばかりだから今回が初陣だっけか」
「は・・・はい、しかも自分自衛隊は戦わないと思っていましたし・・・」
だって、日本の自衛隊は戦わないし! せいぜい災害救助くらいだと思ったから入ったのに!
「それは甘かったな、今じゃ入ることはできても出ることは難しいからな」
「そうなんですよね~」
世界が魔物との戦争状態に入った今戦力を高めるのは必須だからやめれなくなっちゃったんだよ~
「怖いんですけど・・・・、魔物ってどんなですか?」
「ん~、よくわからん」
「えっ!? わからないですか?」
「ああ、俺が戦闘に参加したのはこれで3回目だしな、前回は魔法使いたちが殲滅してしまったんだよ、だからわからん」
「そうなんだ・・・・、なら平気かな」
はぁ~~よかった~。戦ったら死ねる自信があります。
「そうでもないぞ、案外魔物と戦った戦闘も多いらしいからな、今回は戦うかもしれん」
「やっ、やめてくださいよ!」
「そういえばよ」
「は・・・はい、なんですか?」
「今回の作戦の旗艦はこの艦らしいんだ」
「はい」
「わからねえか?」
「え?」
「あ~もしかして、それって魔法使いの人たちが現れるか持ってこと?」
突然横から快活な女性隊員が会話に割り込んでくる。
「ああそうだ、生で魔法使いを見れるかもしれないぞ」
「私見たことないんだよね~、魔法使い。もう4回くらい戦闘経験あるんだけど、いつもヘリコプターとかで来て、お偉いさんと話して、行っちゃうから見れなくてさ~。テレビでどんな人がいるかは聞いたことがあるんだけどな~」
「え・・えっと、魔法使いの方がこられるんですか?」
「多分な」
「そうなの! 君、魔法使いってどんな人がいるか知ってる? ねぇ、ねぇ」
ちょっ、この人すごい近いです!
「あ・・・いえ、詳しくは・・・」
「そうよねそうよね!」
「また始まったか、このおせっかいが(ボソッ)」
「あのね、魔法使いには名持ちと名無しがいるの。魔法使いの彼らはその辺気にしてないみたいだから、私たちが勝手につけた名前なんだけどね! それで、私たちみたいに普通な平隊員みたいな、一般魔法使いは名前はなし! だけど・・・・一騎当千! まさにそう呼ぶべき強さを持つ人は名前があるの! 勝手につけた名前だけど、特徴をとらえているのよ!」
「そ、そうなんですか・・・」
「そうなのよ! そのなかでも『虹の翼』とか『巫女』とか『召喚女』とかは有名どころよ! けどけど、私の好きなのは何と言っても『天女』! 他の3人は遠目の写真しかなかったんだけど、『天女』だけは全身の写真があって、もうなんだろう、写真を見ただけなんだけども、ビビット来たわ! すごいかわいいのよ~、きれいじゃなくてかわいいってのがポイント高いわね。あ~今回来てくれないかしら~」
そう言いながらうっとりとする女性隊員。
「あ、あの~」
「気にするな、あいつはいつも、ああなんだよ。放っておけばそのうちに収まる」
「は、はぁ」
そういうものなんだと思おう。なんか近寄りがたい雰囲気が出ているし、というか近寄りたくないです。
「あれ?」
「ん? どうした?」
「いや・・あれなんでしょうか?」
そういって、先輩の後ろの空を指差します。
「あん?」
なんか白い鳥? みたいなものが飛んできます。すごい早いです。戦闘機みたいな速度が出てる気がします。なるほど白昼夢か・・・・。
「こっちに来るな」
「あ、の~もしかして敵、とか・・・」
「かもしれないな」
「え、それやばいですって! てーか、うおぉぉぉこっち来た! なんか来たたたた」
「落ち着け、多分魔法使いだろう。・・・・多分」
「ちょっ!」
なんて話しているうちに来たー! 速い! ん? 人?
「あ、ああああああぁぁぁぁぁああああ!!!!」
うるさ! 女の人フリーズしてると思ったらいきなり叫び出しましたよ。それより、空から飛んできたこの人? お伽話に出てくる天使みたいだ。
白い羽衣みたいなのを羽織ってる小柄な女の子、大きなライトブラウンの瞳にふわりとした丸い顔、身長も170cmのぼくより少し低いくらい、黒いショートカットの髪の毛は活発な感じに整えてあるから男の子に見えなくもないけど、こんな可愛い子が男の子のはずがない!
その見た目天使は、僕たち3人の前に歩いてきました。
「えーと、もし知っていたらでいいんですけど。この船の指令室ってわかりますか?」
なんで、指令し・・・・。
「はい! わかります! 案内します! 私が! その・・その前につかぬことをお聞きしますけど魔法使いの方ですよね」
・・・つの場所をって、女性の隊員の人対応早いな。
「あ、失礼しました。ウェルカード社日本支部所属の魔法使いです。分けあって名前は言えませんが、周りでは『天女』の魔法使いで通ってるから、呼ぶ時は『魔法使い』か『天女』でお願いします。もしかしたら知ってるかな?」
うわ! 出た! テレビでしか会えない有名人に会うってこんな気持ちなのかもしれません。声は思っていたより低くて、ハスキーボイスに入る一歩手前くらいだけど、なんかしっくり来るような気がします。
「し、知ってます! わ、私ファンなんです! あなたの! あの、握手してもらってもいいですか!」
うお! 女性隊員の人泣いちゃってるよ、それだけうれしいのか、けど確かにこの天女さんってオーラというか存在感がすごいから、感動しちゃう気分にはなりますね。
「ん、いいですよ。俺もこんなきれいな人と握手ができてうれしいですし」
お・・・オレッ子だーー!! 僕は少しオタクが入ってるけど、このミスマッチ感がいわゆる萌えってやつなのか? なんか初めてわかった気がします。
「ううぅぅぅ、私もうこの手一生洗わない!」
「ははは、そんな大げさな。では案内してもらってもいいですか?」
「あ、は・・はい! すいません、恥ずかしいところを・・・」
「いえ、気にしてないですよ」
そう言いながら並んで歩いて行ってしまった。
僕にはあんなに存在感ある人と一緒に行く勇気はないから助かったと言えば助かったかもしれません。ああ、そういえば・・・。
「人って飛べるんだな~」
「ああ、まさかこんな大当たりを引くとは思わなかったな」
確かにそうですね。というか居たんですね、完全に忘れてましたよ。