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第10話「二つの2択」

「こんなもんかな・・・・」


完璧だ。・・・・・とは言い難い。


さっきとはほとんど変わっていない。身体の周りを白い銀字の刺繍の入った羽衣が漂うようにまとわりつき、素肌を見せていたのだが、今は!


その素肌に白い布を巻きつけているから大丈夫! なんか白スク水を着た天女にしか見えないとかそんなことは気にしない!


気に・・・しない・・・。


涼はしゃがみこんで打ちひしがれた。


何、この2択?


白スク水天女か、ちら見せ大サービス天女かっておかしくない?


もう・・・悪意を感じる・・・。なぜ俺の魔法なのに衣装だけは俺の意志どおりにならないんだよ・・・・。


それに、いつの間にか自分のこと天女って連呼してるし・・・・。


いや、だって女になったら、男の時に感じていた違和感がなくなってどこからどう見ても天女だし、だからもう天女でいいかなって思って・・・・って、俺、誰に弁解してんだよ・・・。


しばらく不貞腐れていたが、気持ちを切り替えたらしい涼は立ちあがってクレルに話しかけた。


纏装魔法はもちろん白スク水着用タイプだ。元のだと不意にいろいろと見える。なんか見えてはいけないところまで見える。だからこれは妥協策だ。


「そういえば俺の部屋はどこだ?」


そうじゃん! 自分の部屋にさえ行けばとりあえず誰かに見られるようなことはないじゃないか、早く移動するべし!


とか考えての質問だったが、そんな涼を見て楽しげに口元をにやけさせながらクレルは口角をあげて答える。


「俺と同じ部屋に決まっているだろ、もう婚姻したのだからなぜ部屋を分ける必要がある? これからは、食事も、風呂も、寝るのも、いつも一緒だ。うれしいだろう? 俺は楽しみでしょうがない」


クレルはにやにやと笑いながら本当に楽しそうに涼のことを見つめる。


「・・・・・は?」


・・・う、うれしくねぇ~~!!


何がうれしくて男と同棲生活せにゃならんのだ!


食事、・・・は別に大丈夫だ、大したことはない。


風呂、・・・なぜ? いやいや一緒に風呂とか考えられない。

どんな風呂かは知らないけどクレルの後ろにメイドさん? 侍女さんかな? が、居るということは、この城の風呂は前に小説かなにかで読んだことがある感じの貴族の風呂の入り方、寄ってたかって身体を洗われるとかかもしれないようなものかと思ったが、そのほうがまだましだ!

実際どっちも嫌だけど、どちらか選べと言われれば間違いなく侍女さんたちの視姦プレイと強制洗浄のほうがいい。

いや、むしろ1人で入りたい、女だからとかではなく、俺は日本人ですから、シャイで有名な日本人ですから。


それに最後に寝るって、・・・寝るって! 寝るだけじゃ済まないだろ! すっげえ嫌な予感がする・・・、だって今目の前のこの男すげえ良い笑顔なんだもん。断固拒否したい、後ろの二つは断固拒否したい。

大事なことなので2回言いました。

じゃなくて!現実逃避したいな~。


涼は真っ赤になって首をぶんぶん振る。


無理!なんか無理!


そもそもまだ童貞の俺がなんでこれから先処女を散らしそうになるなんて想像してるんだよ・・・・いや、そうなるかは分からないけど・・・・、って考えるだけで気持ち悪いわ!


・・・・もう考えるはやめよう。


心持ち、というか明らかにクレルから距離をあけていく涼は、いろいろと考え過ぎて湯気が出るかのように真っ赤な顔をして俯いた。


「それと・・・」


「・・・・・ん、なに?」


クレルが続けて何かを言う。


「涼はこれから『俺』と言うことを禁ずる。女なのにそんな男言葉など似合わない、口調も直していけ」


クレルは、それはもういい笑顔で涼のことを見ながら言う。


「嫌だ。俺はあくまで男だ! そんなことまで言うことを聞く義理はない!」


「くくくく、そんなこと言っていいのか? 涼、お前が口調を変えるだけで同族の人質が解放されるのだぞ?」


な・・・・、卑怯だ!


「くそ! わかったよ、変えればいいんだろ! 変えればね!」


「そうだ、いいかげん理解しろ。お前に拒否権などない。全く人間というのは学習能力ないのか・・・・、まぁ扱いやすくはあるがな」


そう言って、笑うクレル。


ぐうぅぅぅぅぅ。


うぜえええええ!


絶対こいつとなんか相容れない!


死ね!


「・・・・ばーか」


ぼそっと言ってみた。


「なんだ?」


き・・・聞こえたーー!?


やばい、なんか不機嫌すぎる気がする。人質を殺すとか言われるかもしれない、どうする、どうする!?


「え・・?あ~~、その~、あれだ・・・・、なななんでもない! 特になんでもないから、そうだ! 俺・・・・じゃなくて、えっと・・・わ・・わたし? はちょっとあっち、散歩・・・そう、散歩言ってくるから!」


よよよし!


なんか支離滅裂だけど、よし!


行きたくないけど散歩行こう!


すばやくクレルに背を向けて扉に向かう。


この城を探検しよう。


今は一刻も早くこいつから離れたい!


だから大切だよね、散歩。


どのくらい大切かっていうと、命と貞操の危機の次くらいかな・・・・。


そのくらい切羽詰まってる感じだ。


目の前のにやけ顔(・・・・)の男の存在を今だけでも忘れるには、すぐさま探検に行く必要がある。


・・・・・・ん?


にやけ顔?


振り向く涼。


真顔のクレル。


いやな間。


「気のせい! じゃっ!」


シュタっと手を挙げた涼はスタスタと扉の方向に歩いていく。


「どこに行くんだ? 涼」


名前で呼ぶな~!


相変わらず艶っぽいんだよ!


「散歩だよ、さ・ん・ぽ」


クレルの顔を見ると嫌な予感がしてたまらないので振り向くこともなく歩き続ける。



コンッコンッ


涼が扉を開ける前に誰かによってその扉がノックされた。



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