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砂原での遭遇

ディルがソフィアと共にハンスの家の前まで行くと、玄関の外でハンスが立って待っていた。

「すみません、お呼びしてしまって・・・」

「いや、かまわない。どうしたんだ?」

ハンスはドアを開けると、ディル達を家の中に迎え入れた。

「どうぞ、お座りください。」

ディルが椅子に座るとハンスは口を開いた。

「実は、先程のことなんですが・・・」

「ああ、クレイワームのことか、どうなったんだ?」

「それが・・・」

ハンスは歯切れが悪そうに話し始めた。


「エミリア、もうちょっとつめてくれよ。」

「もう、押さないでよ。」

ディルのあとを追うようにしてやってきたジークとエミリアは扉を少し開けて中の様子を伺う。

ディルの背中越しにハンスが見えた。

「今日偵察に向かった、惑星中央政府軍と連絡がつかないんです。本部にも確認を取ったのですが、そちらにもまだ連絡が行ってないようで・・・」

「う~む。」

ディルは考え込むように腕を組む。

「こんなことは今まではなかったのですが、申し訳ありません。」

ハンスが顔をゆがめ、すまなそうにした。

「その偵察の場所はここから近いのか?」

「え、あ、はい。ここから20kmの地点です。最後の連絡が入ったのもそこだと・・・。」

腕組みをとくとディルは

「明日、夜が開けたら俺がいって見てこよう。」

「え、しかし・・・。」

「どうせ、ここに足止めをくらって暇なんだ。なぁにちょっくら様子を見てくるだけさ。」

ハンスは少し迷ったが、

「わかりました。後続の偵察隊がくるにしても時間がかかるでしょうし、すみません、お願いします。」

「おうよ、そうときまったら・・・」

そういっておもむろに立つと扉のほうに歩いていく。

「もう、どこ触ってるのよ、エッチ!」

「しかたないだろう?よく聞こえないんだから・・・」

がちゃり、

「「わぁ」」

いきなり扉が開いて二人は家の中に転がり込んでしまう。

「いったーい」

「いつつつつ」

ディルはそんな二人を見下ろしながら、

「はー、ったくお前達は仲がいいのか悪いのか、とにかく今聞いての通りだ。明日は早いぞ!」

そういって家を出て行く。

「おら、とっとと帰るぞ!」

「お邪魔しました!」

ジークは急いでディルのあとを追う。

「お、お邪魔しました。あ、ちょっと待ってよ!」

ぺこりとお辞儀をするとエミリアもジークのあとを追っのだった。


次の日、朝食を済ますとジークたちは、トラックに乗って夕べ、ハンスが言っていた地点に向かった。

「ジーク、準備はどうだ?」

「ああ、ばっちりさ!」

ライデンのコクピットの中でガントレッドを握りしめ、ジークはマイクホンでディルに返事を返した。

モニターに映し出された景色はどこまでも広がる砂原だった。

「しかし、こんな土地が後数日したら一面緑になるなんて信じられないな。」

砂嵐と共に通り過ぎたクレイワームが土地を耕し、そこに雨が降る。その豊かな大地に様々な植物が芽を出し、ゆくゆくは多くの実りをもたらす。そこにハンスたちは目をつけてこの地を開拓したのだ。

「今回でハンスたちは三シーズン目。何事もなければいいんだがな・・・」

辺境を開拓することは多くの危険が伴っている。未開の最前線であればなおさらだ。そのため、そこを本当に開拓していけるかどうかを判定する期間が決められており、三回同じシーズン、コロニーを維持し、そこのコロニーだけで脅威を取り払うことが出来た場合、正式にフロンティアコロニーとして認められ、名前をつけることが出来る。名前がつけばそれは安全の証となり、来る人も増えてコロニーはどんどん大きくなっていくのだ。

「ジーク、何が起こるかわからない。油断するなよ。」

「わかってるって。でもこういうのって本来はハンターの仕事じゃないの?」

とジークはエミリアに話を振ってみる。

「だからついてきたんじゃない。それにTBはパーソナル認識があるから、わたしじゃあ、そのTBは動かせないわ。ま、何かあったらわたしのハンターとしての知識を披露するわよ!」

運転するディルの後ろでエミリアは胸を張った。

「そろそろ着くぞ、二人とも、おしゃべりは終わりだ。」



ジークたちが予定地点に着くと、そこにはクレイワームの死骸が転がっていた。

「こ、これは・・・」

その数は30を軽く超え、みんな声を失う。

「一体何があったんだ?!こんなことは聞いてないぞ・・・」

ディルはハンドルを握ったまま窓の外を見た。

「ちょっと辺りを見てくる。じいちゃんとエミリアはそこにいてくれ。」

「あんまり遠くには行くなよ。」

「わかってるって。」

ジークはライデンを操作して荷台から下りると、近くにあったクレイワームの死骸の傷口を確かめた。

「ライフルや剣で出来た傷じゃないみたいだ・・・なんかこうギザギザなもので切り裂かれたような感じだ。」

「それって、何か他の生物に襲われたって事かしら・・・」

「さぁ?あ、あそこにTBが!」

ジークは半壊したTBに近寄った。手足は破壊され、コクピットは切り裂かれていた。その亀裂部には血が大量に付着している・・・おそらくこのTBの操縦者は無事ではすまないだろう。そして視線を肩に移すと惑星中央政府軍のエンブレムが描かれていた。

「こ、これは惑星中央政府軍のTBだ!」

ジークの言葉にいやな予感がディルの頭によぎる。

「あ、こちにももう一体あった・・・駄目か・・・こっちもやられてる・・・」

ジークは辺りを見渡すが、三体目は見当たらなかった。

「じいちゃん、もう少し探す?」

「いや、とりあえずその二体を荷台に載せるんだ。」

ジークは最初に見つけたほうを抱え、

「よっと。」

と荷台の置くに押しやる。そして二体目に近寄ったときだった。


ビービービー


緊急のアラートが鳴り、レーダーに生命反応を示す赤い点が数個、表示された。

「こ、これは・・・」

ジークはモニターに目を移し、目を見開いた。

ギチギチギチギチ

目の前にTBの腰の高さくらいはあろう大きなサソリが数匹、尻尾を高く振りかざし、両手についた鋏をすり合わせながら威嚇している。

「ス、スコーピオン?」

この辺境で生きる限り、そこに生息する危険生物は頭には入っている、しかしスコーピオンは水辺に生息していて、こんな砂の多いところで生息しているわけがない。もっともここ近辺での確認は報告されてはいないはずだ・・・

「どうした!」

ディルの声にジークは我を取り戻した。

「じいちゃん、スコーピオンだ。今映像を回す。」

モニターにまわってきた映像を見てディルはうなった。

「なんで、こいつらがここに?しかもちょっと色が違うのか?」

本来赤いはずのハサミの部分が紫色になっている。

「ヴァイオレット!?こいつらが、なんで!」

後ろから覗き込んだエミリアの顔が険しくなる。そして、

「ジーク、いいからすぐに荷台に戻るのよ!」

「え?でもこいつも荷台に乗せないと・・・」

「そのままだと、あなたもライデンごとスクラップになるわよ!」

「わ、わかったよ・・・」

エミリアの剣幕におとなしく従うジーク。

しかし、そんなジークに一匹が踊りかかった。

「うお!」

なんとかそれを転がるようにしてジークは避けた。紫色のハサミがジークの代わりに脇にあったTBを挟み込むとそのまま紙の様に引きちぎった。

「なんて鋭さなんだ!」

ジークはたまたま近くに落ちていた、おそらく今切り裂かれたTBのものであろう剣を拾い上げ、スコーピオンにむかって構えた。

「あんの、バカ!何やってるのよ!」

それをモニター越しに見ていたエミリアは運転エリアの後部扉を開けた。

「どこに行くんだ?!」

ディルは驚いてエミリアに声をかける。

「ディルさん、急いでここを離れて!」

「だが、ジークがまだ・・・」

「いいから、ジークはわたしに任せて!」

「おい!」

ディルの制止の声にも振り返らず、エミリアはトラックの外に躍り出る。

「しかたねぇ、ここはエミリアを信じるか!」

アクセルを踏み込んでディルはトラックを発信させる。

トラックが動き出したのを確認すると、エミリアは胸元に隠してあったペンダントを取り出し握り締めた。

「来て!ローエン・シュツルム!!」

そして、エミリアの体が真紅の光に包まれてた。


「どりやぁあ!」

ジークは襲い掛かるスコーピオンの攻撃を何とかかわしつつ、そのハサミに切りかかる。

カキィーン

しかしジークの剣は乾いた音を立てただけで、傷一つつけることなくはじかれてしまった。

「やっぱり剣じゃあ駄目か。」

ジークは剣を投げ捨てると、ライデンの背中に納められいる工具からひときわ大きくそして赤茶色にさび付いたレンチを取り出した。

「こっからが本番だ!」

ジークはそれを肩に担ぐ様に構える。

ギチギチギチギチ

急にジークの纏う雰囲気が変わったのを察したのか、スコーピオンもじりじりと距離をつめつつも攻撃をためらっている。

しかし、業を煮やしたのか、他の一匹がジークに襲い掛かった。

「ここだ!」

ジークは襲い掛かったハサミをレンチではさむと

「ブレイク!」

その勢いを利用してハサミごとサソリの腕をねじ上げた。

キシャァァ!

叫び声と共に、ハサミが根元からちぎれる。しかし、ジークの攻撃はそれでは終わらない。

そのままハサミをスコーピオンの眉間に突き刺したのだった。

ギシギシギシギシギシ・・・バタン。

肢を痙攣させ、そして尾が力なく倒れた。

「さて、どうするかな・・・」

ジークは周囲に視線を戻すと自分が囲まれていることに気がついた。

仲間を倒され、戦意喪失すると思いきや、逆に煽る形になってしまったようだ。

じりじりと包囲を狭めながらジークにスコーピオンはにじり寄っていく。

と、いきなり目の前の一体が炎に包まれた。

「な、なんだ?」

次々に炎が降り注ぎ、砂煙を上げる。

上を見上げると、大きな影が空をさえぎるようにして宙に浮いていた。

「ド、ドラゴン?!」

よく見れば、真紅体におきな翼をもったドラゴンだった。

どうやら助けてくれるらしい。

「誰だか知らないけど、助かるぜ!」

ジークは外部スピーカーでお礼を言うと再びスコーピオンに向かって構えた。

しかし、ドラゴンはライデンの肩をつかむと再び飛翔した。

「お、おい?!」

いきなりのことでジークが手足をじたばたさせると

「ジーク、バランスが崩れてうまく飛べないから動かないで!」

ジークはその声に驚いた。

「お、お前エミリアなのか?」

動きを止めたジークを見て

「飛ばすわよ!」

真紅のドラゴンは速度を上げたのだった。








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