マカロニが彼女
僕の彼女はマカロニだ。
マカロニみたいな彼女、じゃない。
マカロニが彼女なんです。
ことの発端は、僕が夕飯を作ろうとマカロニサラダを作っていた時のことだった。
両親は仕事で夜までいないし、ご飯も食べてくる。中学一年の妹は学校から帰って来てからずっと部屋で友達と電話で喋っている。
「あ!!」
ボウルに茹でたマカロニを入れようとしたその時。
ぽろっ。ぽてっ。
マカロニが一つ、床に落ちた。
拾おうとしたら何やら"うにょん"と動き出した。
「え、む、虫!?」
やがてマカロニは直立した。
「私、虫じゃないわ、マカロニよ。」
ええ・・・。
手足が生え、目も口もある。
しかも喋っている!
「喋った!?」
「あなた、私のこと落としたでしょ?」
「ご、ごめんなさい。」
何マカロニに対して謝ってんだ僕!
「まぁいいわ、責任取ってあなた、私の彼氏になってよね。」
そんな、仁王立ち(?)で言われましても・・・。
チラッとボウルの中を見たが、他のマカロニを見ても手足は生えていないし、
目も口もない。話すこともない。
「ちょっと、何よそ見してるのよ。
話、ちゃんと聞いてた?」
「え?でも、僕人間だし・・・」
「あら、私じゃ不服だって言いたいわけ?」
何故か口答えしてはいけないオーラがこのマカロニから漂っている。何故だ、何故なんだ。
「いや、そうじゃないけどさ・・・マカロニがもし付き合うんなら(?)
マカロニはマカロニ同士の方が良くない?」
「マカロニの男に飽きたところよ」
何その、UFOの地球の男に飽きたところよ、的なフレーズは。
「あなた名前は?」
「カンタ」
「カンタ君ね、わたしはタルトよ。」
意外と可愛い名前だな・・・。
「カンタ君、そんな一生付き合ってなんて言わないわ。人間の彼女ができるまででいいわよ。」
「まぁ、それなら・・・?」
って、本当は生まれてこの方15年間、彼女なんて一度も出来たことないけど・・・。
でも、マカロニのこの子に負けるなんてさすがに悔しい!
ほら、彼女できた時の練習?みたいな?
いや、さすがにマカロニに悪いかな・・・。
「私で練習したらいいじゃない」
「わっ!?君って心まで読めるの!?」
「使えないわよ。カンタ君、顔に出やすいってよく言われない?」
「う・・・確かに友達に言われた。僕ってそんな分かりやすいかなぁ・・・。」
「それって凄くいいことよ。
カンタ君、浮気とかしなさそうだし。」
「何でそんなことタルトちゃんに分かるんだよ?」
「んー、なんとなく?真面目そうだから。」
「女の子たちに真面目でつまらないってよく言われるんだ。」
「あら、その子たち分かってないのね。」
「むっ、何がだよ。」
「真面目で素直なんて最高じゃない。」
「そん・・・。」
そんなことない、と言おうとして止まる。
タルトがこちらをじっと見ていたからだ。
「ね?」
「うん。」
にぱっと言われ、カンタは満更でもなさそうに人差し指で頰をかいた。
その時、妹の部屋の扉が開いて中から妹が出て来た。
ガチャ。
妹は僕を見るや否や怪訝そうな顔でこちらを見ている。
「ちょっとお兄ちゃん!さっきから何一人でぶつぶつと喋ってるのよ!お兄ちゃんも電話してるのかと思ったらしてないし!」
「僕さ、マカロニの彼女ができたんだ。」
「は?お兄ちゃんキッモ!そんなこと言ってるから彼女できないんだよ!
ご飯、できたら呼んで。」
バタンッと再び扉が閉められた。
「妹さん、気性が荒いわねぇ。」
「ヤンキーっぽい友達が多いみたいだから・・・。はぁ・・・兄ちゃんの気も知らないで。」
「苦労してるのね。」
「分かってくれる?」
「ええ。」
しみじみ。
それから数日後。
タルトはしなしなと茶色くなっていた。
そして、パタリと倒れたまま喋ることも歩くこともなくなった。
「タルトちゃーん!!!・・・
やっぱり君はマカロニだったんだね。いや、分かっていたさ。
マカロニでも彼女になってくれて嬉しかったよ!君といられて楽しかったんだ。」
ガチャ。
「うるさいお兄ちゃん!!」
「だって、僕のマカロニが・・・。」
兄がうるうるとした目でこちらを見るので、
さすがに心配になったようだ。
「う・・・。そんな捨て犬みたいな目で見ないでよぉ・・・。そんなにマカロニ食べたいなら買ってきてあげるから!」
「しくしく・・・。」
カンタはしゃがんだまま手にしなびたマカロニを乗せている。
「もー!!マカロニが一体なんだって言うのよー!!!」
兄とマカロニ。
その異様な光景を目の当たりにした妹は、頭を抱えて叫んだのであった。




