短編:爪垢覚醒(ネイル・バースト)〜虚数空間の残香編〜
汚いです。
嫌な方はブラウザバック。
おヶーな人はようこそ
すんっ んはぁー すん。
悪くない。
今日も今日とて臭いな
それがいい。
ワタクシ田奈甁カイトはこの「爪垢」すなわち爪の間の匂いがとても臭くて気に入っている
さてと、今は数学の授業であったな。
「田奈瓶……。貴様、この微分方程式の解法、どこで間違えたか理解しているのか」
放課後。ワタクシ田奈甁はいつものごとく赤点を取り、補習を受けていた。言うなれば暇つぶしである。黒板には、まるで複雑に絡まり合った血管のような数式が並んでいる。
担任の郷田(数学担当)が、チョークを持った手でワタクシを指差した。
「……計算ミス、でしょうか」
「違う。貴様の思考には『美しさ』が足りん。もっと本質を、極限の先を見ろと言っているんだ!」
郷田が黒板を叩くたびに、チョークの粉が舞う。
だが、ワタクシが求めているのは、そんな無機質な粉末ではない。
ワタクシはそっと、右手の小指を薬指の爪の隙間にねじ込んだ。
今日の収穫は、昼休みに食べたカップ麺の油分と、午後の体育でかいた汗が絶妙な比率で配合された、黄金比の逸品。
そうっっ!それはまさしく、体育のマラソン終わりに飲むポ〇リスエットである。
「先生……。数学の真理は、案外身近な『隙間』に隠れているものですよ」
「何だと……?というか貴様は何を言っている、?」
ワタクシは確信を持って、その指先を鼻腔へと導く。
数学的超嗅覚
「すんっ……んはぁーーーー……ッ!!」
刹那。
脳内のニューロンが爆発的に結合し、カオス理論に基づいた複雑な異臭の連鎖が、数式の羅列を立体的なヴィジョンへと変えていく。
鼻を抜けるのは、湿った古紙と、数日間放置された牛乳パックの底が「特異点」で出会ったような、次元を超えた悪臭。Your Name?運命である。
「……見えます。解が見えますよ、郷田先生。この関数の不連続点……そして、その先にある無限の深淵が」
収束する匂艶闘気
「すん。」
最後の一嗅ぎで、ワタクシの脳は量子コンピュータすら凌駕する演算速度に達した。
「喰らえ、郷田先生。……これがワタクシの導き出した、究極の『解』だ」
ワタクシは指先に纏った、目に見えるほど濃密で粘り気のある臭気を、郷田の顔面に向けて解き放った。
「な、なにをすr……!? ぐ、あああぁぁぁ……ッ!!」
郷田が叫び声を上げ、のけ反る。
彼の脳内には、今、凄まじい情報量が流れ込んでいるはずだ。
それは、何万回も使い回された雑巾の絞り汁を積分し、さらに排水溝のヘドロで微分したような、絶望的な臭いのベクトル。
「こ、これは……っ! 非ユークリッド幾何学的な……いや、もはや論理を拒絶するほどの……圧倒的な……ドブの匂い……っ!」
「先生ェ。数学において、ゼロは何を掛けてもゼロですが……この匂いは、すべてを塗りつぶす無限大(∞)です」
郷田は白目を剥き、数式の書かれた黒板に頭を打ち付けて崩れ落ちた。
その手からこぼれ落ちたチョークは、床の上で放物線を描き、静かに止まった。
ワタクシは満足げに鼻を鳴らし、爪の間の「残り香」を名残惜しそうに確認する。
「計算終了(Q.E.D.)。……次は、もっと複雑な『公式』を作り上げるとしましょう。
(完)
いかがだったでしょうか?
この話を読んだ、2人に3人は爪垢の匂いを嗅いでいることでしょう。また感動で涙が止まらないはずです。
ハンカチをどうぞ。差し上げます。
いつか立派な紳士になって返してください。




