9.分類
魔力による身体能力の強化。
魔力噴射による身体制御。
魔力による物質強化。
魔力による反射神経の向上。
クラルスの説明の結果、クラルスが戦闘で使っていた魔法は、この四つに分類できた。
つまり、クラルスは、
『魔力で身体能力を強化』して動きの幅を増やし、
『魔力の噴射で身体を制御』することで常に不利を消し、
『魔力で剣と鎧を強化』して攻撃力・防御力を高め、
『魔力で反射神経を向上』させて自分の戦闘スピードを速くしている。
……まあ、これが全部突然消えたら半身を失ったとも言いたくなるか、というラインナップではある。
これを失うということは、
単純に身体能力が低下し、
戦闘中の身体制御がままならなくなり、
剣と鎧が弱くなり、
反射神経が低下するということと同義だからね。
「──これが私の使う魔法の全容だ」
「これを、どうにか魔法で再現できるようにして、それをクラルスが習得できるようにしなきゃいけないんだよね」
「それについてだが、物質強化と反射神経に関しては後回しで構わない」
「基本的な戦闘機能を先に回復させたいっていう話?」
「その通り。加えて、物質強化と反射神経については外見で分からないのも大きい」
「なるほど」
「だからまずは身体強化と身体制御ができる魔法をそれぞれ考えてくれ」
「分かった」
「──んむう……」
「おっと、そろそろエレミア様が起きてしまいそうだ。その前に、すり合わせだけしたい」
「すり合わせ?」
「私が君と会う公的な理由についてだよ。会えなければ結果の共有もできないからね」
「あー、なるほど、確かにそうだね」
「私がクロン君の魔法に興味を持ってクロン君に教えてもらうことになった、というのが私は良いと思うが、どうだろうか」
「それより、なんでエレミアにも隠さなきゃいけないの?」
エレミアは味方だから、隠す理由はないと思うけど。
「──それは、私がエレミア様には自身の身の心配をせずに健やかに生きていて欲しいと願っているからだよ」
そう言った時のクラルスの顔は慈愛に満ちたものだった。
「──あれえ、わたし、ねちゃってました?」
そしてこのタイミングでエレミアが目を覚ました。
◆
「──クロン君、私は君の魔法にとても興味があるし、君は説明が上手い。だからこれからも私に魔法を教えて欲しい」
どうやらクラルスはエレミアを誤魔化すための小芝居を始めたいらしい。
「いいよ、僕は自分の魔法の研究をしながらになるけどね」
乗ってあげよう。
クラルスの言う通り、これはエレミアには隠したまま進めた方がいい話だ。
「ありがとう。──エレミア様、お目覚めになりましたか」
「はい……おはようございます……」
エレミアはまだうつらうつらとしているようで、上下の瞼の間に強力な引力が発生しているようだ。
「さて、私はエレミア様がしっかり起きるまでここで待ってから戻るつもりだが、クロン君はどうする?」
「うーん。まあ、僕は魔法の研究をしようかな。まだこの世界の魔法についてまともに検証もできてないからね」
依頼についてもあるし。
「そうか。エレミア様と私の動向については、緑楼を訪れると良いだろう」
「緑楼?」
「エレミア様の招かれている住まいだよ。大通りにあるから分かりやすいし、緑楼がどこにあるか人に聞けばすぐに分かる」
「へー、そこにいない場合は待ってたらいいかな」
「出かけてなければ私たちがいるし、出かけている場合でも何処に出かけたか居る者が知っているから名乗って聞くといい。クロン君の特徴と名前を後で教えておくよ」
「なるほど、じゃあ後で訪ねてみるよ」
「ああ──頼んだよ」
「──任せてよ」
魔法学徒が魔法の研究と聞いて昂らないわけがない。




