8.明朝
一章終わりまで書き上がったので一章終わりまで毎日投稿です。
クロンダイト:《AoD》、僕はかなり続けそうかな
アリス:そうでしょ!?私も、かなり続ける予感があるわ
ルト:私は赤の国だったぞ
クロンダイト:僕は緑だったよ
アリス:あら、結構惜しかったのね
クロンダイト:とりあえず僕は眠いから今日は寝るよ
ルト:私も寝る
アリス:私も流石に寝るわ、おやすみなさい
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翌日、僕は人気の少ないクレープ屋さんのテーブル席でクレープを食べながらクラルスの聴取を受けていた。
「──つまり、毒を受けた状態で、4人に襲われ、それを捌いたわけか」
あったことを思い出して口に出しながらクレープ食べている僕とは対照的に、クラルスは真面目な顔をして書類に僕の証言をまとめている。
「たまたま上手くいっただけだし、別で1人いたから結果捌けてなかったけどそうだね」
と言っても、エレミアの証言の時点で僕の正当防衛は成立していて、僕の処遇というよりは襲撃の状況、戦闘の詳細を知りたかったという話らしい。
敬語は、「畏まる必要はない」と言われたので外した。
ログインして少ししたら身体のダルさが減ったけど、そのあとは変化がなく、今のところ魔力切れに似た感覚は続いている。
あとは、報奨金に結構金貨が入った皮袋を貰ったから、無一文ではなくなった。
この金貨たちがどれだけの価値を持つか今の僕にはまだ分からないけれど。
「すぴー……」
エレミアは僕が来た時にはもうウトウトしていて、聴取が始まった頃には突っ伏して寝始めてしまった。
いっぱい食べたんだろうと思うと少し笑顔になってしまうな。
今はこの世界では12時だからこの時間にガッツリ寝ると夜寝れなくなるかもしれないのだけが心配だけど。
そういえば、結局この世界と現実では6時間時差があるようだった。
僕が昨日ログアウトしたのがこの世界で18時で、外に出て時計を見たら24時、今日ログインしたのは現実が18時の時で、今この世界が12時だ。
18時から24時でゲームするとゲーム内時間は12時から18時でプレイできていい感じになるのはよく考えられてるなという感想だ。
「──正直、その状況からよくエレミア様を守りきったと言わざるを得ない。私でも今の状態ではできないだろう」
クラルスが話を続けている。
今の状態では、というのは、特殊な状態なら守れるとかあるのだろうか。
「《騎士》クラルスは、この証言を真とし、それを以て貴君を信頼に値するものとしよう」
この騎士、素でやってるのはわかってるんだけど、色々と仰々しい。
4つ椅子があるテーブルにつく時に、3人だからと言って1つを退けようとしたり。
必要ないと言うと、素で「しかし、これではこの会話に誰かが入る余地があるということになるのではないか?私はこの3人で話を完結させたい」と言ったり。
今この時も、宣言しながら剣を鞘に入れたまま額のところまで持ってきて目を瞑っている。
「──さて、」
儀式が終わったようだ。
僕も丁度クレープを食べ終わった。
緑の国の、ご飯が美味しいという評判に違わず、めちゃくちゃ美味しかった。
ここでの食事代はクラルスが出してくれるみたいだから遠慮なく食べたけど、流石にこれ以上は入らないかな。
「エレミア様がお休みになられている間に本題を済ませよう」
おっと、別件があるのか。
ただそれより前に聞いておきたいことがある。
「その前に、エレミアが様付けで呼ばれてる理由をそろそろ聞いてもいいかな」
クラルスはしきりに『エレミア様』、『エレミア様』とエレミアのことを呼ぶ。
それはどういうことなのか。
やっぱり僕の予測が当たっていて貴族のご息女だったりするのだろうか。
「ああ、そうか。君はミグラントだったな。ならば知らないのも無理はない。ふむ、どこから説明するのがわかりやすいだろうか」
クラルスは少し間を開けて話し始めた。
「まず、この世界に精霊が存在していることは知っているだろうか」
「うん、この国だとグリーン・アイビーのことだよね」
「その通り。精霊は世界を見通す力を持っているけれど、それを我々に伝える術がない」
「それも知ってるね」
本人から聞いた言葉だ。
『全て見えるけれど何もできない者』だったかな。
「しかし、我々人間──《ティエラ》の中には、精霊の声を聞くことができる者が稀に生まれる」
「それがエレミアってこと?」
「その通り。精霊の言葉を聞き、我々に伝える。言葉を預かる者──つまり預言者というわけだ」
「へえ」
この子が、ねえ。
昨日の心理的な負荷がまだ残っているのか寝息を立てて寝ているエレミアからは、そんな特別な能力があるような雰囲気は感じないけど。
「君にはまだ信じがたいだろうか」
「まあ、信じがたいけど、クラルスがそう言うならそうなんだろうね」
お忍びでクレープ屋さんに行こうとしていたのはある程度知名度がある人間の行動に見えたし。
とりあえずそういうものだと受け入れておこう。
「良かった。では、今度こそ私の方の本題に入っても良いだろうか」
「いいよ」
何の話だろうか。
「まず、話を聞く前に約束してほしい。このことを必ず誰にも──エレミア様にも伝えない、と」
「それは大丈夫だけど」
「ならば話そう」
心を落ちつけるようにクラルスはひと呼吸置いた。
「──私の力を取り戻すために協力して欲しい」
それは嘆願だった。
◆
「詳しく聞かなければ判断できないことだから、全てを話そう」
「私はこの世界に来る前から現在まで、エレミア様を守護する任についている。一騎士が賜るには最高の栄誉と言っていいだろう」
「そして、この世界に来るまでは、私にはその任に足る実力を持っていたという自信があった」
「しかし、この世界に来たとき、私はこれまで使っていた魔法が使えなくなり、実質的に半身を失った」
「今では、私の持つ《騎士》の称号と過去に示した実力の残滓でなんとか護衛を成功させているような状態だ」
「このままではいずれ私の実力が落ちたのではないかと疑った者にエレミア様が狙われるようになるだろう」
「そうなった時、私には、エレミア様を守る術がない」
「だからクロンダイト君、君には私の実力を取り戻す手伝いをしてほしい」
◆
「僕で力になれるの?」
それがまず出た感想だった。
「なれると私は思うし、例えなれなかったとしても私が頼れる相手は君しかいないんだ」
「どういうこと?」
「私の任はエレミア様を守護すること。そして魔法研究院とエレミア様に接点はない。だから私の任の上で魔法研究院に助けを求めることはできない」
魔法研究院。
なにやら最高な単語が出てきたな。
「そもそも私は魔法に関しては独学だからな。魔法研究院に聞いても私が理解できない可能性が高い」
魔法研究院は理論派と。
最高だね。
暇になったら行ってみたい。
「私が任の中で自然と関われる魔法を修めた人物は君しかいないんだ」
なんか、突然凄い買い被られている気がする。
「ちょっと待ってほしい。僕はさっきも話した通りこの世界に来たばかりでまだ満足に魔法の研究を始めてすらいない初学者だよ?」
「いや、私には君は確かな魔法を修めた人物に見える。魔力を一度空にするまでの間にそこまでの魔法を開発できる人物はそういないだろう」
即座に反論が来た。
いや、まあ言いたいことはわかるんだけどさ。
「──本当に僕でいいの?」
「──ああ、私は君にお願いしたい」
ここまで言われて受けないのも違うよね。
別に、僕が適してないんじゃないかと思うだけで、内容にはとても興味があるし。
あと……いや、いいか。
「──なら、受けさせてもらうよ」
「本当にありがとう」
クラルスは頭を下げる。
「まだ実力が戻ったわけじゃないからお礼はいいよ。僕が戻せるかも確かじゃないし」
「いや、そうだったとしても、ありがとう」
クラルスは頭を下げ続けている。
「──それで、僕はいつまでに何を研究したらいい?」
僕は照れくさくなって話を切った。
そうすると、クラルスはようやく頭を上げた。
「期間については……そうだな、あと七日はうまく誤魔化そう、それ以降は流れ次第だ。まずは私の使っていた魔法についてクロンダイト君に説明したい」
「ああ、僕を呼ぶ時はクロンでいいよ。仲がいい人は僕をクロンって呼ぶから。依頼を受けるってことはちゃんとした付き合いになりそうだしね」
「分かった。ではクロン君、私の魔法についてだが──」
そうして、クラルスの説明を噛み砕いて自分なりに魔法理論に落とし込む作業が始まった。




