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4.出会い

アリスも多分こうやって魔力を使い切ってから休憩して、回復したらまた魔法を使って休憩してを僕達のところに来るまでの5時間繰り返したんだろうな。


そう思いながら僕は人通りの徐々に増える路地を歩いていた。



正直このゲームの魔法はかなり異常だ。

今のところ初級魔法みたいな魔法しか使えてないし、満足行くまで魔法を体験したとは言えないけど、それでも分かる。

このゲームの魔法はヤバい。

いや、魔法がヤバいというより、魔法を含めた世界がヤバいと言うべきか。

アリスの意見とは違うかもしれないけれど、僕はそう思った。


僕が思う異常さは拡張性の嵐だ。

現象の発生──これが僕の思うこのゲームにおける魔法だ。

さっき散々練習した冷却が特に当てはまるけど、現実世界では常温の水を一瞬で凍結させるなんてことは相当なことをしなければできない。

それを身一つでできるのはどういうことか。

僕の今のところの予測だけど、冷却魔法は『対象物体の冷却』という現象を出力しているのだと思う。

そして、魔法は発生地点が一番出力が高く、遠くなるほど出力が下がっていく。

だから近くの物体は冷却され凍結し、遠くなるとその効果が減る。


僕が思うに、こんな異常な現象がこの世界には無限にあるのだろう。

リアリティを追求した世界でこんな異常な法則を受け入れて成立させるという狂気を、僕はこのゲームの設計思想に感じた。


でもこれはゲームの世界だ。

人が作ったもので、どこかに不具合がないとは限らない。

何が予想外のことが起きた時、思わぬバグによるものという可能性は念頭には置いておいた方がいいね。



そういえば、結局ルトはどの国になったんだろう。

僕とアリスは緑の国だったから、ルトも同じ国だったら、合流して三人で進めてもいいんだけど。

『魔法使いの庭』が懐かしいな。

あのゲームでは僕とルトが好き勝手してアリスが収拾をつけるみたいな役回りだったけど、今回もそうなったりするのかな。

国が違ったとしてもその内合流して一緒に遊ぶことになるだろうから、今から楽しみだ。



そうして歩いていると、ふと、道の真ん中に黒いローブを着た小柄な何かがいるのが見えた。


そのローブの存在は道に迷っているのか頭を左右に振ったりして揺れている。

影にノイズがかかっていないからこの世界の存在らしい。



迷子かな?

僕も自分がどこにいるか詳しくわかっていないという意味では迷子だけど、大通りまで連れて行くことはできるし、声をかけてみようか。


「ちょっといいかな?」


声をかけると人影が少し跳ねる。


「──ひゃい!?」


返ってきたのは思いの外可愛らしい声だった。

後ろから声をかけたのが悪かったらしく、驚かせてしまったようだ。


「必要なかったらいいんだけど、助けが必要かもしれないと思ってね。君、迷子だったりする?」


「え、えーっと、迷子じゃないような、迷子なような……いえ、ちゃんと迷子です……」


最初少し誤魔化そうとしただが、諦めたようだ。

頭を振った時にローブの中から薄い金色の髪が覗いた。


「大通りまでなら行く途中だけど、一緒に来る?」


「あっ、ありがとうございます!お願いします!」


とりあえず、なんにせよ人通りが多いところに行ってから話を聞こう。



「僕はクロンダイト。影を見たら分かるだろうけど、ミグラントだよ」


「みぐらんと……この世界に来てから現れるようになったという、あの『ミグラント』ですか?」


「うん」


「ほえー、ミグラントの人ってこんな感じなんですね。影以外私たちと変わらないように見えます」


「まあ、体はほぼ変わらないんじゃないかな」


「そうなんですね」


ゲームである以上多分ミグラントは死んでも復活するんだけど、まあその辺はいいか。


というところで、とりあえず大通りに出た。


「とりあえず邪魔にならないところに移動しようか」


「はい」


邪魔にならないところまで移動してから話を再開する。


「──さて、君の名前は?」


「私の名前はエレミアです」


この子の名前はエレミアというらしい。

黒いローブを纏っていて、目深に被ったローブが外からほぼ顔を見せないようにしている。

何が事情がある感じだろうか。


「エレミアね。エレミアはなんであんなところで迷子に?」


「えーっと……行ってみたいお店があって……」


行ってみたいお店か。


「へー、どんなお店?」


「ク、クレープ屋さんです……っ!あっ、ミグラントのクロンダイトさんには伝わらないかもしれないですね。えーっと、飲食店です!」


……案外お忍びで遊びに出ているだけかもしれないね。


「あ、クレープは僕にも分かるよ。クレープか、僕も気になるな」


緑の国はご飯が美味しい、グリーン・アイビー──実質ゲーム本体が太鼓判を押した以上食べ物に期待しないのは無理だ。


「そうですよね!クレープ、美味しそうですよね!でも私まだ食べたことないんです。だから一回行ってみたくて……もし良ければ一緒に食べに行きませんか?」


うーん、お金を持ってたら即答でYESだったんだけど、僕今無一文なんだよねー。


「あー、僕はお金持ってないから案内だけしようかな。今度お金が貯まったら自分で食べに行くよ」


まあとりあえずこの子を放りだす選択肢はないかな。


「えーっ!それはダメです!一緒に食べましょう!えーっと、えーっと……そうだ!私を案内してもらう対価として、クレープ分の代金を出します!これでどうですか!?」


これでどうですか、と来たか。

突然現れた何処の誰とも知れない僕を早くも信頼しているらしい。

僕が僕だからいいけど、変な人だったら事件になるかもしれないのに。


「分かったよ。でも僕から一つだけ条件を出そう。今回は僕だったからいいけど次からは知らない人を信用しないようにね」


「はいっ!」


聞いてなさそうだ。

これは後でちゃんと話した方がいいだろうな。

……まあ、この話は帰り道にしておいてあげようか。


「じゃあ、地図見せてもらっていい?」


「はい!これですっ!」


えーと、宮殿がここで大通りがこれだから……


まあ、当然といえば当然だけど、来た道を引き返すことになる。


とりあえず、エレミアが一歩目から道を間違えてなくて良かった。

そう思いながら僕はエレミアを先導し始めた。

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