19.突入
屋敷の中は静かだった。
後ろから入ってくる騎士たちの鎧の音がうるさいくらいだ。
入り口から見える範囲は荒れていて物は壊れているけれど、あんな遠くから聞こえた爆発の割には建物の骨格自体の損傷はほぼ見られない。
道は正面方向に左右から1本ずつ、左右方向にそれぞれ1本ずつで合計4本伸びている。
「正面安全確保、保護すべき住民なし。……一番隊がいませんが、そこに関しては副団長に人員の割り振りを上手く行ってもらいます」
「へーへー、任しとけ」
「では、まずは決めていたとおり1階の探索を別れて始めましょう。丁度道が4本あるので二番隊から五番隊は各隊別れて各道の探索を行ってください。部屋に入る際は部屋の外に一人は残してはいるように。クラルスとクロンダイトさんについてはどうするのが適切ですか?」
「2人は固めておけ、不測の事態はいつでも起こりうる。クラルスが付いていくのは三番隊。俺たちもここに残る理由が特にないから四番隊には俺、五番隊には団長が付くのが良いだろうな。二番隊は隊長が仕切れ。気張れよ」
「私たちに関しては考えていませんでした、ありがとうございます。ではそのようにしましょう。良いですね?」
「「「「応!!」」」」
どうやら僕達は三番隊と一緒に行くらしい。
クラルスを先頭に、僕達は割り振られた道に進んでいった。
◆
崩落の危険性の確認や罠の確認など警戒しながら進んでいくが、特に何事もなく1つ目の部屋まで辿りついた。
クラルスが指で3,2,1と合図をし、扉を肩で打ち破る。
「……誰もいないか」
壊れた扉の破片を踏み部屋に踏み込みながらクラルスが言う。
部屋は客室のようで、割れた調度品や壊れたベッドの破片が散らばっている。
破けてはいるがベッドのシーツの感じから見るに、ベッドメイキングされていて人が使った後手入れはされている状態だ。
誰かの私物であろうカバンが壊れ、中から千切れた書類らしきものが散らばっている。
しかし部屋に人はいない。
「この書類については詳しく調査する時に精査する。持っておいてくれ」
と、クラルスが言うと、バインダーみたいなものを持った騎士が出てきて書類を仕舞っていく。
「隠れ得る場所は全て確認済み。次の部屋に向かうよ」
次の部屋も同じようにクラルスが扉を破り、部屋の中を探していくが、私物とその内容が違うくらいで人はいない。
クラルスの先導で次々と部屋を探していくが手がかりは見つからない。
そしてそのまま道の奥、突き当たりまで来た。
こんなに探して何もないことがあるか?
手がかりこそ後で分析すれば出てくるかもしれないけど、悪の組織の本拠地だっていうのにこんな状態なことがあり得るのか?
「壊れているが、これは2階に登る階段か」
2階に向かう上り階段は完全に崩落していて上りようがない状態だった。
「一度戻ろう。私たちの役目は1階のここまでの道の捜査だ」
◆
「なるほど、状況は分かった」
「全隊、1階の捜査の結果はほぼなしか」
どうやら、僕達以外の場所も同じような結果だったらしい。
「三番隊と四番隊がそれぞれ上り階段と下り階段を発見し、上り階段は壊れていたが、下り階段は無事と」
僕達以外にも階段を見つけた隊があったらしい。
しかもそっちの階段は壊れてなかったようだ。
「……私としては階段修復班と地下捜査班に別れて、地下を探索しながら2階の探索を速めるのがいいと思いますが、副団長、どうでしょうか?」
「概ねいいと思うが、俺は切り札の切り時はここだと思うぜ。その案の上で、階段の修復が完了するまでに2階の捜査をクラルスに行ってもらう。そうすれば2階の捜査が遅れることもない」
「なるほど、クラルスさんはどう思いますか?」
「例え私が嫌と言ったとして、副団長の判断は変わるものではあるまい。私が行こう」
「ありがとうございます。では、二、三、四番隊は地下の探索、五番隊はここで階段の復旧を行います。副団長は地下の探索に、私は階段の復旧に付きます」
配置は決まったようだ。
クラルスと僕は2人だけで2階の捜査をするらしい。
クラルス、強いのは知ってるんだけどまだ戦ってるところを見てないからどれくらい強いかあんまり分からないんだよね。
「クロン君のことは私が守るよ」
「……もしクラルスがピンチになって、僕で力になれそうなら、その時は僕も助けるよ」
「フッ、その時は、是非お願いしよう」
……この建物に入ってから、なんか変だ。
何が変なんだ?
その直感は形を取らずに霧散していった。
◆
「荒れてるけど、そんなに変わらないね」
「これまで人がいなかったからこそ、ここから人に出会う確率は高いと考えた方がいいだろう。気を引き締めていこう」
クラルスに抱えてもらって上った2階の廊下は、1階より物が壊れてるけど、それ以外はそんなに変わった感じがない。
僕らのやるべきことは、民間人の保護、怪しい人物の捕縛、現場の保護の順だ。
「クロン君は私から離れ過ぎないように」
「気をつける」
僕達は2人で2階を捜査し始めた。
クラルスが部屋に踏み込み、僕はその間魔法を準備した状態で廊下を警戒する。
クラルスは慣れたように部屋を捜査していくが、大きな手がかりも、人もいない。
そうして僕達は、中央──1階の入り口の広間の上に位置する大きな部屋を除いて捜査し終えてしまった。
僕の違和感は強くなるばかりだ。




