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14.杖

14話


14.杖


魔力がなくなったので研究を区切り、路地裏から大通りに向かいながら考える。


一旦、各属性については軽くまとめ終わったかな。

それで、クラルスの魔法それぞれに適しているのがどれかっていう話なんだけど、身体能力と身体制御に関しては結構そのままできそうな魔法属性があるかな。

反面、物質強化と反射神経増幅に関しては現状見えてる材料だと難しそうだ。

特に反射神経増幅は、どこから踏み込んで理論を立てたらいいかも今のところわかっていない。


難しい──だからこそ燃える。

頬をパチンと両手で挟む。

気合い入れてけ、僕。





「それでこの店に来た、と」


「そうだよ」


杖の店はそこら中に杖が刺さりに刺さった、ハリネズミみたいな店だった。

奥に魔法の試し撃ちコーナーがあるお陰でちょっと広く見えるけど、なかったら本当に狭く見えるだろうねこの店。

その店主のミステリアスな女性が僕に質問していた。


「貴方が求めているのは、力?それとも知識?」


「それで言うなら、知識かな。他人に与えられるのは御免だけどね。僕は自分で探したいタイプだよ」


「なるほど、荒野を征く科学者が望むのはいつも定量的な安定した性能──つまり、安定して高い出力をしてくれる信頼性の高いもの」


そう言って持っていた杖を一振りすると、刺さっていた杖から3本が手元にやって来て、ゆっくり回りながら浮かんでいる。


「実はこの店にある杖は、殆どが前の世界のもの。だから殆どはこの世界ではうまく使えない、ただの飾り」


そうなのか。

……そう言われてもそうなのか以上の感情湧かなくないか?


「でも、この世界に来てからそろそろ一月、貴方が満足する杖は用意できる」


「その3本が僕の求める杖ってこと?」


「焦らないで。……これは力。触れ幅が大きい代わりに、ここ一番での出力は3つの中で一番高い」


店主が赤い宝石が台座のように掘られた場所に付けられた杖を示す。


「これが知恵。触れ幅が小さく、平均で見れば力の杖よりずっと強い」


緑の宝石に木が絡まる意匠の杖。


「これはその中間、海。触れ幅がそこそこで平均もそこそこ、魔法初心者ならこれを勧めるけど貴方は初心者ではない」


青い宝石を猛禽類の足が掴むような意匠の杖。


「──貴方が求めているのは知恵」


……顔に出てただろうか。


「貴方は魔法が起こす結果は毎回決まっていて欲しいと願うタイプの人間。定量的で、逸脱を好まない。例外を許容するけれど、例外を期待しない。そんな貴方は知恵の杖を願う」


すごい分析だ。


「方向性は決まった。次は杖の大きさについてね」


「大きさ?」


このゲームもしかして、杖の大きさのタイプ多い?


「大きさは手の長さから身長以上まで、どの長さでもいいわ」


このゲーム、最高かよ。


こうして僕の杖の作成が始まった。





回復する間見て回るはずだった魔力が逆に尽きるまで色々試した結果、僕は30センチの短い杖にすることに決めた。


「私も、これが貴方に一番合ってると思うわ」


店主のお墨付きだ。


「そうだ、値段なんだけど──」


「代金は、その袋の半分よ」


そう言って指さされたのは、金貨の入っている袋。


「えっ、この袋全部金貨なんだけど──」


「三度目は言わないわ、代金はその袋の半分よ」


それで間違いないらしい。

金貨を全部テーブルに出して数える。

結果全部で今17枚持っていたから、代金は金貨8枚と銀貨50枚だそうだ。


さっき買ったナイフが高くて金貨1.5枚だったのを考えると、凄まじく高いなー、杖。

でも、ちゃんとした性能をしてるならこれですら安い買い物なのかもしれない。


大通りだし武器屋の店主が言ってた店だから大丈夫だと思うけど、流石にちょっと怖い。


まあ、もう払っちゃったんだけど。


「やるべきことが終わったら来なさい。その時にはできているわ」


店主は後ろに引っ込んでいってしまった。

どうやらこれで終わりらしい。

不思議な人だった。





「ちょっとおなか減って来たなー」


こっちの時間で12時にクレープをアホ程食べて、それで今は17時。

まだ食事の時間ではないけど、僕はこの世界でまだまともな食事を一回も食べていない。

だからかおなかが減ってきている。


「何食べてもおいしいんだろうなあ」


何しろ、クレープが意味分からないほどおいしかった。

そりゃ甘味だからおいしいのはそうなんだけど、なんか、そういうのとは違う感覚があって。

なんとなく、体が求めてるものを摂取できた喜びを感じたんだよね。

足りてない栄養素を摂取したときの感覚みたいな。


「うーん、やっぱり大衆食堂みたいなところがいいかな」


格式ばった感じのレストランと、大衆食堂っぽい店のどっちにしようか悩んでたけど、やっぱり一回はガッツリ食べたいよね。


「らっしゃっせー!」


うーん、このガヤガヤうるさい感じ、結構好きだね、僕は。


特に案内はないらしいから、適当に空いてる席に座る。



メニューを開くと、そこには知らない文字が。

しかし、意味は理解できる。


「これも慣れちゃったなー」


クラルスの書いてた書類、店の看板。

最初見たときは何だこれって思ってたけど意味が理解できる。

最初はよく分からなかったけど、多分何かしらの最新技術なんだろう。

でも人の認識をいじるのって何かの条約に違反してたりとかしないのかな。

と思ったが、僕は詳しくないのでその疑問はおいしそうな料理の匂いにかき消されていった。



「うーん、おいしいなあ」


僕はペペロンチーノを食べた。

大衆料理店らしくガッツリついた味付けが食欲を増進して、しかもめちゃくちゃ旨いからフォークが進む進む。

気づいたときには大皿をペロリと平らげてしまっていた。


後から入ってきて相席になった人もおいしそうにカルボナーラを食べている。

とてもおいしそうだ。


さて、勘定して出ようか。


「400テルになります」


僕は今回のおつりで初めて銅貨を見た。





今日はこれくらいで終わろうかな。


今日も大分激動だったね。


聴取から始まって。

依頼を受けて。

本格的に研究を始めて。

武器を買って人を助けて。

食事をして。


明日からはもっとちゃんと研究に身を入れることになるだろうね。


じゃあまた明日。



────────



クロンダイト:《AoD》、世界観すごいね

アリス:そうでしょ?

クロンダイト:そういえば、ルトの国ってどんな感じなの?

ルト:武と闘争に明け暮れたスチームパンク、といった感じだな。闘技場は面白かったぞ

クロンダイト:闘技場なんてあるんだ。こっちは魔法研究院なんていう楽しそうな施設があるらしいよ

アリス:なにそれ!私知らないんだけど!

クロンダイト:あ、知らなかったなら秘密にしておいたら良かったかな

アリス:ずっと外に出てた弊害が出てるわね。いいわ、明日は私も街で魔法研究院を探すから待ってなさい!

アリスがログアウトしました

クロンダイト:あー、魔法研究院は部外者は入れないよって言おうと思ったのに

ルト:個人で言っておけ。私も寝る、おやすみ

クロンダイト:おやすみー

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