12.廃材
魔力が尽きた僕は、気分転換に大通りに戻ってきた。
研究に関しての進捗はまあまあといったところだけど、魔法の研究というものは魔力がないとできない部分が多いものだからね。
魔力が回復するまで、このリアルな世界を楽しませてもらおうかな。
大通りを眺めていると、武器屋を見つけたから入ってみる。
この世界では魔法を使う杖は武器に入るタイプなんだろうか。
あと、昨日の戦闘を思い返すと、魔力がなくなっても戦える武器を一応持っておいてもいいかもね。
「──冷やかしかよ、なら帰るんだな」
「そんな〜。廃材とかないんですか〜?」
「廃材はあるが、客じゃねえやつにはやらねえ」
武器屋に入った僕を、そんな会話が出迎えた。
廃材?
なんか、そのワードどこかで見たような。
……始める前のwikiか。
初心者は打製石器を作るか廃材を貰うと良い、みたいな感じだった気がする。
となると、この人はミグラントか。
そう思って影を見ると、予想通り影にノイズが走っていて、ミグラントだと確定した。
何気に僕以外のミグラントを見るのは初めてだ。
同じミグラントとなると、なんか、お金を余るほど持ってるのに助けないのも違う気はする。
けど、お金で解決っていうのも良くないんだよな。
どうしようか。
「おっと、お客さんだ。──あんたは金を持ってきな、うちの武器を買うなら廃材なんていくらでもくれてやるからよ」
「ぐぅ〜……」
これは、間違いなく「お金を得るためにお金が必要になったけど、それの文句を言う相手として適してないからぐうの音しか出なかった顔」だ。
分かってしまった。
くそ、実際僕も魔法とクラルスからの報奨金がなかったら同じ苦しみを感じていただろうから見捨てられない。
「お客さん、何をお求めですか?」
「武器を買いたいんですけど──僕がここで武器を買っておまけで廃材を貰って、それをこの人にあげるのは、店主さん的にありですか?」
営業スマイルを浮かべた店主に切り出す。
諦めてとぼとぼ出ていこうとしていた人の足音が止まる。
「……まあ、それはさっき俺が言ったこととは矛盾しねえな……仕方ない!言っちまったことは変えらんねえ!──ただ、条件がある」
お、条件ありだが通ったようだ。
「条件は一つ。何が起ころうと俺を巻き込まねえことだ。俺が譲った廃材で事件が起きたなんてなるのはごめんだからな。うちの廃材をあんたたちが勝手に拝借したことにしてもらう」
まあ、巻き込むのも本意ではないし、結果貰えるならいいか。
「いいよ。じゃあそれで」
「OK、商談成立だ。それで、どんな武器が欲しい?」
「ありがとうございます〜!」
「──うわ!びっくりした」
さっきのミグラントが音もなく僕の耳元に来て大声を出してきたから驚いた。
突然後ろから何かするのは反射的に魔法が出そうだからやめてほしい。
「まあ、僕はお金があって武器を丁度買いに来たところだったからね。同じミグラントの好で」
「本当に、このお礼はどう言えばいいか分からないです。打製石器上手く作れなくて廃材もダメだったから、もう折れちゃってやめようかなって思ってたところだったんですよ〜」
このゲームはリアリティ重視なだけあって名前が見えないみたいだから、名前を聞いておこう。
「僕はクロンダイト、あなたは?」
「わたしは『えるえる』です。クロンダイトさんがこのゲームをやめそうになったわたしを救ってくれたことは後世まで語り継いでいきます!」
「いや、正直僕としては自分が経験していたかもしれない苦しみの中にいる相手を見捨てられなかっただけだから、人に迷惑をかけないでいてくれればいいよ」
「はい!公明正大に、清く正しく、このゲームをプレイしていこうと思います!」
「……結構派手だなあ」
「──ゴホン、あー、そろそろいいか?」
おっと、そういえば買い物の途中だった。
「そうだ、ここって杖ってあります?」
「杖はウチにはないな。二つ隣の店が取り扱ってる」
「じゃあ護身用武器を買いたいんですけど──」
そうして、僕の武器探しが始まった。




