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1.夜明け

再構成が終わったので序章が終わるまで毎日投稿です。

──このゲームはリアルだ。

リアルの塊だ。

今のところゲーム的矛盾点を一切感じない。


ということは、この命はこのままだと永遠に失われるだろう。

NPCとしてではなく、この世界の人間として。

NPCの復活なんていうリアリティのない要素がこの世界に存在するなんて僕には思えない。


だから僕はそれを見過ごすことはできなかった。





高度に発達したVR技術は、現実と見分けがつかない。

今となってはVR技術は新たな現実を作る技法だ。

ならば、


──新たな現実の中に異世界があっても、人は気がつかないのではないか?





僕、小鳥遊(たかなし)侑哉(ゆうや)──HN(ハンドルネーム)クロンダイトは暇を持て余していた。


「なんかいいゲームないかなー」


今のダイブ型VRシステムには、現実と虚構をそのまま繋ぐのではなく、PCで言うデスクトップのような存在──通称《ガーデン》がある。

《ガーデン》は所有者が自由にできる空間であり、マシンのスペックが許す限りの空間を展開できる。

その展開した空間でできるのはPCのデスクトップと同様にソフトを展開して作業したりゲームにダイブしたりと様々だが、PCではできないこともある。

それは友人を自分の《ガーデン》に招くことだ。


「私たちが探したとて見つかるものでもない。大人しくアリスを待て」


僕の《ガーデン》の庭にある椅子に座りオブジェクトとして配置した本を読みながら口を挟んできたのは友人のルト。

ちなみにここにある本は青空文庫から持ってきていたりネット上で本人に許可を取って持ってきたりしているらしい。

らしい、というのは僕の《ガーデン》の制作者は僕じゃないからなのだけど。


「ルトが当てにならないのはわかるけど、僕は別に探せるのにね」


ルトのアバターは長い黒髪の赤目の少女、だけど中身は根っからのゲーマー。

ゲームがとても上手い上にとてもやり込むが、ゲームを探すのだけは致命的に下手なのがルトだ。

ルトがゲームを持ってきたのは二回あったんだけど、二回ともとてもじゃないがまともに遊べないとんでもないゲームだった。


「……30分で中断したゲームを持ってきておいてよく言えるな」


ルトは、はあ、とため息をついてこちらを呆れた目で見ながら言った。


「そんなことは……あるかも」


僕はこの会話は不毛だと思った。

結局僕らの中でゲームを探せるのはアリスしかいないのは変わらないから。

考えてて悲しくなってきた。


「しかし、遅いな。……いや、来たか」


ルトに釣られて門の方を見れば、そこには金髪をボブにした碧眼の女性──アリスの姿があった。


「──ヤバいゲームを見つけたわよ!」


アリスは現れるなりすごい勢いでこっちに走ってきて言った。

いつもながらゲームに誘う時のパッションがすごい。


「お、アリスおかえりー。アリスっていつもそういう興味引く紹介の仕方するよね。それで、今回はどんなゲーム?」


しかし僕も伊達にアリスからゲームをおすすめしてもらってきたわけではない。

もう僕は詳細を聞かない内にアリスを妄信することはしないと決めたのだ。


「ああもう!私がいつも興味引けるように工夫してるのが裏目に出てるわね!今回は本当の本当にヤバいのよ!」


本当の本当にヤバい。

流石にそこまで言うならちょっと気になるな……

いや、ちょっと待つんだ僕。またアリスの策略にかかっているかもしれない。

判断は詳しく聞いてからだ。


「落ち着け」


アリスが落ち着かない様子なのを見かねたルトが本を閉じながら言うが、アリスに落ち着く様子はない。


「落ち着けないわよ!オンラインゲームなのに信じられないくらい細かい部分の完成度が高いの!NPCは生きてるみたいだし、魔法もヤバいし、もう何から語ればいいかわからないわ!聞くより実際体験した方が絶対早いから早く始めましょ!」


「今、魔法がヤバいって言った?」


ルトがため息を吐いたのが見えた。

また魔法バカが共鳴してるとでも思ってるんだろう。


「ええ、そうよ。魔法も過去一レベルで凄いわ。今日見つけてまだ5時間しかプレイしてないけど、今のところ全く全貌が掴めないくらいよ。でも具体的な話はネタバレだからしない方がいいでしょ?」


「うん、ありがとう」


やっぱり持つべきは理解のある友だね。


「事前にこれだけ説明しておいた方がいいと思ったことだけ伝えるわね」


今回は事前説明があるタイプのゲームらしい。


「このゲームには国が五つあって、始める場所はランダムで固定されてるから自分では選べないわ」

「国違いは敵?」

「いいえ。雰囲気だけど今のところそんなことはなさそうよ。ただ、国を跨いだプレイヤーはまだいないみたいだから、別の国になったら一緒に遊べると思わない方がいいわね」


プレイヤーが国を選べないとは珍しい設計だ。


「今回ギルドはどうする?」

「それは合流できたら考えましょう。低確率だけど同じ国スタートかもしれないし」


まあそれもそうか。

ギルドコンテンツがどれくらいあるかも知らないし、ギルドコンテンツの量を見て決めようかな。


「それで、アリスはなんという国で始めた?」


ルトが挟む。


「ああ、そうね。それを言わなきゃこの話をしてもだものね。私は緑の国、ヘデラだったわ。緑の国と覚えておけば良いわよ」


「緑の国ね」「緑の国だな」


アリスは僕らが復唱したのをみて満足げな表情で頷いた。


「とりあえず、もう私は起動の仕方のページ貼ってゲームに戻るわ。今回はクロンに負けたくないもの。じゃあね」


そう言ってアリスは手を振りながら消えていった。

そして取り残された僕らは互いを見た。


「……すごいハマり方してるね、アリス」

「まあ、アレを見ると私としてはアリスよりのめり込みやすいお前がどれだけのめり込むかの方が気になるがな」

「それを言うならルトの方でしょ。いっつもとんでもないところまでやり込むしさ」

「……反論してもいいがここで言ってもだな。私たちも始めるか」

「そうだね。アリスがどんなゲームにハマったか、気になるなー」

「ではな」

「うん、じゃあね」


ルトは背を向けて消えていった。



「そういえばゲームの名前を聞くのを忘れてたな。えーっと?」


僕は念じてコンソールを起動し、アリスからのメッセージを開いた。

そしてアリスの貼ったページにアクセスするとそこには予想通りゲームの名前が書いてあった。


僕がこれから始めるゲームの名前は──





──《Ark of Dawn》

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